
先進7カ国首脳会議(G7サミット)は21日、ウクライナのゼレンスキー大統領が対面で出席して広島市内のホテルで討議を行い、3日間の日程を終えた。ロシアの侵攻に対し、G7側は軍事、財政両面で結束して支援を続けると伝達。岸田文雄首相はゼレンスキー氏と個別に会談し、両国の連帯を確認した。
サミット閉幕を受け、首相は議長として総括記者会見を行った。「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、平和と繁栄を守り抜く決意を世界に示すのが日本の使命だ」と強調。国民の安全を守り抜くと同時に、「核兵器のない世界という理想を追い求める」と表明した。
討議は午前、G7首脳の会合にゼレンスキー氏が参加する形で実施。8招待国首脳が加わった昼の拡大会合にもゼレンスキー氏が出席し、計2時間半ほど議論した。各国首脳はウクライナの人的被害やエネルギー・食料不安に懸念を示した。
招待国には、伝統的にロシアと近いインドが含まれる。ブラジルやインドネシアも、G7とロシア・中国の双方に一定の距離を置く新興・途上国「グローバルサウス」の代表格。首相は「平和と安定への挑戦」に足並みをそろえて対処するよう提唱。会見ではグローバルサウスの声に「耳を傾ける」とし、経済安全保障や食料危機、気候変動で連携する意向を示した。
首相とゼレンスキー氏の対面の首脳会談は、首相が3月に首都キーウ(キエフ)を電撃訪問した時に次いで2回目。首相が対ロ制裁を強化する方針を伝え、連携を申し合わせたもようだ。
20日に採択したG7首脳声明はロシアに侵攻停止を要求し、これに向け圧力をかけるよう中国に要請。「必要とされる限りウクライナを支援する」と明記した。核軍縮では「『核兵器のない世界』という究極の目標に向けて取り組みを強化する」とうたった。現実的手法を取る方針も示した。
また、中国を念頭に力や威圧による一方的な現状変更の試みに反対。「台湾海峡の平和と安定の重要性」を表明した。一方で「中国の経済的発展を妨げようとしていない」と指摘。デカップリング(分断)ではなく、過度な依存によるリスクを低減させるとした。
サミットは19日に開幕し、核戦力データの透明化を訴える「G7首脳広島ビジョン」をまず発表した。首相は21日の会見で「歴史的な意義」を強調し、「核の威嚇・使用はあってはならない」と述べた。
イタリアのメローニ首相は同国の豪雨災害への対応を優先し、最終日の討議を欠席した。
時事通信