
東京:月面輸送機を開発する日本のスタートアップispaceは28日、米国のNASAから委託されたミッションの準備状況を見直し、部品供給の遅れなどにも対処するため、予定していた月面着陸ミッションを1年遅らせて2026年に延期すると発表した。
東京に本社を構えるispaceは、4月に月着陸船「HAKUTO-Rミッション1」で初の月面着陸を試みたものの、高度の計算ミスにより失敗。フィナンシャル・タイムズ紙は今月初め、このミッションが失敗に終わるまでの数か月、社内では混乱が起きていたと報じた。
ispaceの袴田武史CEOは、記者会見で最初にミッションの延期を発表し、NASAがispaceに月への輸送を依頼した科学的装置は、より高い水準の振動吸収機能が求められることが判明したと語った。詳細には立ち入らなかった。
また、宇宙船ソフトウェア開発会社のドレイパー研究所とパートナー契約を結び、月面着陸機を開発しているispaceの米国子会社でも、部品の一部で調達に遅れが生じていると語った。
他にも、同社では第3弾となる月面着陸船「APEX 1.0」のデザインが公開された。この着陸船は、最大積載量がこれまでの計画よりも40%少ない300 kgとなるが、月に到達するまでの軌道をより短くすることができるという。
積載量の削減について質問された袴田CEOは、「純粋に技術的な判断」によるものだと答えた。
ispaceが2024年に予定している2回目のミッションは、打ち上げスケジュールに変更はないが、延期された3回目のミッション以降に実施されるミッションについては、延期される可能性があると付け加えた。
同社は今回の延期発表により、2024年3月までの年間売上予測を31億円(2,080万ドル)に半減させたが、保険による特別収入が含まれるため、予想収支を79億円の純損失に上方修正した。
MS&ADホールディングスのグループ会社である三井住友海上火災保険は先月、「HAKUTO-Rミッション1」の失敗による損害を補償するためispaceに37億円を支払っていた。
今年4月、月面着陸ミッションを2週間後に控えるispaceは、東京証券取引所に華々しく上場し、株価は一時IPO価格の9倍超まで上昇した。しかし、月面着陸の失敗により株価は急落。それ以降は回復傾向を見せ、28日は1,401円で取引を終えた。
ロイター