
Menekse Tokyay
南コーカサスがトルコとロシアの新たな火種だという主張にもかかわらず、最近のシリアでの軍備増強は、当該地域の均衡がいまだに危うく、地域的危機を引き起こす可能性があることを暗示している。
2日、トルコの軍用車列が、25台以上の装甲車と、兵站物資を運ぶトラックとともにイドリブ県北西部に入った。その地域におけるトルコ軍の拠点の強化が目的だ。
ロシアはトルコの新たな軍備増強をどのように考えるのか。また、それは、シリア内戦で敵対する陣営を支援している両国による新たな譲歩につながるのか。これらは、いまだに悩みの種だ。
イスタンブールのオムラン戦略研究センターの軍事アナリストNavvar Saban氏は次のように考えている。トルコがシリアでの軍の駐留、主に、トルコとシリアとの国境と平行に走っているM4高速道路の南の地域での軍の駐留を減らすことをロシア政府は期待しているため、この軍備増強はロシアを混乱させる可能性が高い。
「ロシアは、政権がM4の南の地域で軍の一部を動員することを容認し始めた。大規模な軍事衝突はないだろうが、トルコ軍が置かれた地域では、政権によっていくつかの砲撃があるかもしれない」と同氏はアラブニュースに語った。
この地域におけるトルコ軍の車両の数は、この7カ月で9750台を超えたと推定されている。
ロシアは、この地域が不安定であることを理由に、新たな合同パトロールの実施を拒否した。
トルコ軍とロシア軍による最新の合同軍事演習が最近、9月21日にイドリブで行われた。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は9月22日に、ハイアト・タハリール・シャーム(HTS)による、ロシアのフメイミム空軍基地を標的にした攻撃の後、状況が安定すれば、両国はシリア北部での合同パトロールを再開すると発表した。
英国を拠点とするシリア研究者Kyle Orton氏は、トルコのイドリブでの軍備増強は、トルコ政府がその県の残りの地域を渡さないというメッセージのつもりだと述べた。
「トルコは予想以上に多くの領土を放棄し、シリアの代理人の多くが期待していた以上の領土を確実に放棄した。しかし、トルコ政府には、越えてはならない一線がある。テロリストや難民がトルコに入るのを防ぐための緩衝地帯を必要としている」と同氏は話した。
同氏はこれを、新たな攻撃がイドリブで行われようとしているという、シリアとイランが最近送ったシグナルに対するトルコからの応答だと見ている。トルコがそのような行動に抵抗するであろうことを示唆している。
「ロシアはトルコの行動をあまり警戒しないだろう。ロシアはイドリブとトルコのもとを去ることには満足しているが、アサドとイランの体制を統制することはできない。それはシリア全土の再征服を最終目標としている」と同氏は述べた。
その一方で、トルコの大統領は10月1日、イラク北部とシリアで越境軍事作戦を開始する権限を2021年10月30日まで1年間延長するよう求める動議を議会に提出した。トルコの、シリア北部、ユーフラテス川東部、イドリブ県での「安全保障に関する責任」が継続していることをこの動議は強調している。
ワシントンDCの独立したアナリストRuwan Al-Rejoleh氏によると、反政府勢力の最後のとりでであるイドリブには、「新たな作戦」があるといううわさが常にあったという。
「当事者は全員それを予期し、それに備え、時々それを助長させてきたが、パンデミックの状況がそれを先に延ばした。ロシアはM4高速道路の全てを支配することに関心がある」とAl-Rejoleh氏は述べた。
政府軍とロシアの戦闘機は最近、イドリブ県でのHTSや他のテロ集団への激しい爆撃により、攻撃を増やしている。
ロシアとトルコが仲介されて結ばれた3月の合意では、M4高速道路周辺に安全のための回廊地帯を設置し、この地域の過激分子を一掃するとともに、政府軍と反政府勢力の緩衝地帯としての役割を果たすために共同パトロールを実施することが求められた。
3日のテレビ会議で、レジェプ・タイップ・エルドアン大統領は「他の者が約束を守らなければ、トルコはシリア国内のテロリストのいる地域を一掃するだろう」と述べた。
Al-Rejoleh氏によると、トルコとロシアの間でどれをテロリスト集団と定義するのかという問題が残っている。
「トルコは、追放されたクルド労働者党(PKK)と関係があるクルド人民防衛部隊(YPG)のような、シリア北東部で活動している武装した別の組織の存在を、国境に差し迫った脅威とみなしているが、ロシアは、国際的にテロリスト集団に指定されたHTSおよび直接支援もしくはトルコの情報機関のルートを通じてトルコとつながりがある他のシリアの反体制武装グループを排除することを優先している」と同氏は述べた。
シリアとの前線では、トルコとロシアは、他の紛争地帯の圧力を緩和したり、PKK関係者の一部を排除したり、新たに難民が押し寄せるのを防ぐことを約束したりする代わりに、イドリブの一部の支配を「再び」諦めるいう実現可能な譲歩に関し、合意に達する可能性がある、とAl-Rejoleh氏は付け加えた。