
フランク・ケイン
ドバイ:ロシア直接投資基金(RDIF)のCEOキリル・ドミトリエフ氏は厳然として「我々ロシアは間違いなく世界最高のワクチンを持っている」とアラブニュースに語った。
COVID-19 ウィルスを予防するために開発されたスプートニク5号ワクチンは、欧米のメ ディアおよび一部の医療専門家たちからかなり疑問視されていたが、ドミトリエフ氏はまったく意に介さない。
彼は、そのような疑惑は「意図的な偽情報」によるキャンペーンであり、地政学的なライバル意識と相まった欧米製薬会社たちの嫉妬に基づくもので、科学すなはちスプートニク5号の現在までのデータに裏付けられたものではないと考えている。
動画
「安全性、効能、ロジスティクス、効果持続期間、アレルギー反応、他の副作用といった主なパラメーターを比較すれば、スプートニク5号がNo.1であり、世界最高のワクチンだということがわかる」とドミトリエフ氏は言う。
ドミトリエフ氏はRDIFの投資・財政業務を通してサウジアラビアの上級有力者層の間でよく知られている。彼が「フランクリー・スピーキング」(政界の高官らと最も重要な時事問題に関する見解について質疑応答するTV対談番組)に出演して話をした。
彼によると、スプートニク5号は次第にロシア以外の諸国でもその効用について信頼を受けつつあるという。このワクチンは欧米の技法と違って、ヒトアデノウイルスを使用して いる。
先日、アルゼンチンがこのワクチンを認可し、最初の供給分を受け取った。パラグアイもロシアのワクチンを採用すると発表した。最大のワクチン供給はもちろん自国ロシアで行われ、これまで150万人がスプートニク5号を接種している。昨年夏にスプートニクが使用開始されて以来ひときわ痛烈な批判をしていたニューヨークタイムズのモスクワ特派員もス プートニクを接種したことについて、ドミトリエフ氏は極めて満足げに指摘した。
アンドリュー・クレイマー氏は、スプートニク5号およびロシア政府による最初のCOVID-19ワクチン開発の裏付けとなっている科学に対して非常に批判的であったが、ついにス プートニク5号は「ロシアの科学者たちが長期に及ぶ絶え間ない研究と、過去の経験に裏打ちされたワクチン開発の真の成果である」と認め、ロシアに対して手厳しいことで知られている新聞記者としてはかなりの譲歩となった。
ドミトリエフ氏は欧州諸国の態度の変化にも気づいている。彼らは、他のワクチンの十分な入手が困難になりつつある中、現在スプートニク5号の採用を前向きに検討している。ドイツとロシアの指導者間でワクチンの共同生産に関する話し合いが行われ、フランスその他の欧州諸国にも同じ動きがある。
ロシアは現在欧州当局からの認可を申請中で、英国のアストラゼネカと複数の製造法を組み合わせた製品について共同開発も行っている。「懐疑論者たちはまちがいなく議論が尽きることになる。ロシアは最高のワクチンの一つを持っており、日に日にそれを受け入れる国が増えつつある」と彼は言う。
ドミトリエフ氏は、「極めて大量かつ迅速に予防接種を行った」国々では、パンデミックの最悪の時期は5月までに終息すると予測する。
彼はこれまでの経歴からいくと財務および投資の専門家なのだが、過去1年で医療および公衆衛生問題についても専門家の域に達しており、サウジアラビアのパンデミック対応に関する彼の見解は的を得ている。
動画
「サウジアラビアは非常に適切に対応した」と彼は言う。「感染者総数にしてもそうだが、サウジアラビア政府、サルマン国王、そしてムハンマド・ビン・サルマン皇太子がとった行動を見ると、非常に強硬かつ積極的に対応していることがわかり、それによってサウジアラビアはおそらく他の多くの国々よりもずっと早くウィルスを抑制することができるだろう。
「彼らは感染テストに力を入れ、早い段階で国民を治療していったが、これは非常に効率的で要点を押さえたシステムだと思う。」
ドミトリエフ氏はサウジアラビアによるG20サミットの運営についても賞賛した。G20は2020年にサウジアラビアが主宰し、ワクチン開発、医療投資、パンデミックによるロックダウン不況への財務的対応に関連する重要な諸問題に取り組んだ。
「パンデミックとの闘いにおいて、これは非常に重要なメッセージとなる。パンデミックに打ち勝つには、ロシア、サウジアラビア、その他のG20加盟国・非加盟国の指導者たちが共に力をあわせる意外に方法は無い。我々の協力によって、初めてこのパンデミックを効率的に終息させることができる」と彼は述べた。
動画
サウジアラビアとロシアの関係は2017年以降かつてなく緊密となっている。2017年、サルマン国王がサウジアラビアの君主として初めてのモスクワ訪問を果たした。またその折には、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子とロシアのウラジミール・プーチン大統領出席による他のいくつかの交渉も行われた。
RDIFとドミトリエフ氏は二国関係の発展に中核的役割を果たしており、それは浮き沈みする数々のビジネス上の取引やOPECプラスによる石油業界内の同盟関係に大きな影響力を及ぼしている。OPECプラスはサウジアラビアとロシアが中心となり、世界のエネルギー市場の暗黒の時期を巧みに乗り切ることに成功した。
サウジアラビアとロシアのこの関係は何に基づいているのか?「この二国関係の真髄は信頼関係だと考える。我々は広範な諸問題について協働して取り組みながらこの信頼関係を築きあげてきた。エネルギー問題に始まって、投資、ヘルスケアまで共に協力し、それによって非常に素晴らしい提携関係を生み出し、サウジアラビア国民、ロシア国民、さらには世界の人々にとって極めて有益な成果を導き出してきた」とドミトリエフ氏は言う。
「我々は多くのインフラストラクチャのプロジェクトに共同出資しており、これがロシアとサウジアラビアにおける雇用の創出に大いに役立っている。異なる見解や政治的な誤解は脇へ置き、合同プロジェクト、経済、そして相互理解と政治的外交関係の向上に焦点を絞り込む必要があるということが我々の協力体制からわかる。これは他の国々にとっても参考になると思う」と彼は述べた。
ドミトリエフ氏は、サウジアラビアとロシア間の協約に果たした彼の役割により、サウジアラビア最高の栄誉の一つであるアブドゥルアズィーズ国王名誉勲章を授与された。彼はサウジアラビアの政策立案者、特にムハンマド・ビン・サルマン皇太子のリーダーシップについて研究する機会が与えられた。
サウジアラビアとロシアの関係は2017年以降かつてなく緊密となっており、RDIFとドミトリエフ氏はその関係の発展に中核的役割を果たしてきた。(TASS/Getty Images)
「サウジ国民と全世界に対する彼の非常に大きく、重要かつ前向きなビジョンの融合には常に感心させられる。そのビジョンを極めて具体的で実質的な行動に移していく彼の能力に よって、サウジアラビアが進化を遂げつつある」とドミトリエフ氏は言う。
ロシアはハイパーループ輸送システムの出資国の一つで、サウジアラビアも提携している。ロシアは先日発表された巨大プロジェクト「ザ・ライン」を詳細に研究しようとしている。また、サウジアラビアのビジョン2030多様化戦略の一環として海外投資に門戸が開かれることが予測され、6兆ドル規模のこの投資機会がもたらす他の側面のことも考慮に入れている。
「このインフラ・テクノロジーはまさに全世界が待ち望むソリューションであり、必ず未来の輸送ニーズとなっていく。我々はそのテクノロジーを心から信じており、このプロジェクトによって生み出されるエコシステムが間違いなくロシアに利益をもたらすことを確信している」とドミトリエフ氏は言う。
OPECプラスが今後もサウジアラビアとロシアの経済上の提携関係の中核となることは変わらない。OPECプラスでは最近石油供給方針に関して意見の不一致が見られたものの、その問題は全世界の供給量からサウジアラビアが単独でさらに1日100万バレル減産するという決定により解決された。
「我々は共に安定した石油市場を望んでおり、その点で完全に意見が一致している。サウジアラビアによるこの予想外の供給削減は非常に大きな貢献となり、これによって石油市場が安定して先の見通しが立てやすくなった」と彼は言う。
ドミトリエフ氏は、サウジアラビアとの緊密な関係により、OPEC プラスの審議においても彼なりの役割を果たしてきた。彼は、最近の順調な収益のおかげで石油価格は「多かれ少なかれ安定」し続けるだろうという。最も緊密な同盟国であっても、方針に関する問題について意見を異にすることはある。最近ロシアとイランの友好関係が浮き彫りとなったが、ロシアは、イランとアルカイダが癒着しているというのは米国による「持続不可能で非論理的な」非難にすぎないとして無視している。
「ロシアの立場は、すべての国と手を組むというものだ。米国、欧州、その他の諸国との間には妥協点を見つけようとしている。イランに関しては、取り決めをした上で多くの様々な問題に関して議論を交わすことがとても重要だと考えている」とドミトリエフ氏は語った。