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性暴力にはさらに多くの取り組みが必要

2018年12月10日、ノルウェーのオスロで開かれた2018年のノーベル平和賞の授賞式で賞を受け取った後、講演を行うナーディーヤ・ムラード(AFP)
2018年12月10日、ノルウェーのオスロで開かれた2018年のノーベル平和賞の授賞式で賞を受け取った後、講演を行うナーディーヤ・ムラード(AFP)
15 Oct 2018 01:10:13 GMT9

今年のノーベル平和賞は、2人の反レイプ活動家に贈られた。1人はレイプ被害者で、もう1人は治療に携わってきた人だ。受賞者の発表は、性的暴行疑惑をめぐるブレット・カバノー判事の上院での公聴会の手続きを世界中が見守った1週間後に行われた。判事は最終的にアメリカの最高裁判所の判事に指名されることとなった。

2018年のノーベル平和賞の受賞者は、世界中で性暴力と闘っている女性たちを擁護する2人だ。そのうちの1人は、ヤジディ教徒の活動家ナーディーヤ・ムラードだ。彼女は、他の何百人もの女性たちと一緒に、イラクのDaeshの民兵に捕らえられ、強姦された。逃亡後、彼女は勇敢にも、その奴隷のような扱いや拷問について話し、人身売買に反対する活動に身を捧げ、戦争の武器としてのレイプに対してより毅然とした立場を取るよう、国際社会に呼び掛けている。

2人目の受賞者は、1990年代後半以降、コンゴ民主共和国で何万人ものレイプ被害者を治療してきたデニス・ムクウェゲ医師だ。彼が遭遇した社会全体のレイプや拷問という悪質で野蛮な行為は、このような戦争犯罪の意図や目的を示している。これは、故郷や集落から無理やり退去させるために、昨年8月にミャンマーにて、少数民族でイスラム教徒のロヒンギャの人々に対して行われたことと同じようなものだ。どちらの国でも、また、ヤジディ教徒の人々に関しても、被害者は今でも加害者が裁きにかけられるのを待っている。しかし、紛争が長引けば長引くほど、これは先送りになる。

レイプやその他の形の性暴力が国際的戦争犯罪として初めて起訴されたのは、1996年の旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷でのことだった。裁判所は、ボスニアでの紛争(1992年-1994年)中のムスリム女性強姦に関わった8人のボスニアのセルビア人兵士と警察官を起訴した。性暴力が大量虐殺の一部として初めて裁かれたのは、1998年のルワンダ国際戦犯法廷でのことで、推定80万人が虐殺され、実行犯が組織的にレイプを武器として使用した大量虐殺から4年後のことだった。

意識を高めるのと同時に、より厳しい法律を定め、実施することにより、有事でも平和な時でも、性暴力やハラスメントからより守ることが可能となる。

2008年、国連安全保障理事会は、レイプを戦争の戦術として、また国際安全保障に対する脅威として定める決議を満場一致で可決した。国連決議1820は、「ある社会または民族グループの中の民間人に屈辱を与え、支配し、恐怖心を植え付け、離散させ、また/あるいは強制的に別の場所へ移動させるための戦争の戦術としての場合を含め、女性や少女は特に性暴力使用の標的となっている」と記述した。さらに「レイプやその他の性暴力は戦争犯罪、人道に対する罪を構成しうり、また、大量虐殺を構成する行為となり得る」と付け加えた。

これが紛争地域におけるレイプ被害の事例であるならば、法と秩序が保たれている平和で繁栄した国々ではどうだろうか。政治や文化、経済など、「正義」を妨げうるその他の要素が作用する。レイプ、性暴力、暴行、ハラスメントはどんな時でも証明が難しい。なぜなら、証拠や目撃者がいない限り、いつも水掛け論になるからだ。

このような犯罪は、女性や少女にとって、肉体的、感情的、精神的に計り知れないほどの傷を与える。家族全体にも影響を与え、戦争で荒廃した地域の場合には、何十年にもわたって、コミュニティ全体に影響を及ぼす。

また、証明が難しいことを知って、また、特に社会は一般的に男性ではなく女性を非難し、屈辱を与える傾向があるため(これで女性はさらに傷付く)、多くの女性はレイプされたことを通報しなかったり、暴行やハラスメントを受けたことに対する支援を求めなかったりする場合がある。就職や仕事を継続する上での圧力もある。

だからこそ、#MeToo運動は衝撃的だったのだ。力のある男性に対して最終的に声を上げたあの女性たちは、世界中のあらゆる形の性暴力をめぐるマインドセットや、女性は黙っていろ、あるいは気に入られようと振る舞えという考え方に変化をもたらせるかもしれないほどの力を示すものなのだ。

性的暴力、攻撃、あるいはハラスメントも、身体的なものか、言葉によるものかを問わず、本質的には、何の罰を受けることもなく実行できるほど強い立場に立っていることを自覚しながら行われるパワープレーだ。沈黙を破ることは、加害者に責任を負わせる上で極めて重要だ。さらに、声を上げることは、ノーベル平和賞受賞者がそうだったように、被害者に更なる注目を集めてしまう。研究では、性的暴行には、心的外傷後ストレス障害、鬱、不安神経症、自尊心の破壊、さらには自殺未遂までもが伴うことが示されてきた。仕事や学業の成績も振るわず、他人との関係でも、私的な、親密なレベルでは特に苦しむことになる。

サウジアラビアでは、イスラム法の下では犯罪と考えられているセクシャルハラスメントと闘うためのある法律がこの6月に成立した。これは、さらなる職業機会と社会参画の拡大が女性に開放されようとしている中で採択され、その後まもなくして車を運転することを認める法律が施行された。法律は、ハラスメント被害者の身元を保護し、事件を届け出て、通報するのを支援するためのものだ。ハラスメントを我慢している全ての個人を対象としている。この法律の下では、セクシャルハラスメントは、一方の人から他方の人に対して、セクシャリティをほのめかす言葉または行為、あるいは、何らかの形で、ある人の身体、名誉、したたかさを傷つける言動と定義されている。法律は、ソーシャルメディアを含む現代のテクノロジーにも適用される。

意識を高めるのと同時に、より厳しい法律を定め、実施することにより、有事でも平和な時でも、性暴力やハラスメントからより守ることが可能となる。

Maha Akeelはサウジアラビアのライター。ジェッダに拠点を置く。ツイッター:@MahaAkeel1

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