
東京:通常、日本の新幹線は定刻通りに運行され、乗客は2時間半の快適な旅を楽しむことができる。しかし、この日は乗客が恐怖の悲鳴を上げる中、列車は一転してゾンビの黙示録と化した。
ハロウィーンまで2週間を切った土曜日に開催されたこのアドレナリン全開のイベントの主催者は、このイベントを「走行中の新幹線内での世界初のホーンテッドハウス体験」と宣伝していた。
新幹線(日本語で「弾丸列車」の意味)の貸切車両には、東京と西の大都市大阪の間で「生ける屍」との遭遇に立ち向かう覚悟を決めた約40人のスリルを求める乗客が乗り込んだ。
この不気味な体験は、2016年の韓国のヒットアクションホラー映画『釜山行きの列車』にインスパイアされたものだ。この映画では、走行中の列車内に閉じ込められた父娘が、人肉を求めるゾンビと戦う。
土曜の夕方、新幹線は平穏に出発した。最初はすべてが正常に見えたが、最初の血みどろの攻撃が起こるまで長くはかからなかった。
犠牲者(主催者によって座席に配置された俳優)は苦痛に身を捩じらせ、恐ろしい変貌を遂げた後、乗客たちに対して暴れ始めた。
イベントの主催者である「怖がらせ隊」の岩名 謙太氏は、「普段は安全で平和な新幹線が、私たちが当然のように享受しているものが一瞬にして崩壊する様子を描きたかった」と語った。
俳優の一人の隣に座っていたのは、乗客の外国人観光客の一人であるジョシュア・ペインさんだった。
「文字通り、映画の中にいるような気分だった。ただ座って目の前で映画が展開するのを見ていたんだ」と、31歳のアメリカ人はAFPに語った。
「今、実際に東京から大阪まで移動しながら、このパフォーマンスを同時に見ることができるなんて…本当にクールだし、ちょっと画期的なことだと思う」と彼は言った。
今年で60周年を迎える日本の象徴である新幹線で、JR東海がこのような実験を行うのは初めてではない。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより長距離移動の需要が激減したことを受け、同鉄道会社は事業の多角化を図るため、新幹線の車両をイベント用に貸し出すようになった。
寿司レストラン、バー、さらにはプロレスの試合までが高速列車内で開催され、車両を貸し切ってのパーティーも可能だ。
JR東海の観光子会社に所属するマリー・イズミ氏はAFPの取材に対し、ゾンビをテーマにした通勤というアイデアを「ほぼ不可能」と考えたが、怖がらせ隊から持ちかけられたときは驚いたと語った。
しかし、このイベントは新幹線に「新たな可能性」があることを彼女に確信させた、とイズミ氏は語った。イズミ氏は、将来的にはコンサートやコメディショーも良いかもしれないと付け加えた。
土曜日のイベントでは、おもちゃのチェーンソーや銃が小道具として使われたが、新幹線の清潔なイメージを損なうような過激な暴力や流血の描写は避けられた。
その控えめなホラーと釣り合うように、2時間半のツアーにはゾンビのチアリーダーやマジシャン、コメディアンによるマイケル・ジャクソンの「スリラー」の振り付け付きダンスなど、軽快なパフォーマンスが随所に盛り込まれていた。
「誰もそんな長い間じっと座って、常にホラーにさらされ続けたいとは思わないでしょう」と、怖がらせ隊の今出彩加氏は言う。
ゾンビだらけの列車に乗った多くの乗客は、最高5万円(335ドル)のチケット代を払う価値は十分にあると語った。
「とても没入感があった」と、野沢直彦さん(30)はAFPに語った。「それに、さまざまな種類のゾンビが登場して、ずっと楽しませてくれた」
AFP