• ヨルダン川西岸地区とガザ地区からは、毎年何千人ものパレスチナ人が、貧しいパレスチナ自治区では受けられない医療を求めてイスラエルに移動してくる。

エルサレム：世界銀行は18日、パレスチナ自治区にイスラエルが課した様々な制限と、増大する財政上の制約が、パレスチナ人の経済状況に深刻な影響を与え、命を救う医療への迅速なアクセスを妨げていると指摘した。

世界銀行は、『時間との競争（Racing Against Time）』と題する報告書の中で、パレスチナ経済は全体的に、その潜在的な可能性を下回り、一人当たりの所得は停滞する見込みであると述べた。

パレスチナ地域の貧困は増加傾向にあり、パレスチナ人の4人に1人が貧困ライン以下で生活していると、ワシントンに拠点を置くこの世界的金融機関は述べた。

イスラエルが課している、ヨルダン川西岸地区での移動と貿易の制限、ガザ地区への封鎖、これら2つのパレスチナ自治区の分断などが、パレスチナ経済を高いリスクにさらしていると報告書は指摘した。

「これらの財政的制約は、パレスチナの保健システム、特に非伝染性疾患の負担増に対処する能力に大きな負担をかけている」と、世界銀行の西岸地区・ガザ担当ディレクターであるステファン・エンブラッド氏は、報告書とともに発表された声明の中で述べた。

同氏は、これらの制限、特に「非常に時間のかかる、官僚的な許可制度」は、パレスチナ人に適切な救命医療を提供するのを難しくしていると述べた。

がん、心臓疾患、母子の出産状態における治療のための外部医療紹介へのアクセスは、物理的・行政的な制約のために大きな影響を受けている、と声明は述べている。

「ガザ地区の状況では特に深刻だ。医療システムの能力が制限されており、患者は緊急に必要な医療目的の出国許可を得るのも苦労している」

「ガザ地区の、ほぼ封鎖ともいえる状況は、死亡率にも影響を及ぼしている。調査結果によれば、一部の患者は許可手続きの期間の間に亡くなっている」

ヨルダン川西岸地区とガザ地区からは、毎年何千人ものパレスチナ人が、貧しいパレスチナ自治区では受けられない医療を求めてイスラエルに移動してくる。

イスラエルは1967年の第三次中東戦争以来、ヨルダン川西岸地区を占領しており、現在そこには約300万人のパレスチナ人が住んでいる。

「イスラエル占領地政府活動調整官組織（COGAT）」によれば、昨年イスラエルはヨルダン川西岸地区の住民に対して11万件以上の医療許可証を発行した。COGATは、イスラエル国防省による、パレスチナ自治区の民政を監督する機関である。

同じ期間に、230万人が住むガザ地区のパレスチナ人に対しても、1万7000件以上の許可証が発行された。

2007年にイスラム主義運動ハマスが政権を握って以来、イスラエルが課した封鎖も、この飛び地への医療供給を妨害している。

世界銀行はイスラエルとパレスチナ当局に対し、患者とその同伴者に迅速な医療支援を提供するため、このような医療ケースの管理を改善し、許可プロセスを緩和するよう求めた。

過去5年間、パレスチナ経済は全体的に停滞しており、現場の政策が変わらない限り、改善は見込めないとエンブラッドは述べた。

「人口増加傾向を考慮すると、一人当たりの所得は停滞することが予想される」と彼は世界銀行の立場から述べた。

AFP