
格付け会社フィッチは7月29日、日本の長期外貨建て債務格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたと発表した。新型コロナウイルス感染拡大による大幅な国内経済の収縮を理由として挙げている。
「日本は新型コロナの封じ込めで早期に成果を上げたが、コロナの世界的大流行により日本では大幅に経済が収縮をした」とフィッチの発表にある。
格付けに関しては「A」のまま据え置きとした。
第2四半期の国内総生産(GDP)は、新型コロナを受けた世界的な需要減少や、4月半ばから5月下旬まで出された緊急事態宣言の影響で消費や企業活動が減速したことを受け、大幅に落ち込むとみられている。
緊急事態宣言は解除されたが、足元では新規感染者が急増しており、経済を再び圧迫する可能性がある。
世界第3位の経済大国・日本の2020年の成長率がマイナス5%、21年はプラス3.2%になる、とフィッチでは予想している。
政府による緊急経済対策や、想定される外需の回復に支えられ、四半期ベースでは20年後半にプラス成長に転じるとの見通しを示した。
ただ、財政赤字が20年・21年に拡大し、公的債務が大幅に増加するとも指摘。「格付け見通しをネガティブに引き下げたのは、債務比率の上昇やマクロ経済見通しの下振れリスクにより、中期的に債務比率を低下軌道に乗せることが一段と難しくなるという点を考慮したため」と説明した。
フィッチはさらに、日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の枠組みの下で、少なくとも20年末まで金利を現行水準で維持するとの見方も示している。
「日銀はさらなる金融緩和策の1つとして利下げも検討しているだろう。しかし、マイナス金利の深掘りにより銀行収益に悪影響が出ることを懸念し、実際には追加利下げには踏み切らないとみている」とした。