
ドバイ:シリアの作家で翻訳家のディナ・アブール・ホスン氏は、3年前に彼女が住むドイツの地方保健当局から定期的な乳房検査を受けるようにとの手紙を受け取ったとき、彼女は気に留めなかった。
8年前にドイツに亡命してきた、50歳になったばかりのホスン氏は、新型コロナウイルス感染症が大流行する中、ソーシャルディスタンスの確保と、自主隔離の必要性に留意していたため、予約を先延ばしにすることを選んだ。
2年後、ようやく総合検診を受けに行ったとき、彼女はその所見に対して心の準備ができていなかった。超音波画像診断の後、医師は「あまり心配することはないだろうが、検査が必要な病変がある」と彼女に言った。
病変は悪性ではなく、危険なものでもなかったが、ホスン氏の名前は2年に1度の検診を受けるリストから1年に1度の検診を受けるリストに移された。この健康上の不安をきっかけに、彼女はそれ以来、より細心の注意を払うようになった。
ホスン氏の友人であり、同じくシリア人でドイツの居住権を持つ女性は、それほど幸運ではなかった。彼女は早期の乳がんと診断され、乳腺部分切除手術と、必要なすべての放射線治療を受けた。
どちらの女性も、健康保険が全額適用され、ドイツの医療制度による質の高い治療を受けることができた。
12年にわたる悲惨な紛争で人口の半分が難民となり、必要なサービスがほとんど機能していない母国に残っていたら、彼女たちの運命は違っていたかもしれない。
「これは残酷な事実だ。病気であっても、私はここで医療サービスを受けられるのに、彼らは受けられないという罪悪感がある。醜い感覚だ」とホスン氏はアラブニュースに語った。
病院、診療所、研究所、製薬工場、その他腫瘍の治療のためのインフラは、長年の戦闘によってシリア全土で損傷または破壊されている。残っている施設があったとしても、それらは経済的圧力と貿易禁止の下で苦しんでいる。
2018年に米国臨床腫瘍学会(ASCO)教育用図書に掲載された論文『難民・避難民のためのがん医療:中東紛争と世界的な自然災害』によると、「画像診断モダリティと放射線療法はシリアの大半の医療センターでは利用できず、医師が診断と治療において普遍的なガイドラインに従うことは非常に困難である」と書かれている。
多くの医師や医療従事者が殺害されるか、国を離れている。人権のための医師団(PHR)によると、2015年だけで約1万5000人の医師が国外に避難した。
シリアの反体制派が支配する北西部イドリブ県で「国際戦争・災害犠牲者保護協会(IRVD)」のプログラム・コーディネーターを務める薬剤師のトラフ・アルトラフ氏は、自己検診とスクリーニングに関する意識向上に努めている。
「私たちの限られた能力において、意識を広め、がん患者の蔓延を食い止めようとしている」とアルトラフ氏はアラブニュースに語った。この活動には、移動診療、リーフレットの配布、女性の意識を高めるための、有資格者で構成された女性チームの派遣などが含まれる。
乳がんはシリア北西部で最も一般的ながんである。2021年に報告された373件の新たながん患者のうち、241件が乳がんであり、61件がホジキンリンパ腫であった。
女性ががんと診断されると、シリア・アメリカ医師会が支援するイドリブの主要病院に紹介される。しかし、これらの病院ではあらゆる種類のがんの治療は行うことはできず、十分な資金やコネクションを持つシリア人だけが治療のために海外に行くことができる。
がん治療だけでなく、専門的な画像診断にかかる費用も非常に高額だ。病気とその治療はすべての患者にとって苦痛を伴うが、避難民にとってはその苦痛が倍になる。多くの患者は診断に非常に時間がかかり、緩和ケアのための資金援助が拒否されることもあり、適切な診断も治療も受けられずに亡くなる人も少なくない。
2018年に『ジャーナル・オブ・グローバル・オンコロジー(Journal of Global Oncology)』に掲載された『ヨルダンのシリア難民におけるがんの負担』と題する論文によると、がんは「予後が悪すぎる、および/または治療には金銭的なコストがかかりすぎる」ため、避難民のがん患者の治療費は国際援助機関やボランティア団体によってカバーされないことが多いという。
人道支援機関による難民に合わせた医療サービスは、栄養や感染症などの問題に重点をおく傾向があり、がんのような最も専門的な病気は軽視されている。
アラブニュースは、ヨルダン、レバノン、スーダン、イエメン、パレスチナのキャンプで、乳がんに対する意識を高めたり、早期診断や治療を提供したりするためのスキームについて確認するため、アンマン、ベイルート、カイロ、ドバイにある地域的・国際的な人道支援機関4団体に問い合わせた。
2つの団体はそのようなプログラムはないと答え、他の2つの団体は具体的な回答はなく、「ガザの戦争で非常に忙しい」とだけ述べた。
乳がんは、1948年の第一次中東戦争によって収容所に追いやられたパレスチナの女性たちに最も多く見られるがんで、ヨルダン川西岸地区とエルサレム地区では32%、ガザ地区では18%を占めている。
『JCOグローバル・オンコロジー(JCO Global Oncology)』に掲載された2022の報告書『パレスチナ女性の乳がんリスク要因に関する認識:国家横断的研究』では、ガザ地区の女性は、ヨルダン川西岸地区とエルサレム地区に住む女性よりも、乳がんのリスク因子に関する認識が高い(それぞれ42.0%と35.2%)ことがわかった。
「この差は、ヨルダン川西岸地区とエルサレム地区には検問所や内部移動の制限があり、都市間の移動も困難であるため、医療施設へのアクセスが難しいことが原因かもしれない」と報告書には書かれている。
「また、ヨルダン川西岸地区とエルサレム地区では、農村部に住む女性の割合が高く、医療施設へのアクセスが限られていることも考えられる」
ガザの女性たちの意識レベルは高いものの、放射線治療のようないくつかの治療法は、ガザではまだ手の届かないところにある。患者が東エルサレムの病院でそのような治療を受けるには、イスラエル当局から許可を得る必要がある。しかし、これらの許可はしばしば取得不可能である。
調査によると、2018年、パレスチナ人患者がガザ地区を出て、ヨルダン川西岸地区やエルサレムで治療を受けるためにイスラエルに提出した許可申請のうち、ほぼ40%が却下されたり、遅れたりしている。これらの申請の約4分の1は、がん治療のためのものだった。