
岸信夫防衛相は11日、米国のオースティン国防長官、韓国の李鐘燮国防相と訪問先のシンガポールで会談した。北朝鮮のミサイル開発の進展を踏まえ、3カ国で警戒活動と探知・追尾訓練を実施することについて合意。冷え込んだ日韓防衛当局間の信頼関係再構築に努めることで一致した。
日米韓防衛相は会談後に共同声明を出し、「北朝鮮による度重なる不法な弾道ミサイルの発射を強く非難する」と明記した。また、軍事的威圧を強める中国を念頭に、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調。「現状変更を試み、緊張を高めるいかなる一方的な行動にも強く反対する」と表明した。
日米韓3カ国による共同訓練の実施が発表されたのは、2017年12月が最後。北朝鮮は今年に入ってから大陸間弾道ミサイル(ICBM)級を含むミサイル発射を繰り返し、近く核実験に踏み切る可能性も指摘される。これに対して日米韓が連携して対処する姿勢を前面に出した形だ。
日米韓防衛相の対面会談は19年11月以来、約2年半ぶり。日韓防衛当局間の関係は、18年12月に韓国軍艦艇が海上自衛隊機にレーダーを照射した事案などにより悪化した。3カ国防衛相は会談で、「防衛に関する信頼醸成が重要だ」との認識を共有し、改善に向けた取り組みを不断に続けていく方針を確認した。
ただ、自衛隊には韓国軍への不信感が根強く残る。レーダー照射について、韓国側が事実関係を真っ向から否定し、解決していないためだ。制服組幹部は、同種の事案の再発を懸念し、「2国間の訓練はやりたくない」と漏らす。
岸氏は記者会見で、今回の会談でレーダー照射への言及はなかったと明かした。その上で「北朝鮮の状況を考えると、(日米韓、日韓で)共同対処していく重要性が、今まで以上に増している」と指摘。部隊間の交流再開を優先する考えをにじませた。
日米韓防衛相はアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)に出席するためシンガポールを訪問した。
時事通信