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サウジ外交は中東地域を再編しうる:イスラエルのジャーナリストがWEFで発言

ダボスで開催される第54回世界経済フォーラム会合に出席する人々。2024年1月16日。(Reuters)
ダボスで開催される第54回世界経済フォーラム会合に出席する人々。2024年1月16日。(Reuters)
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20 Jan 2024 03:01:45 GMT9
20 Jan 2024 03:01:45 GMT9
  • バラク・ラヴィド:ヒズボラ=イスラエル戦争が起これば、ガザ紛争が「単なる前座に思える」事態になる
  • イラン人学者:「この地域でのイランの政治的・軍事的覇権を受け入れるアラブ国家は存在しない」

キャスパー・ウェッブ

ロンドン:サウジアラビアを含む主要国の間での戦略協定の締結は、一触即発の緊張が続く中東地域を再編しうると、イスラエル人ジャーナリストが19日、世界経済フォーラムのパネルディスカッションで語った。

「2024年の中東を占う」と題したパネルディスカッションで、専門家と政府関係者は動揺が続く中東情勢について議論した。ガザ紛争、イラン、ヒズボラ、フーシ派に加え、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化の可能性も議題にのぼった。

「米国に(ガザ)紛争を抑止する気があるなら……二国家共存の道を受け入れる必要があります」と、米国防戦略評議会のジェーン・ハーマン議長は述べた。

「そうでなければ、紛争抑止は永遠に実現しません。そして(二国家共存戦略が)もし実現すれば、残る特異点はイランとなるでしょう」

イラン国立大学の国際関係学教授で、中東研究所の客員教授も務めるマフムード・サリオルガラム氏は、「この地域でのイランの政治的・軍事的覇権を受け入れるアラブ国家は存在しません。そこにはシーア派のイラクも含まれると、わたしは考えます」と述べた。

サリオルガラム氏はさらに、「イランはこのような外交方針を実行することで、国家の資源を浪費していると思います。この国の分析を続けてきたわたしの推測では、イランが権力の本質的要素は軍事ではないと気づくには、少なくとも10年はかかるでしょう」と

「それ(権力の本質)はむしろ資本市場であり、プラットフォーム企業であり、国家のインフラ開発であり、地域の他国との経済的統合なのです」

米国のニュースサイト「Axios」に所属するイスラエル人ジャーナリストのバラク・ラヴィド氏は、地域的課題に関するサウジとイランの合意が平和への道をひらく可能性を指摘した。

「サウジアラビアとイランの関心は多くの点で一致しています。とくにイエメンに関してはそうだと、わたしは考えています」と、彼は述べた。「両国とも(相互の緊張関係を)終わらせたい、少なくとも長期停戦を実現したいと思っていることが、ここ1年の推移からわかります」

「また経済に関して、イランとサウジアラビアはいずれも貿易推進などの共通の関心をもっており、少なくともサウジ連合と呼ばれる国々と、イランが「抵抗の枢軸」と呼ぶ連合の間の緊張を和らげたいはずです。そして、わたしの見方では、両国は緊張緩和の動きをかなりうまく進めています」

サリオルガラム氏は、テヘランは民兵組織のネットワークを通じて敵に「メッセージを送り」つつ、各組織の拠点でエスカレートを回避するという、綱渡りを演じていると語った。

「レバノンに関して、イランがエスカレーションに関心をもっていないことは明らかです。今回は2006年のようにはいかないでしょうから」と、彼は述べ、前回のイスラエルによる北の隣国の侵攻に言及した。

「イスラエルの軍事作戦に加えて、米国が介入すれば、ヒズボラが壊滅する可能性はかなりあります……加えて、レバノンの国と社会はきわめて脆弱な状態です」

ラヴィド氏もこれに同意し、ヒズボラは10月7日のハマスによる攻撃を契機に、レバノン南部の国境地帯で作戦を展開するなかで、「イスラエルとの全面衝突というエスカレーションを選ばなくても、インパクトを残すことができることに気づいた」との見解を示した。

だが、イスラエルへの攻撃をエスカレートさせることに消極的なヒズボラの現在の姿勢は変化しうると、ハーマン氏は警鐘を鳴らし、レバノン政府の連立構造のために、国内の安全保障が「きわめて困難」になっていると指摘した。

ラヴィド氏も、「この先さらに最悪の事態が起こることは十分にありうる」と述べ、ヒズボラ=イスラエル戦争が起これば、ガザ紛争が「単なる前座に思える」事態になると憂慮した。

米国は双方の緊張緩和に向けて「今よりもはるかに重点的な」取り組みをすべきであると、彼は主張し、「レバノンとイスラエルの国境情勢を数週間以内に沈静化させなければ、本格的な衝突になりかねない」とした。

地域の緊張が続くなか、今年は経済成長の大きなチャンスでもあると、サリオルガラム氏は述べ、湾岸協力会議諸国は2024年も「繁栄を続ける」と予測した。

「この地域は紛争を抱えつつ、同時に驚異的な経済成長を遂げるだろう」と、彼は述べた。

ラヴィド氏は、サウジアラビアとイスラエルの国境正常化が期待される一方で、テルアビブは一国家という「現実」路線に傾いているが、こうした方針はパレスチナ人にとって長期的解決策とならないと批判した。

「ヨルダン川西岸では今、一国家の現実が繰り広げられています」と、彼は述べた。「入植者とパレスチナ人がいて、前者に権利が与えられ、後者には与えられない、ということです。現状はそうした状態に向かっています」

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