
ワエル・マハディ、シャタ・アルマスーディ
リヤド:フランス資本の電力大手エンジー社(ENGIE)のサウジアラビアにおける最高経営責任者を務めるターキ・アル・シェリ氏はグリーン水素についての興奮を隠せなかった。しかし、従来型のエネルギープロジェクトが現在直面している困難についての懸念も隠すことができなかった。
同氏はアラブニュースに、グリーンではない施設の資金調達は「より一層困難」なものになってきていると語った。信用格付けのないプロジェクトでは、企業財務や信用分析を自社で行わなければならないこともあったと言う。
「これは現段階での理想的なあり方ではありません」と、同氏は語る。
その一方、未来は水素であるとアル・シェリ氏は確信している。同氏は次のように語る。「水素は世界のエネルギーを変えると考えています。グリーン水素の時代が来ています。グリーン水素が流行の業界用語になる前から、当社は年間約6,000万ユーロを世界中のグリーン水素の研究に費やしてきました」
水素は何十年もの間、未来の燃料だったが、このテクノロジーへの投資は近年増加してきている。
欧州連合は2030年までにグリーン水素に4,300億ドルを投資する計画だ。さらにサウジアラビアとともにチリ、日本、オーストラリアなどの国々が、この技術に多額の投資をしている。
グリーン水素は再生可能エネルギーを使用して水を分解して生成される。電気分解というプロセスである。これはグレー水素とは異なる。グレー水素はメタンから生成され、大気中に炭素を排出する。また、排出物質を回収および再利用するブルー水素とも異なるものである。
現在のところ世界で生産される水素の0.1%以下がグリーン水素だが、そこに変化が起きている。
サウジ王国の巨大プロジェクトの1つ、5,000億ドルのメガシティ「NEOM」はグリーン水素で電力供給される。この紅海沿岸の巨大未来型開発が最初に発表されたのは2017年。面積はニューヨーク市の33倍となる。NEOMでは最新の最先端技術が使われる。道路に車はなく、歩行者は顔認証機能付きの機械でサービスにアクセスできる。
この都市は100%再生可能エネルギーで運営され、グリーン水素が大きな役割を担う。
風力や太陽光エネルギーは家庭や電気自動車に充分な電力を供給できるだけの電力を生み出せる。しかしグリーン水素にはさらに大きな潜在能力があり、大規模生産工場への電力供給や、航空機、船舶、長距離トラックなどのような電動化の難しい輸送手段にも電力供給が可能となる。
サウジ王国は世界で最も安価な風力や太陽光電力を享受している。日中の日照率が高く、夜間は安定した風があるからだ。そしてサウジアラビアはグリーン水素開発への投資を強化する意向だ。
エンジー社のアル・シェリ氏は、このタイプの電力は化石燃料よりも高コストであることを認めている。しかし、中東の低コストのグリーン・エネルギーのおかげで、こうした電力は輸出ポテンシャルも備えた魅力的な選択肢となっている、と付け加えた。
去年7月、NEON、サウジのエネルギー企業ACWA Power社、米Air Products社は、世界最大のグリーン水素プラントを建設する50億ドルの契約を結んだ。このプラントで2025年までに1日あたり650トンのカーボンフリー水素が供給される。
アル・シェリ氏はこの契約を「素晴らしい成果」と呼び、「エンジー社に関しても、今後同様のチャンスがあると思います」と付け加えた。
アル・シェリ氏によると、このような初期段階のグリーンプロジェクトを軌道に乗せるためには、発電した電力を合意した価格で引き取ることを保証する政府プロジェクトに出会った企業が鍵になると言う。
「政府プロジェクトの優良な信用格付け機関からのグリーンファイナンスは全く問題になりません」アル・シェリ氏はそう語る。
3月、エンジー社のサウジアラビア支社は一部太陽光パネルの電力も使用されるサウジ王国初の大規模海水淡水化プロジェクト建設のため4億5千万ドルの契約を結んだ。
エンジー社は25年間の施設運営権を持つ。施設はメディナの140km西に位置し、2023年の最終四半期に操業開始予定である。
このプロジェクトの建設で500件の雇用が創出され、そのうち約40%がサウジ人に行き渡る。
この時、アル・シェリ氏は次のように語った。「当社の目的は国内に雇用を生み出し、外国直接投資(FDI)の増加を支援し、経済を多様化させ、エンジー社のグローバルな専門技能をサウジアラビア王国に活かすことです」