
フランク・ケイン
【ドバイ】サウジアラビアのエネルギー相は13日、同国の石油減産は世界経済および産油諸国の求めがあればさらなる規模拡大もありうる、とした。
アブドルアジーズ・エネルギー相(王子)は、今後の石油政策は「柔軟性と実用性」次第となる、と語った。12日夜にサウジとロシアの主導する「OPECプラス」が記録的な減産で歴史的な合意に達したことが市場に浸透したことを受けての発言。
来月より世界市場で日量970万バレルが消え失せることになる合意内容をトレーダーが把握するや、中東産原油の価格指標であるブレント原油は大きく値動きし、この日は32ドル弱につけたままとなった。
同相は「なりゆき次第で需要壊滅と需要改善がどういった動きとなるか見守る必要がある」とした。新型コロナウイルスが世界経済にもたらした衝撃により、世界需要全体のほぼ4分の1に当たる日量約2,500万バレル程度は失われている、と複数の専門家は見積もる。
「OPECプラス」域外国も減産に同調し、戦略石油備蓄の購入も勘定に入れれば、ゆくゆくは日量1,950万バレル程度の減産もありうる、と同相は語る。「ウイルスとその影響にからんだ不確実性から目を離せない状況だ。意志あるところに構造あり、だよ」
さらなる減産見通しについては、ドナルド・トランプ米大統領の口からも飛び出した。「OPECプラスの減産見込みは日量2,000万バレルだ。巷間言われるような1,000万バレルじゃあない」
米国、カナダ、ノルウェーといったOPECプラス域外国はさりげなく減産してくる考えもあろう、とOPECプラスの情報筋は言う。6月の次期会合までOPECプラスによるさらなる減産はまずないはずだ。
12日の歴史的合意はなお世界の石油産業にその余波をとどめている。サウジアラムコは5月の価格体系を発表。需給ファンダメンタルズを反映させ、アジアの消費国にはここ数十年で最安となる原油を供給する見込みだ。
中国、インド、日本は市場価格から最大5.5%割り引かれた価格で購入できることになる。欧州向けのレートには実質的な動きはない。他方でアラムコの輸出比率の下がる米国向けには最大4.2%の割り増しとなる。
「石油の国際ビジネスの世界では主戦場はアジアだ。アラムコとしても当面米国から距離を置けるのはまんざらでもないようだ」。ある専門家の話だ。