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エスカレートする北朝鮮の脅しを芝居と考え、平静を保つ韓国の人々

上は、2023年2月8日に平壌で行われた朝鮮人民軍創設75周年を記念する軍事パレードの際に見られた大陸間弾道ミサイル「火星17」。(KCNA / KNS、AP通信経由)
上は、2023年2月8日に平壌で行われた朝鮮人民軍創設75周年を記念する軍事パレードの際に見られた大陸間弾道ミサイル「火星17」。(KCNA / KNS、AP通信経由)
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06 Feb 2024 09:02:26 GMT9
06 Feb 2024 09:02:26 GMT9
  • 「私たちの世代は、北朝鮮が自国の体制の安定を維持するための芝居として、核による挑発を利用するのを見て育ちました」

ソウル:最近、北朝鮮の脅しがエスカレートし、韓国を標的にした兵器実験が増加しているが、韓国の首都の平静を乱すほどの影響は与えていない。

「私たちは鈍くなることを学びました」と、ソウルで働く33歳の会社員ナ・レニーさんはAP通信とのインタビューで語った。このインタビューで、恐怖というよりも無関心に近い発言をした十数人の韓国人のうちの1人である。

「私たちの世代は、北朝鮮が自国の体制の安定を維持するための芝居として、核による挑発を利用するのを見て育ちました。彼らが過激な行動を起こしても、本当の脅威とは感じません。むしろ、北朝鮮国内の結束を強化する必要があるとき、または外国の助けが必要なときに行う、毎年恒例のイベントのように感じます」とナさんは話した。

これは、金正恩朝鮮労働党委員長が1月に、北朝鮮は韓国との平和的和解という基本的な目的を放棄すると述べた、最近の北朝鮮政府のコメントとは全く対照的である。金委員長はまた、挑発されれば韓国を殲滅するという脅しを繰り返した。

同時に、北朝鮮は韓国に対する模擬核攻撃と称するものを含め、一連の兵器実験を実施している。

北朝鮮が韓国と係争中の西側海上国境に近い海域に数百発の砲弾を発射し、韓国側もこれに応酬したことで、直接的な挑発に対する懸念が増幅した。

今のところ、韓国では懸念はあるものの、警戒感はない。

また今回は、北朝鮮の交渉担当者がソウルを「火の海」にすると脅し、パニックに陥った群衆の波でインスタントラーメンや米の販売店が売り切れ状態になった1994年のようなケースとは異なる。

北朝鮮は、兵器による威嚇や脅しによって緊張を高め、最終的には譲歩を引き出すことを目的とした交渉を申し出るというサイクルを習得している。その結果、多くの韓国人は、北朝鮮が韓国と米国の選挙の年に、注目を集めるために古い戦略を活用していると考えるようになっている。

金氏による支配の存続を何よりも重視する独裁国家である北朝鮮が、米国の支援を受ける韓国との戦争の危険を冒すような真似はしないのではないかと広く考えられている。米国政府は、北朝鮮が核兵器を使用すれば、金氏による支配の終焉という結果を招くと繰り返し警告してきた。

ペースが速く、競争が激しい生活を送る韓国では、多くの人が北朝鮮の脅威に見向きなどしていられない。

そして、北朝鮮における国民の関心は、緊張の高まりと低下を反映する傾向がある。

同じくソウル在住のミン・スンギさんは、「個人的には、金正恩氏には、いま戦争をする理由も能力もないと思います。北朝鮮国民は、韓国政府が自分たちに好意的でないことをはっきりとわかっています。彼らはまた、北朝鮮との折り合いにあまり関心を示さなかったバイデン政権よりも好意を持っている、ドナルド・トランプ氏と共和党の注目を集めようとしています」と語った。

一方で、韓国には金氏の核兵器保有に伴う影響力に対抗する選択肢がほとんどないという感覚もある。

長年にわたるミサイル発射やその他兵器実験により、金氏は近隣諸国と米国の両方を確実に攻撃できる核兵器の保有という目標に大きく近づいている。

韓国人は、金氏が米国本土を攻撃できる射程のミサイルをさらに保有すれば、米国は韓国の防衛を躊躇するのではないかとの懸念を強めている。

安全保障をめぐる韓国人の不安は、米韓同盟および金剛山リゾートや共同運営の開城工業団地への韓国人ツアーなどの過去の南北プロジェクトによって長年抑えられてきたと、韓国人民研究院(Korea People Research Institute)の責任者ジョン・ハンウル氏は述べた。韓国の以前のリベラル政権が推し進めたこれら共同経済プロジェクトは、その後の保守政権下で南北関係が悪化するにつれて中止された。

ジョン氏は、いまは多くの人が、韓国の安全保障はもっぱら米韓同盟に依存しているという考えだと語った。

2022年の就任以降、保守派の尹錫悦大統領は、高まる北朝鮮の脅威に対処するため、米国、日本との合同軍事演習の拡大に舵を切ってきた。同大統領はまた、北朝鮮が核兵器で攻撃してきた場合、米国は同盟国を断固として守るというより強力な保証を米国政府に求めている。

しかし、このような対策にも金氏の兵器による威嚇の勢いは鈍らず、これはおそらく金氏の着実な兵器開発とロシアとの関係強化に対する自信を反映したものと思われる。

一部の韓国の専門家は、1990年代に韓国から撤去された米国の戦術核兵器の再配備を含め、米国が同盟国に対する防衛コミットメントをより劇的に示すよう求めている。また、韓国は独自の核抑止力を追求すべきと主張する専門家もいる。

多くのアナリストが朝鮮半島での戦争の可能性を軽視する一方で、金氏が直接的だが限定的な軍事行動で、韓国への圧力を高める選択をする可能性があると考える者もいる。

過去数年間に小競り合いや攻撃が行われてきた海上の境界線がはっきりと示されていない場所は、危機に直面する可能性がある。また、両国はここ数か月間、国境の緊張緩和のための緩衝地帯と飛行禁止空域を定めた2018年の軍事協定に違反している。

「北朝鮮が4月の韓国議会選挙を利用して、尹大統領の退陣に向けた機運を韓国内に醸成したいのは明らかで、軍事的緊張を最大限に高め、有権者に尹大統領の強硬路線に反対するよう誘導するために大規模な挑発を行う可能性がある」と、ソウルにある延世大学校の北朝鮮専門家ポン・ヨンシク氏は語った。

2010年に北朝鮮の砲撃で4人が死亡した西側国境の島、延坪島の漁師キム・ギホさんは、南北間の敵対意識を痛感している。

「このように緊張が高まると、私たちの船は漁に出られなくなり、生活に打撃を与えます」とキムさんは語った。

「軍は射撃訓練を再開し、私たちは再びシェルターに避難していますが、それが私たちの孤立感、緊張感、恐怖感を本当に高めています。特に2010年の砲撃を経験した高齢者は精神的ショックを受けています。」

AP

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