

ダウド・クッタブ
アンマン:主流派のパレスチナ指導部は12月11日、モロッコがイスラエルとの関係正常化に合意した最も新しいアラブの国となったというニュースに、沈黙を守ったままだった。
ハマス、イスラーム聖戦、パレスチナ解放人民戦線(PFLP)のような反主流派は、「いずれ近いうちに」、イスラエルに対する敵意をかなぐり捨てることになるモロッコの合意をすぐに批判した。
アメリカが仲介し、ドナルド・トランプ大統領が発表した合意の下で、アメリカはモロッコが長年主張してきた西サハラの領有権を認め、この領土に住むサハラウィー人の独立の要請を却下した。
モロッコ王室は10日、ムハンマド6世がパレスチナのマフムード・アッバース大統領に電話し、パレスチナの大義に関して、モロッコ政府の立場は一切変化しておらず、二国家解決を支持していると述べて、アッバース大統領を安心させたことを伝える公式声明を発表した。
しかし、国王の電話や、今年イスラエルと関係を正常化したUAE、バーレーン、スーダンに加わるというモロッコの決断に対して、正式なパレスチナの指導者からの反応は一切なかった。
パレスチナの公式通信社、WAFAと、主要日刊紙のアル・クッドとアル・アヤムは、ムハンマド国王が電話したことを報じていなかった。
ビルツァイト大学のアリ・ジャルバウィ政治学教授は、パレスチナ自治政府は以前の誤りを繰り返さないようにしようと、この問題に関して沈黙を続けている、とアラブニュースに語った。パレスチナ指導部は、UAEとバーレーンが関係を正常化したとき、自ら犯した失敗を、パレスチナ指導部は繰り返したくないのです」と、ジャルバウィ教授は語った。
パレスチナのジアド・アブ・ザイヤード元大臣は、モロッコはイスラエルに移民したモロッコ系ユダヤ人と常に良い関係を保ち続けてきた、とアラブニュースに語った。
「モロッコはイスラエルのMK(クネセトの議員たち)や、主としてモロッコ系の大臣たちの訪問をはじめとして、イスラエルとの事実上の関係を今までずっと維持してきました」。しかし、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、最近の合意に至った展開を、画期的な出来事と表現し、「誇張し続け」ているのだ、と同元大臣は指摘した。
モロッコ王室の声明は次のように述べていた。「国王陛下(ムハンマド国王)はモロッコが常にパレスチナ問題を、サハラの問題と同じレベルで捉えており、モロッコの領土であるサハラを統合するモロッコの取り組みは、現在も今後も、自らの正当な権利を求めて闘っているパレスチナの人々を犠牲にするものでは決してない、と強調されました」
モロッコ国王は特別な地位にあり、国王はイスラエルにいる数十万人のモロッコ系ユダヤ人をはじめとして、モロッコ系ユダヤ人コミュニティーと素晴らしい関係をお持ちです」
モロッコ国民のうち、現在約2,500人がユダヤ系で、ユダヤ系のアンドレ・アゾレイ観光大臣もいる。
ハマスとイスラーム聖戦は、モロッコとイスラエルの合意をめぐって、痛烈な非難声明を発表した。
「イスラエルが占領状態にあるのに、モロッコがイスラエルと関係を正常化するのは、エルサレムとパレスチナに対する裏切りです。私たちはモロッコ国民が、この関係正常化を完全に拒絶すると信じています」と、イスラーム聖戦は述べていた。
ポリサリオ戦線と強固な関係にあるPFLPもまた、この正常化計画を非難した。ポリサリオ戦線はアルジェリアから支援を受けている独立運動で、西サハラの5分の1を支配し、数十年間の武装闘争と膠着状態の中で、独立を求める住民投票を求めて運動している。
パレスチナのガッサン・ハティーブ元労働大臣は、モロッコの正常化決定は近視眼的であり、アラブの利益を害するだろう、とアラブニュースに語った。「これは地域的なアラブの制度に悪影響を及ぼし、パレスチナ人に害を与えます。なぜなら、これは国際法に違反している占領国のイスラエルに対して、逆に褒美を与えることになるからです」
モロッコによる西サハラの主権をアメリカが認めれば、「イスラエルがエルサレムと占領しているパレスチナ領の残りの部分を、今後も支配し続けること」を認めることになる、と同元労働大臣は語った。
正式な関係正常化は、イスラエルに460,000人もいるモロッコ系ユダヤ人コミュニティーが、パレスチナとの和平に反対する傾向を変え、トーンダウンさせる可能性がある、と考えているアナリストもいる。
しかし、ジャルバウィ教授は次のように語った。「これらは、2つの全く違う問題です。モロッコ系ユダヤ人は常にモロッコと良好な関係を保っているので、これにより、大きな違いが生じるとは思いません」
アブ・ザイヤード元大臣は、モロッコ政府の決定は文脈の中で見なければならないと指摘した。「私たちはこの出来事を正常な寸法で推し量るべきです。そして、劇的なことは何も起きていない、と私は言えます」
モロッコの故ハサン2世国王は、アラブとイスラエルの和平プロセスを陰で促進しようとしたことが度々あった。1986年7月、国王は進展を促そうと、イスラエルのシモン・ペレス首相を招き、2カ月後に、イスラエルのクネセト議員をはじめ、モロッコ系ユダヤ人の代表団と会っていた。
1993年、パレスチナ解放機構とのオスロ合意に署名した後、イスラエルのイツハク・ラビン首相はモロッコを正式訪問した。