
フランク・ケイン
ドバイ:サウジアラビア政府の主要投資機関であるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は、外国銀行グループとの信用供与枠を150億ドルに取り決め、同国の経済における中核的エージェントとしての役割により大きな財政弾力性を持たせようとしている。
この政府系ファンドは、海外金融機関との交渉を終え、3月10日(水)にこの取り決めを発表した。増額後の金額は昨年下旬に発表された当初の報道を上回る金額となっている。
「PIFは、アジア、中東、ヨーロッパ、英国および米国の世界的大手金融機関17社を含むグループと、150億ドルの多通貨建て回転信用枠に調印した」とPIFからの声明にある。
「多通貨建て回転信用枠はPIF の慎重な資産負債管理を反映するものであり、ビジョン実現プログラム(VRP)の枠組みの中で多様かつ持続可能な資金調達戦略を形成する」とも述べられている。
サウジアラビア政府は先日2025年までの5年間にわたる二つ目のVRPの詳細を発表した。これは同国の経済を石油依存から脱却させ、多様化を加速させることを目指すもの。
このプログラムのもとで、PIFは国内の雇用機会を創出し民間部門の活動を刺激するため、サウジ経済に年間400億ドルを投入すると誓約している。
回転信用により、借款協定期間中債務者は信用枠の一部をドローダウンして返済することができる。今回の信用枠に対する期限は設定されていなかったが、報告によると4年間と思われる。
「この信用取引によってPIFは追加資金へのアクセスが得られ、その資金を都合に応じて即刻展開させることができる」とPIF は言う。
また、「PIFは今後とも世界レベルで望ましいパートナーとしての評価を維持し、サウジアラビア経済の多様化の推進を継続し、国内経済に対して年間1,500億サウジアラビアリアル(400億ドル)を投資していく」という。
国際金融市場での借り入れのほかに、PIFはサウジ政府からの補助金、投資からの配当金、資産の実現や取引からの収益などをその主な資金調達源として受け取っている。
パンデミックで国際金融市場が混乱している時に、PIFはその安値を利用して、引き合いに出された企業の株やその他の証券を世界の証券市場で売買した。
150億ドルの信用供与枠は世界的な借り入れに対するPIFの3度目の介入となる。昨年、PIF保有のSABIC株をSaudi Aramcoへ売却完了後、100億ドルのシンジケートローンを前倒しで返済し、また2018年には、外国銀行からの110億ドルのタームローンを増額している。
PIFは現在4千億ドルの運用資産を有しており、その額を2025年までに1兆ドル以上に増やす計画だ。