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リヤド:天然ガス価格の高騰により世界中でインフレが加速し、中でもヨーロッパが最も影響を受ける見通しだとキャピタル・エコノミクス社はレポートで発表した。
同レポートは不合理な異常気象条件が温暖化と寒冷化を長引かせ、中国のコロナ禍からの復活もガス需要を押し上げたと述べた。一方、2020年の異常気象とコロナ禍に関連した価格暴落は米国の生産と輸出に打撃を与えた。一部の液化天然ガスプラントの運転停止、そしてロシアが政治的理由によりウクライナ経由の輸出を制限したことで需給バランスが崩れたことで、世界的にガス価格が高騰した。
最も顕著な影響を受けたのはユーロ圏で、ガス・電気のインフレ率上昇により、総合インフレ率CPIは年初から0.5pptsの増加となった。
「第2四半期の初めから、ヨーロッパのガス価格(TTF)は290パーセント上昇、アジアLNGのスポット価格は260パーセント上昇し、米国天然ガス(ヘンリーハブ)は約2倍となった」と、同レポートは述べた。
米国のガス価格に顕著な上昇はみられず、米国ではガス・電気がCPIバスケットに占める割合も低いため、ガス・電力インフレ率上昇による今年のCPI増加はわずか0.2pptに留まった。日本のガス価格は長期契約に基づき原油価格に連動しているため、0.4pptの増加となった。ガス価格が長期契約および連動制で決まる傾向がある多くの新興国でも同様の展開となっている。
「ガス価格はまだしばらく高止まりとなると考える。世界的に、特にヨーロッパでは株価が歴史的低値を付けており、我々の読みが正しく供給が戻ったとしても回復には時間がかかるであろう」と、グローバル・エコノミクス・サービス責任者のジェニファー・マッキューン氏はレポートで述べた。
しかしマッキューン氏は、2022年第2四半期まで価格は下げ圧力にさらされ続けると予想した。
現在の価格は、特にシェールガスが比較的早く増産可能な米国で供給を刺激するとみられる。またこの状況により、ロシアからドイツへと繋がるパイプライン、ノードストリーム2の承認も加速する可能性が高い。時価により需要が抑制さられそうな見通しだとレポートは述べた。
各国政府はすでに消費者への影響を抑えるよう動いており、価格転嫁はかなり小さくなる見込みだ。
マッキューン氏によると、ガス・電気のインフレ率は16パーセント上昇し、これにより先進経済諸国で今年すでに総インフレ率が0.3ppt上昇しているところ、残りの年内はさらに平均0.3ppt高くなるとみられる。「ガス価格が落ち着くという我々の予測に則り、来年は逆転するはずである。しかしガス価格は特に上下しやすく、どちらの方向にもリスクがある」と氏は述べた。
エネルギー価格の高騰により裁量支出に使える収入が食われ、多くの経済大国で活動が鈍化する見通しだとレポートは述べた。また、特に価格統制が行われている国、中でも英国のエネルギー業界に悪影響がもたらされるおそれがあるとも追記されていた。