
Najia Houssari
ベイルート:新型コロナウイルスが世界中で流行し、レバノンで経済的混乱が続く中、レバノンの病院は財政難に直面している。
15日現在、病院に酸素ガスを供給している2社のうち1社は、レバノンで供給が不足しているドルでの現金支払いを条件とする場合のみ、それらを配達する。レバノンの病院が直面しているもう1つの問題は、麻酔ガスの製造に使われる亜酸化窒素の不足だ。
レバノンの病院連合の会長であるSleiman Haroun博士は、この必須物質がなくては手術を行うことはできないと述べた。
「レバノンには136の民間病院があり、レバノンの中央銀行が助成金を支給する緊急患者でない場合は、現在新患の受け入れを停止しています」と同氏はアラブニュースに語った。
中銀が送金の承認を遅らせ、医療用品の輸入代金の支払いを妨げているため、医療用品の輸入業者は問題に直面している。
「保健省、国家社会保障基金、軍の健康保険組合へのレバノンポンドでの支払いを含め、民間病院への政府の支払いは定期的には行われていません……政府の支払いは、私たちが医療用品の輸入業者に支払わなければならないものよりずっと少なく、これらの支払いは1ドル=1507レバノンポンドという法定平価に基づいています」と同氏は述べた。
レバノン政府は2011年以来、民間病院に13億ドル近くの債務を負っているが、民間病院は医療用品販売業者に過去2年間で3億5000万ドルの債務を負っている。
患者を治療できないことは、レバノンが「経済的、社会的、および文化的権利に関する国際規約」の署名国として公約したことと矛盾する。
ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、この規約には、国は、全ての者に最高水準の身体的・精神的健康を享受する権利を保障すべきだと書かれている。
国は、医療を実行するために必要な措置を講じ、人々が、以前は入手可能だった薬を入手できないといった、あらゆる「医療サービスの質の低下」を防止すべきだ。
レバノン経済は、ドルの安定したフローに常に依存しており、中銀は1997年以来、1ドル=1507レバノンポンドという固定為替相場に従い、レバノンポンドをドルと連動させている。
しかし、この10年間でレバノン市場のドルの量は、経済成長の後退、国外在住者の送金の減少、シリア内戦により、着実に減少した。
2019年後半にはレバノン経済への信頼が下がり、高額預金者らが銀行から預金を引き出し、市場でのドル不足が進み、レバノンの金融危機が深刻化した。
銀行部門は、昨年の街頭デモを受け、海外送金を制限した。米国の預金が凍結され、レバノンポンドに対する圧力が高まった。レバノンポンドの市場価格は、中銀が市場にドルの供給を始めた後、闇市場で5200レバノンポンド、公式レートで3200レバノンポンドに下落した。
レバノンは医療用品の全てを外国から輸入している。病院はレバノンポンドで支払い、輸入業者は、公式の固定レートに従い、ドルで支払う。
中銀は、ドルでの医療機器の支払いの85%を助成することを決定したが、企業は、市場為替相場で新たにドルを購入し、15%を用意しなければならない。
「中銀は、亜酸化窒素を助成金の対象とならない工業製品に分類することを決定しましたが、亜酸化窒素は優れた医療用品であり、この種の麻酔薬がなくては手術を行うことはできません」とHaroun氏は言う。「また、酸素ガスを製造しているレバノンの工場にも助成金が支給されており、新たな資金で海外から輸入すべきスペアパーツが必要となり、病院の財政を圧迫しています。どの病院も、部門を閉鎖し、従業員・スタッフを解雇して引き締めを行っており、私たちが置かれている状況が続けば、医療の惨事へと向かってしまいます」
病院の危機が続けば、優秀な医療従事者がレバノンから海外へ流出するのではないかと同氏は心配した。