
Frank Kane
ドバイ:リヤドで行われたウェブ会談で、政策担当者、保健当局担当、科学者らが新型コロナウイルスのパンデミックは世界中の人々の健康と経済的福祉に今後も多大な損害を与え続けるとする厳しい意見を交換した。
世界保健機構(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長はアブドラ国王石油調査研究センター(KAPSARC)で行われたウェブ会談で、「欧州では状況が改善されたが、世界的には悪化している」との見解を明らかにした。
サウジアラビアのアブドルアジズ・ビン・サルマン・エネルギー相は、「経済面では、パンデミックの影響はその規模と程度において前例のないものである」と述べ、中東での石油需要の減少が、「地域の石油輸出国の財政状況を悪化させた」と付け加えた。
この会談は2020年後半にサウジアラビアが議長国を務めるG20サミットの「シンクタンク」部門であるT20が主催したもので、世界の金融・エネルギー市場で、パンデミックによって荒廃した世界経済の先行きに対する懸念が高まるのと時を同じくして行われた。
ニューヨーク市場は週末に中国で新たなウイルスが発生したとのニュースを受け、値動きの激しい取引となった。リスクアドバイザーのイアン・ブレマー氏は、市場の下落は「新型コロナウイルスの推移が大方の予想より悪いという認識」によるものだとアラブニュースに説明した。
ウォール街の株式の変動幅を測る指標である「恐怖指数」、VIX指数は5%上昇し、数か月ぶりの高水準となった。
世界の石油市場も同様に切迫した状況になっている。原油価格の国際的な指標であるブレント原油は、急速なV字型の景気回復によるエネルギー需要の回復に対する期待が薄れたため欧州市場で3%下落し、1バレル38ドルを下回った。その後、価格はある程度回復している。
アブドルアジズ・エネルギー相はT20会談で「パンデミックによる著しい経済収縮と先行き不透明な状況によってエネルギー需給の不均衡が拡大し、石油・ガスセクターに直接的な影響を与えている」と述べた。
テドロス事務局長は「パンデミックの影響は病気そのものにとどまらず、南北アメリカおよび南アジアでは新規感染者が急増している」とし、世界での累計感染者数が10万人を超えるまで2ヵ月以上かかったが、ここ2週間は1日あたり同じ数の新規感染者が確認されていると指摘した。
さらに世界の多くの地域で集団での集まりが許可されていることから、「慢心」に対して警鐘を鳴らし、ウイルスとの戦いにおける「国家レベルでの結束と世界的な連帯」の必要性を訴えた。
アブドルアジズ・エネルギー相は、「この未曽有の世界的危機を乗り越えるため、世界中の専門家が協力して取り組みたい」という訴えと共に3日間にわたるT20会談の開会を宣言した。
また同相は石油市場の安定維持に貢献しているとして、(OPEC)と非加盟主要産油国で構成するOPECプラスの働きを称賛。
「エネルギー市場を安定させ、手頃な価格で安全なエネルギーを確保することは、あらゆる国の健康、福祉、回復力において重要である」と述べた。