
カリーヌ・マレック
ドバイ:新たな報告書によると、湾岸協力会議(GCC)の加盟国は、知識集約型経済を目指してますます動き始めているが、それには重要な注意点が伴う。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の報告によると、近年の発展にもかかわらず、GCC諸国の研究出版物の数は非GCC諸国に比べて少ないままであり、知識経済のさらなる確立には長い道のりが必要だ。
この調査結果や地域の研究大学との議論により、PwCはGCCの研究エコシステムが直面する重要な課題を特定するに至った。
これらの課題には、修士課程や博士課程の学生の誘致と維持、競争的資金の獲得、新規研究者のスタートアップ支援、新規研究者へのメンタリングやトレーニング、助成金の申請書類作成などの事務的サポートが含まれる。
PwCのグローバル教育ネットワークリーダー、サリー・ジェフリー氏は「GCC諸国は(研究成果の量が乏しいという)課題について、十分に認識しています」と述べる。
「省庁や大学と話すとき、直面する問題について私たちと共通の認識があり、彼ら自身もその重要性と緊急性を認識しています」と、彼女は言う。
「現在必要なのは、計画だけでなく、実行に移し始めることです。ガバナンス面の課題については、実験的な試みを通して把握することができるでしょう。」
報告書によると、これらの課題の解決には、GCC諸国の政府は明確な国家研究課題を策定し、支援の行える法的枠組みを確立し、研究資金を効果的に配分し、産学連携を奨励し、機関や個人に権限を与えることが必要だ。また、大学は研究施設にさらなる投資を行う必要がある。
「助成金の申請方法や最適な指導教官の見つけ方、国際的な共同研究を行う方法など、日常的に研究者を支援できるようなコミュニティを作る必要があります」と、ジェフリー氏は述べる。
「研究者として成功するには幅広いスキルが必要です。最高峰の大学の中には、学術面や科学面での支援に加えて、事務や知識管理の課題に直面している研究者をサポートしている大学もあります。」
大きな動きとしては、サウジアラビアでは研究推進室を設置し、国際的な研究者とサウジアラビアの研究者との協力や共同研究を奨励している。
「彼らは競争的資金を提供し、研究者のさらなる協力を奨励しており、その影響ははるかに強大です」とジェフリー氏は述べる。
「これらの研究者が成功するために、資金を提供し支援を行う必要があります。」
2018年のデータに基づいたPwCの報告書では、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールがGCCにおける学術研究の大部分を占め、中でもサウジアラビアの大学が最も大きく寄与しており、出版物の数は23,448本にも及ぶことが分かった。
人口規模の点からは、カタールが局所的に好調で、居住者1,000人に対して1.6本という出版物の割合を示した。アラブ首長国連邦では、7つの大学が国の研究成果の大部分を占めた。MENAリサーチパートナーズのCEO、アンソニー・オベイカ氏は、「GCC諸国とより成熟した国々との間に現在ある格差は驚くべきことではありません。しかし、今後数十年の間にその格差は埋められるでしょう」と述べた。
「教育が重要な位置を占める、長期的な変革ビジョンを地方政府が実施し始めたのはごく最近のことです」と彼は付け加えた。
「質の高い教育を啓発し、民間の参加を促進し、地域の労働力へのトレーニングを導入する ―これらは、将来の博士号の創出、ひいては研究出版物の増加に繋がると考えられる取り組みの一例です。」
オベイカ氏は、人口規模や経済規模を考えると、サウジアラビアは今後も多くの研究者を引き付け続けると予想している。
PwCの報告書によると、GCC諸国政府は博士研究員や博士課程学生の数を増やすための対策を取っているが、その道のりは長いと言う。
例えば、サウジアラビアにおける居住者1,000人当たりの博士課程の学生数が0.34人なのに対し、イギリスでは2.69人だ。「研究人材の世界的な競争を考えると、簡単なことではありません。この地域でトップの研究者が、より成熟したエコシステムを持ち、より迅速にインパクトを与える機会のある、他国で働きたいと思ってもおかしくはありません」とジェフリー氏は述べる。
そうは言っても、湾岸地域の有識者の一部は、重要なのは出版物の数ではなく質であると考えている。そのうちの1人がユニバーサルストラテジーのCEO、サバ・ビナリ博士だ。「この数字を見ると、研究分野におけるGCC諸国の立ち位置を理解する上で提供されているデータは、実際にはほとんど意味を持ちません」と彼は述べる。
「簡単に言えば、出版物が1,000本あっても、それらが現実の市場革新につながらなければ地域経済には何も貢献しません。しかし、市場の革新につながるような出版物は例えひとつでも、国の経済に大きな付加価値を与えることができます。」
ビナリ博士は、研究面の改善は、経済的付加価値の長い連鎖における一つのリンクに過ぎないため、GCCがそれを推進することは重要ではない、と述べた。
「研究は、製品やサービスの革新につながる必要があります。またその後も、それらをクライアントに販売することなどが必要です。簡単な例としては、時価総額で世界最大の企業のひとつであるアマゾンが挙げられ、それは研究ではなく顧客サービス体験に基づいて構築されてきました。」
「GCCに欠けているものは、独占が解消され、失敗が許される起業家環境です。CareemやSouqといった最も世に知られている企業は、起業家精神に基づいています。」
ジェフリー氏は、研究は地域でより多くの雇用を創出する可能性があるため、知識経済の主要な原動力のひとつであると言う。
「この地域で輸入している商品の数を見れば分かるように、より強固な製造分野を創出し、雇用を増やし、石油収入への依存を減らす必要があります。高度なR&D(研究開発)能力を持つことの大きな利点のひとつに、雇用と経済成長が挙げられます」と彼女はいう。
「業界における大手企業は地域外に研究を委託することが多いため、教授陣が業界とより密接に協力するよう促し、地域に多くのお金を落とすよう納得させることが必要です。」