
イスタンブール:トルコは6日未明、昨年同日に発生し、5万人以上の死者、都市の一部の壊滅など、地震多発国トルコにおいて現代史上最悪の被害となった、昨年の大震災の追悼式典を開催する。
悲嘆に暮れるトルコ国民は、マグニチュード7.8の地震がわずか数秒のうちに、眠っていた数百万人の人々の生活を徹底的に破壊したという事実と、今も向き合いつづけている。
2日に発表された最新統計によれば、政府が被災地域と認めた南東部11県での死者は5万3537人にのぼった。
隣国シリアで死亡が確認された5951人と合わせ、昨年2月6日のトルコ・シリア大地震は、過去100年以内に全世界で発生した地震のなかで死者数ワースト10に入る。
アンタキヤなど、数々の歴史的都市が事実上地図から消滅した。
4時17分に地面が揺れはじめた瞬間、高層集合住宅がトランプを積んだ家のように崩壊しててできた巨大な陥没穴は、今なお街に残されている。
当時、茫然自失の生存者たちは氷点下の寒さのなか、パジャマ姿で屋外に立ち尽くし、コンクリート塊の瓦礫の下に閉じ込められた人々の苦悶の叫びを聞いた。
「1年が経ちますが、今も頭から離れません」と、主婦のカーラ・デミレルさんはAFPの取材に語った。彼女はアンタキヤの数十万人の被災者たちとともに仮設住宅に暮らしている。
「人生から輝きが消えました」と、31歳の彼女は言う。「訪ねる家族も隣人もいませんし、楽しい場所もありません。何も残っていないのです」
被災地
アンタキヤに残る住民たちは、6日の4時17分に開始予定の追悼集会で、ひとつのメッセージを伝えるつもりだ。「わたしたちの声が聞こえますか?」
1年前、瓦礫の下の愛する人を探す住民たちのこの言葉は、被災地全域に響き渡った。
だが、このメッセージは多くの人々が被災地を見捨てたと感じている、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領が率いるトルコ政府への婉曲的な訴えでもある。
震災に見舞われたのは、以前から失業や低投資により取り残されがちな地域だったと、トルコ経済政策研究財団(TEPAV)のアナリストは指摘する。
「この地域の一部の地区はトルコでもっとも高い貧困率が高い」と、TEPAVは報告書で述べた。
エルドアン大統領は、政府の救助隊が準備不足で緊急対応が遅れたという批判に強く反論した。
彼は震災を「100年に一度の大惨事」と呼び、このような悲劇を回避、あるいはそこから早期に回復できる国はないと述べた。
エルドアン大統領は地震発生後の最初の数週間で国じゅうを視察し、1年以内に65万戸の住宅ユニットを新たに提供すると公約した。
大統領は今月3日、アンタキヤで最初の7000戸を被災者たちに提供し、被災地全域で今月中に4万6000戸が入居可能になると述べた。
彼によれば、今後は毎月最大2万戸が追加され、今年末までに20万戸を提供するという。当初の公約には及ばないものの、震災により地域が混沌に陥ったことを考えれば、立派な成果といえる。
「もちろん、亡くなった方々を生き返らせることはできないが、その他すべての損失は補償できる」と、エルドアン大統領は3日にアンタキヤ住民に語りかけた。
「われわれはそうすると約束した」
だが、大統領の言葉は、アイスクリーム屋を営むカディル・イェニチェリさんのような人々への慰めにはならない。
大きな被害を受けたカフラマンマラシュで生まれ育った70歳のイェニチェリさんは、人々はこの先どうなるかを考え「困惑している」と語る。カフラマンマラシュは、エルドアン氏が率いるイスラム政党が圧倒的に支持される街でもある。
「日常はまったく取り戻せていません」と、イェニチェリさんはAFPの取材に語った。「何も変わっておらず、進歩していません。仕事もお金もありません。収入がないのです」
エルドアン氏の住宅提供の公約は、彼が20年にわたる長期政権のなかでもっとも苦戦を強いられることとなった、2023年5月の総選挙の準備期間に打ち出された。
エルドアン氏は決選投票で大統領の座を守った。被災地の大部分で一貫して支持を得たことは、彼の勝因のひとつだ。
有権者の多くは野党への不信感を示し、エルドアン政権は厳しい状況のなかで最善を尽くしていると考えた。
しかし今、多くの有権者や専門家は、トルコの次なる大地震への備えは1年前からほとんど進展していないと指摘する。
トルコは世界でもっとも地震活動が活発な2つの断層の上にあり、小規模な地震はほぼ毎日起こっている。
さらに現在、数百の建設業者が、既存の建築安全基準に違反した疑いで訴訟に直面している。
「この国はすぐにでも、危機管理からリスク管理に移行しなければなりません」と、イスタンブール工科大学で災害管理学を教えるミクダット・カオディオール教授は語る。
「やるべきことはまだたくさんあります」