
ロンドン:パレスチナ人キリスト教徒らは、イスラエル・ガザ戦争に対する発言をめぐってカンタベリー大主教を酷評し、自分たちの苦境を「英国国内の政治的・全キリスト教的配慮」の下に「格下げ」したと非難した。
カンタベリー大主教のジャスティン・ウェルビー氏は、ガザにある聖公会が運営するアル・アハリ病院をイスラエルが爆撃したと報じられたのち、「聖地のキリスト教徒コミュニティへの」連帯を示すため、エルサレムに週末にかけて4日間滞在した。
英国を発つ前に、ウェルビー氏はハマスに拘束されている人質を解放することと、人道援助のガザへの搬入を可能とすることを求める声明を発表した。
「ハマスによるイスラエルの人々への邪悪で凶悪なテロ攻撃は、神と人間性に対する犯罪である。イスラエルには、自国を防衛し、自国の安全を確保するために相応で区別ある対応を追求する正当な権利と義務がある」と、同氏は述べた。
しかしながら、同氏は次のように付け加えた。「人口密度の高いガザ地区へのイスラエルの爆撃作戦は、膨大な市民の犠牲と苦難を引き起こしている。ガザの人々の水、食料、医療物資、避難場所は尽きようとしている」
ヨルダン川西岸地区の聖公会教区民はウェルビー氏に宛てた公開書簡を書き、自分たちはウェルビー氏の公式声明に「完全に当惑」したと記した。
「聖公会教徒が被害を受けている時にさえ、記録に十分に裏付けられたイスラエルによる占領の犯罪を『邪悪で凶悪な犯罪』と呼んだ教会からの声明を、我々はひとつも記憶していません」と、この書簡には記されている。
「我々は現在のパレスチナの状況に関して貴殿の事務所から出された公式声明に完全に当惑しています。パレスチナ人聖公会教徒としての我々の声はカンタベリーには届いておらず、我々の利益は格下げされている・・・ことが分かりました」
「我々は、貴殿の意思決定プロセスにおいて、正確な認識と、パレスチナの民衆一般、中でも聖公会教徒のパレスチナ人コミュニティの不可譲の権利の実現より、英国国内の全キリスト教的・政治的配慮のほうが重要であるのではないか不安に感じています」
書簡の筆者らは、ウェルビー氏の事務所からの声明が、パレスチナ人というナショナル・アイデンティティによってではなく、「ヨルダン川西岸地区、イスラエル、ガザの聖公会教徒」として自分たちに言及したことについても懸念を表明した。
「こういった問題は、一部の人々には、単なる語義論だと思われるかもしれませんが、我々にとっては我々のアイデンティティと、我々の存在を民族浄化によりパレスチナから追放しようという企てを妨げる不屈の闘争に直接に関わることです」という。
書簡に署名したラマッラーおよびビルゼイト聖公会信徒集団も、ウェルビー氏のエルサレム訪問についてソーシャルメディアを通じてしか知らされなかったと主張した。
「ほんの10kmの距離にいたにもかかわらず、イスラエルの占領者による我々の都市の閉鎖のせいで、エルサレムで行われた日曜礼拝に参加するチャンスがなかったことは非常に残念です」
「我々の立場は、国籍、民族、宗教のアイデンティティにかかわらず市民へのあらゆる攻撃に明確に反対するとともに、国際人道法の完全な施行を求めるものです」
「我々が教会に期待することは、迫害される人々と迫害者の間でバランスをとろうとすることではなく、この組織的な我々の権利の否認と我々の民衆の根絶の呼びかけを非難することで、現在のファシストのイスラエル政府がこれらを公に示しているのだからなおさらです」
25日に貴族院で演説したウェルビー氏は、ハマスの10月7日の攻撃を非難した一方で、ガザでの人道活動を改めて求めた。同氏は、「犠牲が増えるほどに、新たな平和への可能性は減る」と警告した。
大主教はまた、英国政府に対し、10月7日のハマスの作戦により殺害された英国系イスラエル人兵士ヨーセフ・グエダリア氏の「最高の勇気」を公式に称えるよう求めた。
英国聖公会のスポークスマンは、ウェルビー氏が当該書簡を受け取ったことを認め、こう述べた。「パレスチナ人聖公会教徒の兄弟姉妹の声に耳を傾け、聖地にいる全キリスト教徒と連帯を保つことは極めて重要だ」
「ジャスティン大主教は緊急の人道的停戦と、ガザの市民に援助を届けることを求め続ける。大主教は、聖地にいる全ての人々に自由と安全をもたらす公正な平和を求めており、あまりに頻繁に見落とされるパレスチナ人キリスト教徒を特に気遣い、心配している」