
妙高:3年後の冬、日本の雪深い妙高高原には、シンガポールのファンドが建設した14億ドルのメガリゾートが誕生する。宿泊料金は、1泊1,350ドル(約13万円)を予定している。
ペイシェンス・キャピタル・グループ(PCG)によるこのプロジェクトは、1,000人の雇用創出と冬季観光の活性化を約束している。しかし、多くの妙高市民にとって、外国からの関心は諸刃の剣となっており、乱開発、物価高騰、伝統文化の一掃といった問題もある。
PCGの妙高への関心が報じられる以前から、妙高地域の5大スキーリゾート地のひとつである赤倉の多くの旅館、スキーレンタル店、レストランは外国資本に買収されていた。
しかし、外国人は雪にしか興味がなく、雪が溶けてしまえば、それらのビジネスは閉鎖されてしまう。
かつては温泉地として賑わった赤倉町も、今では一年中多くの観光客を惹きつけるほどの活気はない。
「夏に赤倉に来ると、夜は真っ暗です」と語るのは、地元の旅館「ふるや」のご主人で、200年の歴史を持つ赤倉温泉観光協会の中島正文氏だ。赤倉にある約80軒の旅館のうち、年間を通して営業しているのは10軒だけだという。
東京から電車で約2時間半の新潟県にある妙高は、ニセコや白馬といった日本の有名なスキーリゾートとともに、「ジャパウ」と呼ばれるパウダースノーで知られている。
リゾート地は日本の観光ブームの大きな部分を占めており、円安も後押しして、2月のインバウンド観光客数は17%急増し、同月としては過去最高を記録した。
中島氏によれば、赤倉の外国人経営者の多くは地元の観光協会に加入することを拒否しているという。その結果、ゴミをきちんと捨てなかったり、駐車料金を踏み倒したり、深夜に花火をしたりと、企業や観光客側のルール違反が多発している。
「彼らが一体何者で何をしているのか、私たちにはまったくわからない。12月になるとやってきて、春になるといなくなるんです」と中島氏は語った。同氏は最近、町のルールを徹底するため、外資系企業にアプローチし始めた。
価格破壊
地元の人々の多くは、妙高がニセコのようになることを恐れている。
北海道の北部に位置するニセコは、外国資本の高級リゾート開発によって世界的に有名なウィンタースポーツのリゾート地となったが、不動産価格の高騰は、売却しないことを選択した地元住民に増税をもたらした。人件費から一杯のラーメンに至るまで、北海道のインフレは急激で、地元の人々やほとんどの国内旅行者をこのリゾート地から締め出している。
日本アルプスの白馬も同じような道をたどっており、妙高のある町では昨年すでに地価が9%も跳ね上がった。
東京生まれのPCG創業者ケン・チャン氏は、350ヘクタールの敷地に2つのスキーゲレンデを持つこのプロジェクトについて、地元の懸念に配慮していると語った。
年間を通して観光客を惹きつけるために、PCGはビジネス用に計画されている2つの高級ホテルを宣伝したいと考えており、スキーやスノーボードを楽しみたい地元住民のためにピーク時以外の割引を検討していると、同氏はロイターに語った。
また、今後数ヶ月のうちに住民との会合を開くつもりだという。
妙高市の城戸陽二市長は、PCGの開発計画には慎重ながらも楽観的だが、具体的な話はほとんど聞いていないと述べた。
城戸市長は、外国人投資家からの問い合わせが増えており、地元の懸念を意識して、2027年度から大規模プロジェクトに対する新たな規制を検討している。
「私たちの街にとっては、異例なほど大きな開発になるでしょう。心配のない状況ではないことは否定できない」と同氏は続けた。
赤倉であんこ入りの饅頭を売る創業半世紀の老舗の店主、宮下剛士さんは、西洋人が街に溢れ、まるで日本にいないように感じることがあるという。
妙高の開発は地域の文化を維持するものであるべきだとし、「次のニセコにはなりたくない」と同氏は続けた。
ロイター