Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • ビジネス
  • ソフトバンクのビジョンファンドCEO、世界規模でまたサウジアラビアでハイテク投資を加速する、と述べる

ソフトバンクのビジョンファンドCEO、世界規模でまたサウジアラビアでハイテク投資を加速する、と述べる

Short Url:
07 Jun 2021 01:06:00 GMT9
07 Jun 2021 01:06:00 GMT9

フランク・ケイン

ドバイ: 世界中のハイテクスタートアップ企業に投資を行う数十億ドル規模のビジョン・ファンドが今後何年間もさらに追加される計画となっており、投資先にはサウジアラビアも含まれている。

ビジョン・ファンドの最高責任者であるラジーブ・ミスラ氏は現時点で1,300億ドルの世界中のハイテク企業への投資を統括している。ミスラ氏はアラブニュースに次のように語った。ビジョン・ファンド2の資金が完全に投資された後、さらなるファンドが計画されており、「今後数十年に渡って、多くのビジョン・ファンドが設立されるであろう」

世界中の決定権を持つ人物との動画対談シリーズである「Frankly Speaking」のインタビューで、ミスラ氏はサウジ企業への初の投資計画についても明かした。サウジアラビアに雇用やスタートアップ企業を呼び込む戦略であり、中東の大規模投資家をビジョン・ファンドに呼び戻したいと氏は考えている。

「当社はそのために存在しているのです。ビジョン・ファンドはサウジアラビア王国、そしてアラブ首長国連邦のムバダラという2大パートナーとの共同事業であり、パートナーが次回の投資への参加を決定するなら、当社としては大変嬉しいことです」ミスラ氏はそう語った。

サウジアラビアの公共投資ファンド(PIF:Public Investment Fund)は最初のビジョン・ファンド最大の支援者で、全体で約1000億ドルのうち450億ドルを出資していた。しかしPIFとムバダラはビジョン・ファンド2への参加を拒否した。ビジョン・ファンド2は日本のソフトバンクが支援しており、300億ドルの投資資本で立ち上げられた。

これまでのところビジョン・ファンド2は約200億ドルを投資しており、全て投資された後、ミスラ氏と氏のチームは別のファンドを検討している。「ビジョン・ファンド3やビジョン・ファンド4を予定しています。11箇所の事業所に450人の従業員がいます。重要なことは、今後10年、12年、20年、この仕事を続けてくれる彼らのためのインフラを構築することです」ミスラ氏はそう述べた。

先日、日本のソフトバンクに大きな利益をもたらしたことにより、ミスラ氏の自信は強化された。巨大金融企業の創業者であり最高責任者である伝説的な投資家・孫正義氏は、日本企業による過去最大の利益を報告している。その額は460億ドルで、大部分はビジョン・ファンドから得られた利益である。

ビジョン・ファンドがパンデミック危機で生じた大きな利益を金融市場で得ていることをミスラ氏は認める。各国政府が大規模な刺激策で介入し、働き方や旅行のパターンが変化したため、テック関連の株価が急騰したのだ。

「去年、新型コロナウイルスが我々の見通しを証明し、ビジョン・ファンドを劇的に加速させました。いずれにせよ、同じことは起きていたはずです。パンデミックは(物事を)数年加速させたに過ぎません。パンデミックは、デジタル・サービスを採用するきっかけとなりました。市場の後押しがあった。市場の回復力は重要です。しかし企業も上手に活動しなければなりません。市場が良好だとしても投資の仕方が悪ければ利益を得ることはできません」ミスラ氏はそう語った。

ビジョン・ファンドは一連の新規株式公開 (IPO)の成功を享受している。特筆すべきは、韓国のEコマース企業グループ「クーパン(Coupang)」のニューヨークオフィスの株式公開で数十億ドルの利益を得たことだ。

「最近5ヶ月で、複数のIPOが大きな利益を生んでいます。我々はクーパンが好調ではなかったときにもクーパンに出資していましたので、クーパンの結果は心躍るものであり、素晴らしいストーリーです」ミスラ氏は語った。

2018年のPIFとムバダラによる出資は急速に成長するテクノロジー部門での財務利益を見込んでいたことが部分的な投資理由だった。しかし、ビジョン・ファンドのポートフォリオ企業から中東の雇用を生み、スタートアップ企業を誘致する必要もあった。

ミスラ氏は、自分はビジョン・ファンドのサウジ企業(とあるメッセージング企業)への初投資の「只中」にいるとアラブニュースに語ったが、その企業からの発表が行われるまでは詳細を明かすことは控えた。取引は来週中に発表される可能性がある、と氏は付け加えた。

「この地域のビジョン・ファンドのポートフォリオ企業が多数の雇用を作り出してきたことと思います。たとえば建築業界、ホスピタリティ業界、テクノロジー業界などです。また我々はPIFだけでなくサウジアラビア投資省とも密接に関わり、この事業を行っています。ビジョン・ファンドは4歳のファンドです。今後長年に渡って続いていくことでしょう」ミスラ氏はそう述べた。

ミスラ氏はアブドラ国王科学技術大学(KAUST)の役員となっている。「KAUSTは世界トップの科学系大学の1つです。サウジアラビアには素晴らしい才能が存在しています」氏はそう語った。

「あらゆる部門に渡って無限の投資機会があります。3,000万人の人口を抱え、若く、成長しています。行動的なリーダーシップを備えており、リヤドをこの地域のビジネス・ハブにするという意欲的な計画があります」

「地域本社を誘致するという先日の発表は、移転を促す大きなインセンティブを引き起こしています。つまり、リヤドのことです。リヤドは最近、最も起業家精神にあふれた都市トップ15に選ばれました。世界中から非常に多くの対外投資を惹きつけていることと思います。申し上げている、ビジョン・ファンドからの地元企業への初投資もその中に含まれているということです」

ミスラ氏は、初期段階のハイテク企業に投資を行うというビジョン・ファンドの基本戦略は正しいという主張を崩さず、テクノロジー部門の査定額が暴落しているという意見は否定した。

「テクノロジー革命は加速中なのです。Eコマースや食品配達のようなお馴染みの業界だけではなく、生命科学の分野でも加速しているのです。大きな業界内で加速しています。GDPに影響のある2大業界と言えば何でしょう? 医療と教育です」ミスラ氏は語った。

「今度の5年間で、カスタマイズ医療で数千億ドルの価値が生み出されます。医療のコストが削減され、オーダメイド医療でもコストが削減されます」

「また、オンライン教育の民主化も行われ、教育を受けやすくなり、オンライン教育の品質向上の刺激となることでしょう。世界中の高校や大学でアイビーリーグのオンライン授業が受けられるようになるでしょう。AIが世界のあらゆる業界を変えることでしょう」

「テクノロジーはどこへも行きません。テクノロジーは日常生活に対する人間のDNAと同じように、人間に密接に関わっているのです。受け入れなければビジネスが破綻するでしょう」

ビジョン・ファンドは過去、大きなガバナンスの問題に悩まされてきた。特に、シェアオフィス会社「WeWork(ウィーワーク)」の2019年の上場中止や、それに続いてWeWork創業者らが関係する利害の対立が明るみに出たことが大きかった。ビジョン・ファンドのポートフォリオ企業に「西部開拓時代の文化」が見受けられるという批判もあった。

ミスラ氏はその批判には同意しない。「ビジョン・ファンド1のポートフォリオ企業は85社です。ビジョン・ファンド2では70から80社です。当方が取得しているのは、そうした企業の過半数以下の株です。当方がそれらの企業を経営しているわけではありません。当方は取締役会に名を連ねており、そうした企業を注視してはいますが、日々の経営を行っているわけではありません」

「しかし、一定のミスは犯しました。我々はそこから学んでいます。それ以降、大きな方針転換を行い、現在は創業者との利害の対立がないことを確認しています」

ミスラ氏は、「空箱」企業とも呼ばれる特別買収目的会社(SPAC)の最近の流行に関し、株式市場への上場を早めることで利益が得られると述べたが、ビジョン・ファンドのポートフォリオ企業の中には株式公開のために同ファンドのSPACを利用した企業は存在しないことを指摘した。

「これに関する最も重要なメッセージは、ある企業にとって、株式を公開するということは、株式公開の準備と覚悟ができていなければならないということです。四半期ごとに会議に出席し、アナリストや株主に実績を説明しなければならないということを理解しておく必要があります」ミスラ氏はそう語った。

ミスラ氏は孫正義氏への敬意を熱く語った。孫氏はソフトバンクの創業者であり、ハイテク投資の世界では「先見の明を持った人物」と評されることが多い。ミスラ氏は、孫氏が2006年に日本の小規模な携帯電話事業会社に数十億ドルの投資をしたときのことを思い出す。いわゆるスマートフォンが発売されるほんの少し前のことである。

「孫氏はこう言いました。『ラジーブさん、あなたは分かっていません。コンピューターはデスクトップから携帯型へと移行していきます。もはやデスクトップで仕事をすることはなくなっていきます。コンピューターが必要な仕事には携帯電話を使うようになります。今後の10年を見通し、私はそこに賭けようと考えています』」

「このエピソードで孫氏のビジョンの本質がお分かりいただけることでしょう。当時のソフトバンクの時価総額は90億ドルでしたが、孫氏は10年先を見て、競争の激しい市場に200億ドルの投資を行うことを考えていたのです」

ミスラ氏は付け加えた。「これが15年前のことです。全て孫氏の予想通りになりました」

ツイッター: @frankkanedubai

特に人気
オススメ

return to top