
アラブニュース
リヤド:S&Pグローバル・レーティング社(S&P社)が実施した調査によると、湾岸協力会議(GCC)諸国はFIFA 2022ワールドカップで恩恵を受ける見込みであり、120万人以上のファンがこのイベントに参加すると予想されている。
この流入により、カタールの人口が1.5倍に増え、アラブ諸国は短期的に経済的利益を得ることができる。
さらに、世界最大級のスポーツイベントを運営するという物流上の課題は、GCCの他の地域にプラスの経済波及効果をもたらす可能性の方が高い。
報告書によると、ドバイは地理的に近く、観光産業が発達しており、航空路線の乗り換えも整備され、数次入国ビザも取得できるため、カタール以外で最も恩恵を受けるとされている。
しかし、これはカタール経済のレーダーに映る一時的なものなのだろうか。
それ程の変化ではなく、ワールドカップ後は景気が減速することが予想される、というのが今回の調査の結果である。
接客業や不動産業における供給過剰で経済成長が緩やかになる可能性はあるものの、銀行部門の資産内容の質への影響はないとみられる。
「ワールドカップの直接的な影響はプラスに働くが、大部分は短期的なもので、中期的なカタールの経済成長見通しには影響しない」と調査報告書は指摘している。
S&P社が最近カタール政府の格付けを「AA-」から「AA」に引き上げたのは、債務負担の減少や300億ドルのノースフィールド・ガス田東部の拡張プロジェクトに伴う政府歳入の増加が見込まれるためだ。
S&Pの格付けによると、2022年のカタールの実質GDP成長率は4.8%で、2021年から急上昇すると予想されており、これは、ワールドカップに伴う経済活動の増加や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の規制解除に伴う景気回復が一部起因しているとされている。
非石油部門のGDP成長率は、2021年の3%から2022年には8%に達すると予想さ れる。
ただしちょっとした注意点があり、S&P社は、イベント期間中は営業時間が制限される可能性があり、その結果非石油部門の成長が鈍化するとのマスコミの報道を引用している。
炭化水素部門はほぼ横ばいの成長を見込んでいるが、実質GDPに占める割合は約65%であり、全体の推定値を引き下げている。
また、ノースフィールド・イースト(NFE)プロジェクトの一部のフェーズが稼動し、カタール・エナジー社の液化天然ガス生産能力が年間77百万トンから2025年には1億900万トン、2027年には1億2,600万トンに増加することから、カタールのガス生産量は2025年以降に大きく増加すると考えられると、同社は付け加えた。
「カタール国家ビジョン2030」の一環として、またワールドカップ準備のため、カタール当局は2015年から2024年までの10年間のロードマップのプロジェクトを実施している。
その結果、政府の設備投資は2015年から2022年の間にGDPの平均13%になると試算される。
プロジェクトの一環として、道路、地下鉄の駅、下水道、病院、学校などが建設された。
調査報告書は、こうした分野への投資はワールドカップに関係なく行われただろう、としている。
また、ワールドカップ競技のためのスポーツ施設には、GDPの約3%の直接支出がかかるとS&P社は推定している。
カタールは、GCCの他の国々と国外からの投資の誘致を競っている状況だ。
サウジアラビアがより多くの人口を抱え、そのため市場も専属市場となっている一方、ドバイは既に地域のビジネスハブとして確立されている。
カタールは長期経済計画の一環として、2030年までに年間600万人の観光客誘致を目標としている。
2021年にアラブ諸国が受け入れた国際線旅客数は60万人で、2022年上半期には70万人に増加したと推定されている。
しかし、それでも2019年に迎えた旅客数210万人を下回っている。