川越（日本）：1日の2020東京大会でザンダー・シャウフェレ選手を金へと鼓舞した動機には、メダルへの想い以上の物語があった。

シャウフェレ選手は、世界ランキング五位のゴルファーだ。その彼を突き動かしたのは、父が逃したオリンピック出場の機会と、日本にいる30人以上の親族だった。観戦が許される試合では、ショットを放つ度に声援を上げる母方の祖父母の姿がコース上にあった。

アメリカのシャウフェレ選手は、予想外の銀メダルを獲得したスロバキアのロリー・サバティーニ選手に1打差で勝利した。銅メダルには、7人での壮絶なプレーオフの末に台湾のC.T.パン選手が輝いた。

全米PGAツアーで4度の優勝を収めている27歳のシャウフェレ選手は、世界にまたがる系図を持つ。

台湾人の母が日本育ちだったため、文化的には日本寄りの環境で育てられた、と彼は語る。

「私の同胞（パン選手）がすぐ隣にいます」と、メダリストの記者会見で彼は笑った。

「フランス、ドイツ、台湾、それに日本の血が少し入っていますから、世俗的なつながりがあります。母は台湾で生まれました。実際に、私には半分、台湾の血が流れています。」

「母は4歳から日本で育ちました…そして祖父母は以来ずっと、日本で暮らしています。そのおかげで、台湾と日本それぞれに親類がいます。」

通常なら、日出づる国へ彼がやって来る度に、親戚一同のパーティーが開かれる。親類のほとんどは東京で暮らしているため、新型コロナウイルスによる制限や緊急事態宣言が敷かれていなければ、それが普段の過ごし方になのだ。

だがシャウフェレ選手の受け継ぐ歴史は、合衆国と極東のさらに遠くにまで及ぶ。フランスとの混血だった彼の父、ステファン氏は、ドイツで10種競技のトップ選手として活躍していたのだ。けれども彼は、オリンピック選手になるという自身の夢を果たすことができなかった。

40年前、ステファン氏の車はオリンピックの訓練へ向かう途中、飲酒運転者に追突された。ステファン氏はその事故で、左目の視力喪失を含む複数の怪我を負ったのだ。スポーツにかけた彼の野心は瞬時にして打ち砕かれた。

2017年の全米PGAツアーでルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞したシャウフェレ選手は、米国チームのためにメダルを勝ち取ったことに満足している。だが、家族の中で実際にアメリカ国籍を有しているのは彼のみであることを指摘した。

「生粋の米国人、合衆国で生まれた人間は家族内で私だけです」と彼は微笑んだ。シャウフェレ選手の兄であるニコ氏はドイツのシュツットガルト生まれだ。世界を股にかける家族背景は、素晴らしい人生観をもたらしてくれた、と彼は語る。

「大変国際的な環境にあることで、異なる文化について多くを学ぶことができ、それらへの理解を深めることができたと思っています」と、シャウフェレ選手は述べた。彼はこれまでに、10回以上日本を訪れている。

「みんながよりたくさん旅行できて他の文化を体験できたなら恐らく、お互いに仲良くやっていこうと進んで考えられるようになると思います。」

銀メダリストのサバティーニ選手は、現在スロバキアチーム所属だが南アフリカのダーバン生まれだ。彼は、シャウフェレ選手を大いに称えた。

最終ラウンドで61という驚くべきスコアを出し、衝撃のメダル獲得を成し遂げたサバティーニ選手は次のように述べた。「ゴルフの試合を抜きにしても、ザンダーはたぶん、私が会ったことのある中で最高に素晴らしい紳士の1人。いつでも親切にもてなしてくれて、きちんと育てられた人物だということが分かります。」

オーガスタで開催されたマスターズで、シャウフェレ選手は松山英樹選手との最終ペアリングに勝利を逃すという苦しみを味わった。だが2020年のツアー・チャンピオンシップ以来、初の勝利を挙げるために形勢逆転することを日本が許してくれるように願った。

「日本の皆さんがどう感じているか分かりませんが、祖父母はとても喜んでいるはずです」と彼は述べた。

「ですが英樹より私を応援してくれたのは、日本では彼らだけかもしれません。」

AFP