


ニューヨーク:歴史的にも重要なブルックリンのシナゴーグは、ユダヤ教ハシディズム派の活動の中心となっているが、1月第2週、隠しトンネルが発見されたことを始点として、礼拝者たちと警察の間で小競り合いに至る他に例を見ない地域的な紛争に発展し、その評判は深く傷つけられた。
クラウン・ハイツにあるハバド・ルバヴィッチ運動の世界本部で紛争が勃発した。ユダヤ人が深く崇敬するクラウン・ハイツのこの施設には、留学生や宗教指導者を初めとした数千人もの人々が毎年訪れる。そのゴシック・リバイバル様式のファサードは、ハバド運動の信奉者には即座にそれと分かるもので、世界中の数十ヶ所で類似の意匠のものが複製されている。
しかし、1月9日になってもこのシナゴーグは依然として警察のバリケードで閉鎖されたままだった。公的な許可が無いまま掘削されたトンネルがこの有名な建造物に構造的損傷を与えた可能性の有無をニューヨーク市の建築局が検査していたためである。
ニューヨーク市当局の関係者や地元住民は、地域の若者たちが秘密裡に聖域へのトンネル通路を最近建設したのだと語った。1月8日にハバド運動の指導者たちがこの通路を封鎖しようとした際に、若者たちのグループが抗議活動を開始した。その後、警察が取締りに動き出し逮捕者が出るに及び、抗議活動は暴力的なものへと発展した。
軋轢の契機となったトンネルの正確な目的と経緯については、依然として議論が続いている。
ハバド運動の広報担当者のモッティ・セリグソン氏によれば、この通路は、世界本部裏の空きアパートの地下を起点とし、事務室や講堂の下を蛇行し、最終的にシナゴーグへと至っているという。
セリグソン氏は、その通路の建設は、的外れな考えを持った若者グループが為した不正な破壊行為であると述べ、「シナゴーグへの壁を破り、聖域を損壊し、無許可なアクセスを確保しようとした過激派」を非難した。
他方、このトンネルの支持者たちは、ハバド運動の指導者だったレベ・メナヘム・メンデル・シュナーソン氏が長年にわたって構想していた施設の「拡張」計画を実行しているのだと語る。
シュナーソン氏は、1994年に死去するまでの40年以上ハバド・ルバヴィッチ運動の先頭に立ち、ホロコーストによって荒廃したユダヤ教ハシディズム派内の宗教コミュニティを再建した人物だった。
この「拡張」の支持者たちは、シナゴーグの地下が長期にわたって過密状態だったため、追加スペースの併設を求める人々もいたが、地域住民の中にはそれでは時間を要し過ぎると感じていた人々もいたと語った。そうした「拡張」支持者の多くは、シュナーソン氏が依然として生存しているという救世主信仰のような信念を持っている。
「それはラビが望んでいることです。それが、皆が望んでいることなのです」と、ブルックリンに住む21歳のザルミー・グロスマン氏は語った。
グロスマン氏は、その隠しトンネルの建設計画は、シナゴーグとその背後にある「空地全体」を接続する方法として2023年末に始まったのだと語った。
ハバドの指導者たちは、地下通路を発見した時期については明らかにはしなかった。しかし、シナゴーグにやって来た複数の礼拝者たちは、トンネルが存在しているという噂は、最近数週間、地域コミュニティ全体に広がっていたという。
1月8日、セメントを運搬するトラックがトンネルの開口部の封鎖のために到着し、緊張が高まった。その後、トンネルの支持者たちは抗議行動を起こし、シナゴーグの壁の木製の羽目板を剥がした。
警察署の広報担当者は、不法侵入し壁に損傷を与えた騒動好きなグループへの対応のために、午後になって警官たちは建物まで出動したのだと述べた。
目撃者の話では。警察側は数時間にわたって若者たちにトンネルの入口から移動するよう説得していたという。
若者たちが拒否した後、警官たちはその一帯を白いカーテンで覆い、土埃の舞うトンネルに結束バンドを持って入り、抗議活動を行っていた人々を拘束した。
「結束バンドで拘束された最初の1人を警察が連れ出した時に騒動が起きました」と、シナゴーグで学ぶ21歳のバルク・ダハン氏は語った。ダハン氏は礼拝の会衆が争う様子を動画撮影した。「ほぼ全員が警察の行為に反対していたのですが、結束バンドで拘束されていた人を見て、混乱と押し合いが発生しました」
ソーシャルメディアに投稿された映像には、数多くの見物人(ほぼ全員が若い男性)がニューヨーク市警の地域担当職員に野次を浴びせる様子が収められていた。木の机を空中に持ち上げて、祈祷書を撒き散らした者もいた。この状況に対応しようと、1人の警察官が刺激性のスプレーを若者グループに対して用いた模様である。
警察によると、19歳から22歳までの9人が最終的に逮捕されたという。容疑は、犯罪的ないたずらや無謀な危険行為、行政妨害などだった。他に、3人が治安紊乱行為で召喚状を受けた。
建設局の報道官は、1月9日夜、検査結果はまだ出ていないと述べた。
建物は閉鎖されたままだったが、小雨の振る中、数人の礼拝者は屋外で祈りを捧げた。
「地元のコミュニティは、つらい気分です」とダハン氏は語った。「拡張するどころか破壊してしまったのは不名誉なことです」
AP