
カーラ・チャフルール
サウジアラビアの人々は長い間日本の自動車メーカー、トヨタに親しみを感じてきた。これは、トヨタと自動車販売代理店アブドゥル・ラティフ・ジャミール社との間の60年にわたるパートナーシップによるものだとされる。同代理店の社名は創業者の名前から名づけられたものだ。
サウジアラビア発祥の同社は紅海に面するサウジ・ジェッダの港町の小さなガソリンスタンドとして始まり、以来75年間チャンスの風を操ってきた。
それから10年間、アブドゥル・ラティフ・ジャミールは事業が成功し、従業員が増え、全国に多数のガソリンスタンドを展開していった。
サウジアラビアと日本が国交を樹立した10年後の1955年、アブドゥル・ラティフ・ジャミールはトヨタ自動車にアプローチした。サウジの輸送セクターにおける成長を予見し、交通手段の選択肢への需要の高まりを察知したことで、ガソリンよりも自動車を販売するビジネスに進出することを決めた。
トヨタで最も長く販売されていたランドクルーザーSUVに興味を持ったアブドゥル・ラティフ・ジャミールは4台発注し、そこから同社がサウジにおけるトヨタの総代理店に指名されるに至った。
マッキンゼー・グローバルインスティテュートの2015年のサウジアラビアレポートによると、中東・東アフリカ地域の輸入工業製品市場は2500億ドル規模で、うち自動車が870億ドルを占める。
サウジアラビアだけでも他国から毎年700億ドル相当の先進工業製品を輸入しているが、そのほとんどが東アジアからで、同地域内からの輸入は5~10パーセントにすぎない。輸入製品の総額の高さはサウジアラビアに自動車も含む消費者工業製品の大きな市場がある一方で自前の生産やアセンブリのラインを持たないことによる。
1980年代、アブドゥル・ラティフ・ジャミールは年間20万台以上のトヨタ車を輸入し、トヨタの4WD車が製造されてからまもなく輸入を決めたことは大きな利益をもたらした。同社は大きな成功を手にしたことにより、1989年にトヨタの高級車ブランド、レクサスをサウジアラビアに広めることになり、小売ネットワークをさらに拡大させることへとつながった。
以来、サウジアラビアでトヨタは高い市場シェアを維持しており、2016年のサウジ市場では35パーセントを占めている。
現在、アブドゥル・ラティフ・ジャミールは世界最大のトヨタ車の独立系総代理店の一つであるとともにサウジアラビア最大の民間企業の一つでもあり、様々な子会社を擁して地域および海外で6つのセクターにわたり事業を展開しており、そこには自動車・輸送、技術・製造、金融サービス、エネルギー・環境サービス、不動産、広告・メディア・消費者製品が含まれる。
現在サウジ市場および地域中で様々なブランドが販売されているが、アラブニュースが日本版立ち上げに際して行ったYouGov世論調査によると、アラブ人の間では依然としてトヨタが高需要を誇る人気ナンバーワンの日本車ブランドであることがわかった。
この世論調査では中東・北アフリカ地域の住民に対して日本に関連する質問で意見を求めたもので、回答者の56パーセントが日本について最も想起することとして自動車製造を挙げ、多くのアラブ人が日本を自動車製造と関連付けて見ていることが示された。
地域におけるトヨタの盤石な評判は、権威あるブランドイメージ測定であるYouGovの2019年度BrandIndexでさらに強く示されている。BrandIndexはブランドの健康、メディア活動、消費者経験に関連する指に基づきブランドの追跡を行うものだ。トヨタは2019年度BrandIndexのサウジアラビアにおける自動車メーカーランキングにおいて、ドイツの競合BMWやメルセデスベンツを抜いてトップに位置づけられた。またレクサスは5位につけた韓国の自動車メーカー現代自動車を抜いて4位にランクインした。
ゆえに、アラブ人が日本を自動車製造と関連付けるとき、ある特定のブランド―トヨタを想起することは不思議なことではない。