
スレイマニヤ:イラクのクルディスタン地域では、米ドルとイラン・リヤルの両替取引はかっては一大産業だった。
だがその両替取引も、新型コロナのロックダウンによる制限や両国の深刻な経済問題の打撃を大きく受けることになった。
イラク・クルディスタン地域第二の都市でイランとの国境にも近いスレイマニヤでは、両替商が劇的な変化を目にした。
この3月、国内で5,000人以上の死亡者を出したパンデミック抑制対策として規制が課される以前には、1ドル150,000イラン・リヤルで取引された。それが今日では1ドル250,000リヤルで取引されている、と両替商のアマナイ・サレーさんは語った。
イラン政府と米政府は対立中かもしれないが、イラク人は財布にこの敵同士の紙幣がごっちゃ混ぜに入っていても気にしない。
イラン通貨の回復に賭けるとともにコロナ禍がすぐに去ることを期待したイラク市民の多くが、リヤルを安くで手に入れようと急いだ。
経済不況のなか、ドルとリヤルの取引は、ありがたい代替収入源のように思われた。
支援団体「国際救済委員会(IRC)」が行ったアンケート調査では、回答者の87%がコロナ禍で職を失ったと答えた。
石油が国家収入のほとんどを占めるイラクでは、原油価格低迷の打撃を受け、近年最悪の経済危機に見舞われている。政府の緊縮財政による歳出削減は厳しいものになると予想されている。
「新型コロナウイルスの出現とそれによって引き起こされた経済危機以来、職を失った人たちが、自らの資本を職にしようとイラン通貨に投資しているのです」とサレーさんは言う。
だが、小さな口ひげを生やし、巨大な額入りの複製100ドル紙幣の下に座ったサレーさんは、この賭けにおいてすべての人が利益を上げたわけではない、と警告した。
「1ドル200,000リヤルの為替レートでイラン・リヤルを購入した人は、今ではより低い1ドル250,000リヤルのレートで再売却しています」と言う。
イラクでは市民の多くが米ドルと自国通貨のディナールを交互に使用している。2つの通貨間のレートが安定しているためだ。
ドルとイラン・リヤルの間には大きな変動があるため、売り買いの差で儲けようと望みを抱く市民にとって魅力となっている。
イラン経済は米国の経済制裁により長年窒息状態にあり、イランとイラク間の国境検問所の閉鎖により、イランの経済苦境はさらに悪化した。
スレイマニヤで作業員として働くハザール・ラヒムさんは、苦い経験を通してこれを知った。「数日前、イラン・リヤルを50億リヤル購入しました」とラヒムさんは語った。「為替相場に賭けていたのですが、不意打ちを食わされました。数時間でリヤルが下落し、13,000ドルを失ってしまいました」
パンデミックによる経済危機により、イランの輸出は減少し、平価切下げとインフレが引き起こされた。国際通貨基金の予想によると、イランの国内総生産は今年最大で6%減少すると見込まれている。
イラクにも厳しい時期が迫っている。本年度の経済が10%縮小すると見込まれているのだ。
だが、これといった代替収入源がほとんどない現在、儲けを期待して両替商を訪れるイラン市民は引きも切らない。
–AFP