
リヤド:ヨルダンのアイマン・サファディ外務・移民大臣が国連安全保障理事会に対し、イスラエルに、ガザで行われている戦争犯罪をやめさせ、人道援助に対する国境閉鎖するという決定を撤回させる拘束力のある第7章決議の採択を要求するなか、アンマンのイスラエル大使館前では抗議行動が激化している。
抗議行動の激化を防ぐための警備態勢が敷かれる中、ヨルダンのある政治家は抗議行動を “無実ではない “と表現した。
同国の公安当局は日曜日に「治安部隊が、バカア地域で暴徒化し、破壊行為を行い、火を放ち、公道で通行車両に石を投げつけているところを捕らえ、多数の暴徒を逮捕した」と発表した。
声明は、PSDが「首都の数か所の地域で起こった抗議や集会に対処した」と付け加えた。治安と秩序を維持するために現場にいた治安要員は、最大限の規律とプロ意識をもってデモ隊に対処した。何カ月もの間、数千人の市民が街頭に繰り出し、誰一人として自分の意見を表明する権利を否定されることはなかった。
PSDはさらに、「昨夜と一昨日の夜、抗議行動では、暴力、侮辱、公安職員への攻撃未遂が目撃され、彼らは容認できない罵詈雑言にさらされた。また、破壊行為、公共物や私有地への攻撃、道路の真ん中に座り込んで車の走行を妨害する行為もあった。これらの違反行為は、数日間にわたり、公安職員と意図的に対峙していた複数名の男女によって行われた」と続けた。
さらなる混乱
先週半ばから、アル・ラビア地区のイスラエル大使館に近い一帯は抗議活動の場となり、数万人の参加者を集めている。さらに、「内外の 」メディアやソーシャルメディアでは、「ハマス 」や 「アル・カッサム旅団 」を支持するスローガンを掲げ、デモに参加するよう人々を促した。また、これらのグループのリーダーたちが 「ヨルダンの人々に行動を呼びかける 」音声も流された。これは、イスラエルに対し、即時停戦を要求し、人道支援と救援の入国を許可することを目的としたヨルダンの外交努力にもかかわらず、戦争初期の数日間に行われた抗議行動とは対照的である。
ヨルダンのある情報筋は、シャルクル・アウサト紙の取材に対し、「アンマンのイスラム運動の指導者たちは、ヨルダン国民をガザでの戦争に引きずり込み、占領下のパレスチナ周辺の緊張を高めるために、海外のハマスの指導者たちと協調している。政府に対する暴力行為をヨルダン国民に促している。外部との連絡や呼びかけに関する情報の性質や規模を考えると、何が起きているのか公式に検証する必要がある」と非難した。
ヨルダンの安全保障を重視するサウジアラビア
サウジアラビアのある当局者はシャルクル・アウサト紙に対し「王国は国家の安全と主権を守るためにヨルダンがとっているすべての措置を支持している。ヨルダンの安全保障は、両国が歴史と地理を共有していることから、サウジアラビアの安全保障の不可欠な一部であることに変わりはない。リヤドは、ヨルダンを紛争に引きずり込んだり、地域の問題や課題が繰り広げられる場としたりするいかなる試みも許さない」と付け加えた。
また、「特に現在進行中のガザ戦争や、紅海での攻撃を考慮すれば、この地域は新たな紛争には耐えられない。さらに、ヨルダンを混乱と不安の泥沼に引きずり込もうとする試みは、この地域の紛争終結を目指すアラブ諸国や国際社会には役立たない」と付け加えた。
イラン、ムスリム同胞団、混沌の再来
あるオブザーバーは、ヨルダンにおける混乱と暴力はイランの脅威であると警告している。これは「地域に混乱を再来させるという、明確な目的を持ったイランのムスリム同胞団が率いる陰謀の序曲」であると述べ、「国王、軍、政府に対して国民を動員するために、双方が今回のガザでの戦争を利用している」と強調した。また、「今日ヨルダン国民を動員しているのは、54年前にヨルダンの安全と安定を害したのと同じ者たちだが、彼らは異なる手段を用いている」とも指摘した。
利益を共有する両者
サウジアラビアの政治アナリスト、ムニフ・アル=ハルビ氏は、「地域に緊張を引き起こし、新たな戦線を確立することに関心を持つ両者、すなわちムスリム同胞団とイランが存在することは、もはや隠しきれない。アラブの春で、アラブ諸国を不安定化させたように、今日も彼らの思惑は一致している。ガザでの出来事が始まって以来、(ハマスの)指導部がヨルダン国民を動員し、あらゆる手段を使ってヨルダンを戦争に引きずり込もうとしているのがわかる。これは、(ハマスの)失敗や犯した過ちから注意をそらすことを目的としているようだ。また『イスラエルとの戦い 』というスローガンを掲げたレジスタンス軸が守れないことが世間に露呈したともいえる」と述べた。
ヨルダンの安全保障はサウジアラビアに不可欠
アル=ハルビ氏はシャルクル・アウサト紙に対し、サウジアラビアは「ヨルダンの安全保障と安定は、自国の安全保障と安定に不可欠であると考えている。王国はヨルダンの指導者と政府がとっているすべての措置を支持していると思う。両国の関係、特に指導者間の関係は特殊である。宗教的、アラブ的、道徳的、政治的な重要性を考えると、王国はヨルダンの安定への関心も含め、アラブ諸国の国家安全保障を守るという原則に関心を寄せている。1990年のクウェート、2011年のバーレーン、2015年のエジプト及びイエメンで、サウジアラビアの懸念が裏付けられているだろう」と述べた。
アル=ハルビ氏のコメントは、2018年6月の出来事を思い起こさせる。サルマン国王がラマダン月の最後の10日間にメッカでサミットを開催するよう呼びかけた。これによってサウジアラビア、ヨルダン、クウェート、UAEの首脳が一堂に会し、ヨルダンに25億ドルの経済援助が提供された。
当時、ヨルダンのアブドッラー国王は、サルマン国王が率先してて会談を呼びかけたことに感謝し、またクウェートとUAEの参加を称賛した。また「ヨルダンがこの危機を乗り越える助けとなる」援助についても、3カ国すべてに深い感謝の意を表した。
2021年春にヨルダンで起きた「反乱」事件の際、リヤドはアンマン側に立った。サルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、ヨルダンの指導者に対し「王国はヨルダンと連帯し、アブドゥラー国王がヨルダンの安全と安定を守るためにとったすべての措置を支持する 」と述べた。アブドゥラー国王はその後、同年8月に同王国のファイサル・ビン・ファルハーン外務大臣を迎えた際「黎明期に阻止した反乱未遂事件を含む、さまざまな困難に直面しているヨルダン王国 に対する支持」に感謝の意を表した。
ガルフ・リサーチ・センターのアブドゥルアズィーズ・サグル代表は、シャルクル・アウサト紙に対し、「占領下のパレスチナ地域とヨルダンの間には、地理的にも人間的にも深くユニークなつながりがある。従って、ヨルダンの安全と安定は、占領地の安全を維持するために不可欠である。ヨルダン、エジプト、レバノンを含むパレスチナ自治区周辺の国家に混乱と不安定を広めることに、関心をもつ者もいるだろう」と述べた。
「特にヨルダンは、イスラエル過激派のイデオロギーにとって、代替的な祖国の象徴であり、過激派勢力がパレスチナ人の強制移動と国土の奪取という目標を達成するために標的にしており、非常に重要かつ繊細な問題である。イスラエルの計画に断固反対するヨルダンの現在の立場から、ヨルダンを不安定化させることはイスラエルの利益になる」
「ハマスの指導者を含む、一部の過激派のパレスチナ指導者は、残念ながらヨルダンの不安定化を呼びかけ、間違った、そして危険で近視眼的な計画で動いている。サウジアラビアの立場は明確だ。ヨルダンの安定と安全を損なうことは『レッドライン』であり、ガザの抵抗勢力を支援するという口実でアラブ世界に混乱を広げ、治安クーデターを実行しようとする、いかなる試みも拒否する」と続けた。
これはwww.aawsat.com に掲載された記事の翻訳である。