Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 特集
  • 日本の古都で、伝統とAIが融合した「西陣織」

日本の古都で、伝統とAIが融合した「西陣織」

2025年7月3日、西陣織の4代目当主である福岡弘典さんが、西日本・京都でAIとコラボレーションした生地の制作に取り組んでいる。(AP)
2025年7月3日、西陣織の4代目当主である福岡弘典さんが、西日本・京都でAIとコラボレーションした生地の制作に取り組んでいる。(AP)
Short Url:
25 Jul 2025 07:07:46 GMT9
25 Jul 2025 07:07:46 GMT9

京都:日本の古都京都で1000年以上も受け継がれてきた、着物の複雑な織り技術「西陣織」に、人工知能というハイテクなパートナーが登場した。

11世紀の平安時代に生まれた「源氏物語」と結びついた、色鮮やかな織り方は、その歴史の中で浮き沈みを繰り返してきた。しかし、現代化に直面する日本人の中で着物の需要が急落する中、その存続はかつてないほど危ぶまれている。

西陣織の事業4代目当主である福岡裕典氏は、AIに頼るとしても、受け継いだ芸術を継承する決意を固めている。

「父が私に遺したものを後世に残したい」と、京都の西陣地区にある古びた店で彼は語った。この街は、像が並ぶ寺社や彫刻のような庭園が点在し、時が止まったような雰囲気だ。

「西陣織の技が現代のニーズにどう応えられるか、ずっと考えてきた」と福岡氏は述べた。

AIプロジェクトに加え、福岡氏は織り技術を応用して、釣り竿や航空機用の超耐久性素材の開発にも取り組んでいる。

伝統と技術が交わる場所
福岡氏の工房では、巨大な織機がガタガタと音を立てている。織機からゆっくりと現れる美しい布の模様は、反復的で幾何学的なため、デジタルデータへの変換に適している。手染めした色糸をどこに配置して模様を作るかを決める作業は、コンピュータのオン・オフのデジタル信号に似ている。

このような類似点に着目し、福岡氏は、エレクトロニクス・エンターテインメント企業ソニー株式会社の独立研究部門であるソニーコンピュータサイエンス研究所の協力を得て、AIが西陣織にどのように活用できるかを研究している。

AI はデザインの提案のみを行い、実際の生産作業は一切行わない。しかし、福岡氏や研究者たちはそれを気にしていない。

「私たちの研究は、新しいイノベーションと不変の要素の両方が存在して初めて、人間の生活は真に豊かになる、という考え方に基づいています」と、ソニー CSL の最高科学責任者である暦本 純一氏は語る。同社では、AI を活用して、伝統的な茶道の動作を記録し、伝承する方法も研究している。

「私たちはAIがすべてをできるとは考えていない。西陣織は巨大で複雑な産業であり、まずAIがどこで役立つかを把握することから始める必要がある」と、東京大学教授でもある暦本氏は述べた。

その結果生まれたのは、驚くべきが論理的な思考の転換で、日本の皇室が着用する着物に施される芸術にふさわしいものとなっている。

AIには既存の Nishijinori パターンが複数入力され、独自の提案を生成するように指示された。その一つは、黒とオレンジの鮮やかなパターンで、熱帯のモチーフを連想させるものだった。

バランスを取る
福岡氏にとって、AIのアイデアの一部は興味深いが、単純に的外れなものもある。AIと人間の努力の違いは、前者が数秒で複数の提案を生成できる点にある。

福岡氏は、伝統的なパターンの角張った線を葉のモチーフで表現したデザインに即座に惹かれた。これは人間が思いつかないアイデアだと彼は言う。その独創性に感心している。

AIコラボレーションで生まれた着物は、豊かな柔らかい緑色だが、価格設定はなく、まだ生産されていない。

織りは、人間のアーティストの指導の下、伝統的な方法で古い織機で行われる。

西陣織の着物は100万円(約6,700ドル)もの高価なものもある。現代の多くの日本人は着物を購入せず、結婚式などの特別な機会にレンタルするケースが多い。

着付けは手間がかかり複雑な作業で、専門家の助けが必要になることが多く、着物はさらに手の届きにくい存在となっている。

創造的なパートナーシップ
ソニーCSLの准研究員であるラナ・シナペイエン博士は、AIは創造的で楽しい仕事に割り当てられ、退屈な作業は人間に任されることが多いが、逆であるべきだと考えている。

「それが私の目標だった」と、彼女は福岡織物でのインタビューで、AIをリーダーシップの役割ではなくアシスタントの役割で活用する意図を語った。

デジタル技術は、西陣織の色のグラデーションを自動的に再現することはできない。しかし、AIはデジタルで最も適切な方法を導き出すことができ、人間アーティストが作成したパターンを修正する方法を学ぶこともできる。

これらの作業が完了すれば、AIは数秒で困難な作業を処理し、研究者によると、かなり高い精度でこなすことができる。

人工知能は、工場、オフィス、学校、家庭など、幅広い分野で活用されている。人間よりも迅速かつ大量にタスクを実行でき、通常は正確で偏りがないためだ。その普及は、変化に慎重で、慎重な合意形成を重視する日本よりも、米国や他の西洋諸国で速い。

しかし、フィンランドのクラフト教育者がAIの活用を調査したヘンリッカ・ヴァルティアイネンとマッティ・テドレの研究によると、アートやクラフト分野でのAIの活用は有望だ。例えば、テキストから画像を生成する生成AIは、テキストの指示から視覚的な画像を作成する技術だ。

「コンピュータが人間が以前行っていた多くのルーティン的で退屈なタスクを引き継ぐにつれ、コンピュータ革命は時間を解放し、人間の想像力と創造性への新たな機会を提供するともいわれている」と彼らは述べている。

AP

特に人気
オススメ

return to top