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メディアで活躍するアラブ女性の増加

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08 Mar 2022 02:03:22 GMT9
08 Mar 2022 02:03:22 GMT9

ラハフ・ジャンビ

リヤド:午前7時に目覚ましが鳴ると、サマル・アル・ミザリ氏のニュースキャスターとしての忙しい一日がまた始まる。アル・ミザリ氏は毎朝、出勤前に朝食のテーブルでメールやSNSのアプリをスクロールし、その日、何が起きているかを把握する。

アル・ミザリ氏はパレスチナ人のジャーナリストで、ドバイのアル・アラビアのプロデューサーも務める。アラブ地域のメディア業界で活躍する若く志の高いアラブ人女性たちの一人だ。

「ドバイのアメリカン大学でメディアを専攻していた時に印象深かったのは、ほとんどのメディアの講義で男性より女性の方が多かったことです。これは、現在、そして未来のメディアはアラブ女性がリードしていくということを証明しています」と、アル・ミザリ氏はアラブニュースの取材に対して語った。

「クラスメイトには、サウジアラビア、スーダン、レバノン、シリア、パレスチナ、ヨルダンの学生がいて、一緒に徹夜してプレス資料を作成したりしていました。それぞれのバックグラウンドを活用してね。みんな若くて野心がある女性ばかりで、必死で才能を発揮しようとしていて、何かにつけていつもバトルを繰り広げていました。おかげで授業がより楽しかったです」

事実、仕事やトレーニングの機会が増えたことで、今ではアラブ人女性がテレビのゴールデンタイムのニュースの司会を務めたり、重大ニュースの現場リポートを行ったりするのをちょくちょく見るようになった。

「女性は感情的な性質に振り回されやすいとか、感受性が強すぎるとか、仕事で困難に立ち向かうことができないなどとよく言われる」と、アル・ミザリ氏は話す。

「私が困難だけれどやりがいのあるこの仕事についた時、仕事をバリバリこなす尊敬できる様々な年齢の女性たちを目の当たりにしました。彼女たちはリーダーとして求められた仕事を徹底的にこなしていました」

だが、最近の社会の進歩にもかかわらず、世界全体ではメディアを所有したり、情報制作を行ったり、意思決定の地位についている女性の割合はまだ十分ではない。

こうした男女間の不平等は、メディアで取り扱うコンテンツにおいてさらに顕著であり、ニュースや特集、番組の主役はほぼ男性だ。

国連女性機関(UN Women)による20年間の調査では、2015年の時点で、新聞やテレビ、ラジオのニュースで発言が引用されたり、インタビューされたり、題材として書かれた対象のうち、女性が占める割合はわずか24%だった。

2020年に発表されたロイター研究所のファクトシートによれば、4大陸10市場の主要なオンライン・オフライン報道機関200社の戦略的サンプルにおける編集長の性別内訳を分析した結果、10市場のジャーナリストの平均40%が女性であるにもかかわらず、編集長を務める女性の割合はたった23%だったという。

この不均衡を解消するために、メディアや指導的立場における女性の数を増やす努力が行われている。

アル・ミザリ氏は、メディアの制作側においても題材としても、女性がしっかりと存在することが不可欠だと語る。アラブの女性として生きる体験を説明したり記録するために、アラブの女性たち自身以上に適役はいないからだ。

アル・ミザリ氏のように、アラブ諸国の女性たちは懸命に努力して障壁を乗り越え、伝統的に男性社会だった業界に参入してきた。

多くの大学がメディア・コミュニケーションのプログラムを設立し、報道業界でのキャリアを目指す若い女性たちを支援してきた。ドバイにあるムハンマド・ビン・ラーシド・スクール・フォー・コミュニケーションもその一つで、全額奨学金制度を提供している。

MBRSCでジャーナリズムを教えるムーサ・バルフム教授は、最近では講義を受ける学生の多くが大志を抱いたアラブ人女性だという。

「私は、将来的にアラブのメディアに携わる女性の数はどんどん増えていくだろうと予想する一人だ」と、バルフム教授はアラブニュースに語った。「MBRSCでメディアの学生を教えた経験からいうと、彼女たちは創造的で、オープンな知性があり、これまでとは違うクリエイティブなメディアをつくりたいと望んでいると感じる」

「『女性のエンパワーメント』という言葉は、行動が外部から起こることを示唆しているため、好きではない。アラブの女性たちは今、自らの役割と地位をその手でつかみ、自分自身にパワーを与えているのだ」

ジッダのビジネス・テクノロジー大学でジャーナリズムを学んだサウジアラビア人ジャーナリスト、リーム・ハンバザザ氏は、近年、メディアとジャーナリズムの講義は進化しており、おかげで常に変化し続ける業界に女性もついていけるようになったと語る。

「メディア業界では女性の存在感が増しています。私が一緒に働く人々の多くも女性です」と、ハンバザザ氏は話す。「この業界はここ10年で劇的に変化しました。サウジビジョン2030で、女性がメディアでより重要な役割を担っていくことが可能となるでしょう」

アラブ女性の存在感が業界で急増加したのは、ソーシャルメディアの登場のおかげで市民ジャーナリズムやマイクロブログが発展したこともある。たとえば、UAEのアルアインでテレビの司会を務めるシリア人のアヤ・ラマダン氏はSNSでキャリアをスタートさせ、テレビに進出した。

「欧米のメディアは、司会者が女性であろうと男性であろうと気にしない」とラマダン氏はアラブニュースに語った。「アラブ世界もこの考え方を取り入れ始めています。性別にかかわらず求める適性に合った人物を雇います。そのため、アナウンサーやキャスター、ニュースディレクター、プロデューサー、ジャーナリストなど、メディアのあらゆる専門分野で女性へのサポートが強化されています」

大学の授業や就職の機会の増加、SNSのプラットフォーム、女性たちの燃えるような野心がこの急速な変化を後押ししてきた一方、文化に根付いた考え方はそうすぐには変わらない。多くの女性が、今も家族や社会からの反対に直面している。

サウジアラビアのテレビ局SBCで司会者を務めるラザン・タリク氏は、メディアの仕事に就くことを当初、父親に反対されていたと話す。

「最初のうち、父は私がメディアに出ることに反対し、メディアを専攻するのを許そうとしなかったです。父方の家族は保守的だから。今だに私と口をきこうとしない親戚もいます」と、タリク氏はアラブニュースに語った。

「でも、時間とともに、父は考え方を変え、今では私のテレビ番組のファンだし、いつも自分のフェイスブックに私のことを投稿しています。それに、幸運なことに、私と同じくメディアで働いている素晴らしい夫にも支えられています。私が仕事に疲れたと感じる時は応援してくれるし、私の仕事が重要だということを信じてくれてます」

タリク氏は、先日のブルームバーグのインタビューでのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の言葉に刺激を受けたという。

「私はサウジアラビアを支持する。そして、サウジアラビア国民の半分は女性だ」と、皇太子はブルームバーグに語った。「だから、私は女性を支持する」

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