ナジャ・フーサリ

• レバノンの港では国際的な食料輸送車列がシリアへの渡航許可を待っている

ベイルート：レバノンの国連支部は、活動を停止したり、要員を国外に避難させたりする意図を否定している。

国連によると、「国連の活動と事業を通じて提供される支援は、新型コロナウイルスのパンデミックに起因する課題にかかわらず、継続しており、加速度的に増加している」という。
先週末には、国連がレバノンから撤退する意向であることや、国際機関が外国人職員に、出国に備えてパスポートを準備するよう指示したという話がソーシャルメディア上で流された。
しかし、レバノンの国連支部は月曜日に発表した声明の中で、この情報を「憶測」と表現した。
2011年以来初めて、物資を積んだ世界食糧計画（WFP）のトラック2台が先週火曜日、北部沿岸道路をシリア領に向かって通行中に略奪された。トラックを略奪した若者たちは、レバノン人が飢えていることや、レバノン国の一部の人々が「レバノン人を犠牲にしてシリア政権に食料品を密輸している」などと言って、その行動を正当化している。
トラック2台は、レバノンの税関チームが保護して港に戻す作業を行った後、トリポリ港に停められたままだ。
レバノンのWFPのスポークスマン、マラク・ジャファル氏はアラブニュースにこう語る。「レバノンからシリアに車列を移送するかどうかはまだ決定していません。車列には、シリアのホムスにある組織の倉庫に送るための食料品を積んだトラック39台が含まれています。ベイルート港には37台のトラックが、トリポリ港には2台のトラックが、シリア領に移動することを目指して通行許可を待っています。この保護を受けるため、レバノン当局者と連絡をとっているところです」
ジャファル氏はこう述べる。「WFPは国際市場から物資を購入し、それをベイルートの組織のために輸送しています。そこからレバノンのトラックが物資をシリア領内に輸送しているため、私たちの活動はレバノンの市場にドルを投入することになります。私たちやすべての人道支援団体は、レバノンを活動にとって重要な通行路と考えています。レバノンは紛争中の国ではないので、トラックに（国連の）ロゴを入れる必要はありませんが、食料袋には入れています。レバノンはホスト国を務めてくれており、いつも感謝しています」
国連人道問題調整事務所のダニエル・モイラン報道官はアラブニュースにこう語る。「レバノン・シリア国境踏切は最近、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の予防措置に沿って閉鎖されました。しかし、現在は人道的な人員や貨物が通過するための免除措置が設けられており、国境が、毎月平均600万人以上のシリアの人々に対して行われている継続的な人道支援の重要な要素であることに変わりはありません」

国連の活動と事業を通じて提供される支援は、新型コロナウイルスのパンデミックに起因する課題にかかわらず、継続しており、加速度的に増加している。

レバノンのWFP報道官マラク・ジャファル氏

レバノンでは、ドルの為替レートが闇市場で公定価格の4倍以上の上昇を記録するなど、深刻な経済不況と対ドルでの自国通貨の暴落に直面している。政府は、自らが作成した救済計画を通じた支援を得るために国際通貨基金と交渉しているが、レバノンの政治・経済関係者はこれに異論を唱えている。
中央銀行が1日あたり6000万ドルを公認両替所に投入するという解決策が月曜から始まっているが、これは一時的な措置であり、国庫準備金を流出させる恐れがあるとの懸念がある。特に小麦粉やディーゼルなど、補助金を受けた資材が、レバノンからシリアに密輸されることを政府がこれまでにコントロールできなかったことを踏まえると、資材、医療、ディーゼルに補助金を出すことができなくなる可能性がある。
「私たちのレバノンへの援助は、シリアへの援助とは別物です」とジャファル氏は述べる。「レバノンには2012年以来、目標予算と援助対象のリストがあります。今週中に、飢餓とコロナウイルスのパンデミックで影響を受けた5万世帯以上の家族に援助を行うほか、レバノンでは社会省と連携して、公立学校の児童に食事を提供することに関連した他のプロジェクトを実施しています」
シリアのWFP報道官であるアビーア・エタファ氏によると、シリアでは約400万人がWFPの援助の恩恵を受けているが、その大部分は戦争難民であり、母子家庭や無収入の家庭も含まれているという。
エタファ氏はアラブニュースにこう語る。「数は必要に応じて増減し、そうした人々への配給は、シリアのすべての県で行われます。私たちは、トルコやヨルダンから、ときにはレバノンから、ときにはイラク国境を越えて、タルトゥース港を通って、はたまたデイルエズールのときのように空路を使って、シリアの領土に援助をもたらすために、すべての国境を利用しています」
エテファ氏はこう述べる。「レバノンは重要な物流回廊であり、私たちは安全保障理事会の決議を遵守しています。シリアでは、5〜6カ所の大型倉庫で、1人が1ヶ月生活できる量の食糧バスケットを梱包して配布しています。レバノンでは、現地の運送会社、運転手、港、作業員を利用しています。これらは非常に有用なプロセスです」
輸送車列のシリア行きが凍結された影響について、エテファ氏は次のように述べている。「レバノンでは39台のトラックが足止めになっています。何十万トンもの食料です。今後もレバノンを経路として利用し続けられるように情勢が安定し、それが全員にとってメリットになることを願っています。以前、米国からレバノン経由でシリアに小麦を輸送したことがありますが、その件については誰も反対しませんでした。重要な位置にあるレバノンを、私たちは失いたくありません。まだこの失う段階には達していませんが、私たちはレバノンを有用であると考えており、またレバノンにも恩恵を受けてほしいと考えているため、失いたくはありません」
一方で、トラック運転手たちは月曜日、ベイルート港で働くシリア人運転手たちに抗議するため、同港で座り込みを行った。「The Syndicate of Public Truck Owners（公共トラック所有者のシンジケート）」は、シリア人が運転する10台以上の公共トラックを積荷と一緒に押収したと発表している。
レバノンの「National Federation of Employees’ and Workers’ Unions（全国従業員労働者連合）」のカストロ・アブドゥッラー会長はこう語る。「トラックオーナーは国の状況により圧迫を受けています。関係者とは何度も話をしてきましたが、ドライバーの問題の解決には至っていません。私たちは、国家経済にとって重要であるこの施設に法律を適用し、労働法への違反行為を取締ることを求めます。この問題が解決されなければ、来週にも港のゲートは閉鎖されるでしょう」