新型コロナウイルスワクチンの3回目接種が進まない。既に約3250万回分が供給されているが、開始から2カ月経過した1月末時点で接種を済ませたのは対象者約1470万人のうち30.5%。政府はペースアップに躍起だが、度重なる方針転換で対象者によって異なる接種間隔が入り乱れる事態に。自治体からは接種券の発行手続きが複雑化し「数週間かかる」との声も出ている。
2回目接種から「少なくとも6カ月後」とすることで承認されたファイザー製とモデルナ製ワクチン。政府は当初「原則8カ月」としたが、昨年12月に医療従事者らを6カ月、一般高齢者は7カ月に短縮した。さらに今年3月からは一般高齢者は6カ月、64歳以下は7カ月とするなど、相次いで方針変更した。
愛媛県は医療従事者の8割近くが接種を終えたものの、全体の接種率は22.1%。担当者は「接種券の発送対象者がつかみきれない。8カ月なら出せるが、6カ月の人、7カ月の人、といちいち聞くのか。とてもじゃないが無理だ」と嘆息する。
宮崎県の担当者も「発行には数週間はかかる」。複雑化する発行事務に「節操のないルール変更」との恨み節も聞かれ、「接種間隔の一本化は欠かせない」との声が上がる。
接種率52.1%と、全国で最も進む岡山県。初回接種ではファイザー製が9割近くを占めたが、3回目用の供給は55%がモデルナ製となる。担当者は「モデルナ製を避ける人が多い。今回は多くの人がワクチンを変えないと接種は進まない」と危ぶむ。
同41.8%と比較的高い沖縄県でも悩みは同じ。担当者は「オミクロン株の流行が早く、市町村との間で危機感を共有した」とする一方、「県民にモデルナを受け入れてもらえるか」と明かす。
雪の多い新潟県は、接種日時・場所を指定する方式で春から加速させる計画だった。急きょ接種センターを県内5カ所に開設したが、予約に空きがあり、接種率は22.2%にとどまる。担当者は「天候のほか、接種機会が確保されている安心感もあるのでは」とする一方、現場からは「オミクロン株軽視」を懸念する声も届く。
宮崎県の担当者も「副反応の話ばかり出る中、重症化が多くないとされるオミクロン株の症状と比べて、打たなくてもいいと思う人もいるのでは」と推測。「第6波が収束して『良かったね』で終わりかねない」と危機感を募らせた。
時事通信