
ロバート・エドワーズ
ロンドン:就任したばかりのジョー・バイデン米大統領は、就任後の数日を、前任者の政策や大統領令の多くを見直すことに使っている。バイデン氏の政権がその戦略的継承物をどう扱うか、特にイランとその代理勢力、とりわけイエメンのフーシ派民兵組織に関しては、始まったばかりの同氏の大統領職に対するアラブ地域の意見を形成する可能性がある。
1月10日、当時現職の国務長官だったマイク・ポンペオ氏は、国務省がフーシ派(アンサール・アッラーとしても知られる)を「外国テロ組織(FTO)」として指定すると発表した。アブドル・マリク・アル・フーシ氏、アブドル・ハリク・バドル・アル・ディン・アル・フーシ氏、アブドラ・ヤヒヤ・アル・ハキム氏の3人のフーシ派指導者は、1月19日付けで特別指定国際テロリスト(SDGT)の指定を受けた。
「この指定はアンサール・アッラーが行ったテロ行為の責任を問うことを目的としており、その中には民間人やインフラ、商船を脅かす国境を越えた攻撃も含まれている」とポンペオ氏は述べた。
「この指定はまた、イランによる干渉を受けず、近隣諸国と良好な関係にあり、平和で主権を有し、統一されたイエメンを実現するための取り組みを進めることも目的としている」
トランプ政権が中東で多くの成果を上げることができた理由の1つは、是を是とし非を非とする覚悟があったからだろう。イエメンでの戦争は、2015年にイランの支援を受けたフーシ派が、国連が認めたアブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領の政権を転覆させたことで激化した。米国、英国、フランスの支援を受けたアラブ諸国の連合は、正当な政府を政権に復帰させるための軍事作戦を開始した。
それ以来、フーシ派民兵組織の代表が2018年9月にジュネーブで行われた国連が仲介する協議に出席せず、同組織の戦闘員がストックホルムとリヤドの合意の条件を故意に無視していることから、和平調停に至ろうとする試みは何度も失敗している。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックの発生時にアラブ連合によって発表された2020年4月の停戦は、フーシ派がサウジアラビアを標的とした国境を越えたドローン・ミサイル攻撃を再び始めた時、即座に破綻した。
イエメン政府にとっては、フーシ派とのいかなる和平合意もフーシ派がイラン政府との関係を断つことを条件としているが、事態がそのように進展する可能性は現在ほとんどない。
イランによるフーシ派への支援は、2015年にフーシ派がサヌアを占拠するずっと前から公然の秘密だった。それが原因で残忍な戦争は衰えることなく激化し、世界最悪の人道危機の1つが悪化している。
この紛争は6年目を迎え、11万2,000人が死亡し、2,400万人が人道支援を切実に必要としている。
フーシ派はイエメンとサウジアラビアの民間人口集中地を繰り返し攻撃してきた。直近では、新たに発足したイエメン政府の閣僚を狙ったフーシ派のミサイルが12月30日にアデンの国際空港を直撃し、27人が死亡した。
昨年4月には、タイズ市の刑務所での攻撃で5人の女性が殺害された。この攻撃はフーシ派の犯行が疑われており、人道支援団体によって強く非難されている。フーシ派のミサイルはリヤドの民間施設にまで命中しており、2017年11月にはリヤドの国際空港が被害を受けた。
また、同組織はサウジアラビアの石油インフラを日常的に標的にしてきた。2018年7月の攻撃では紅海でサウジアラビアの石油タンカー2隻が被害を受け、2019年5月に行われたリヤド近郊の2つの石油汲み上げ施設に対する攻撃では重要なパイプラインが損傷した。
フーシ派が犯行を主張した攻撃の中で最も被害が大きかったのは、2019年9月に起きたサウジアラビアのアブカイクとクライスの石油施設に対するドローン・ミサイル攻撃で、世界の原油市場に衝撃を与えた。
フーシ派は犯行を主張したが、事件の調査官はイランが提供した武器が関与したこの攻撃は北側から行われた可能性があることを示唆した。
バイデン氏の外交政策チームはまた、同氏がバラク・オバマ氏の副大統領だった2016年に米海軍を襲った3度の攻撃を思い出すかもしれない。これらの攻撃は「アメリカに死を。イスラエルに死を。ユダヤ教徒に呪いを」という悪名高いフーシ派のスローガンに沿った行動だった。
2016年10月9日に駆逐艦メイソンがイエメン沖のバブ・エル・マンデブ海峡付近に展開していた時、フーシ派の支配地域から発射された2発のミサイルの標的となった。これらの発射体による被害はまったくなかった。
その3日後、メイソンは再び標的にされた。ミサイルのうち1発は同艦に届かず、もう1発は迎撃された。同じくこの海域に展開していた駆逐艦ニッツェは翌日に報復を行い、フーシ派の支配地域にある3つのレーダーサイトを破壊した。
10月15日、メイソンは3度目の標的となった。今回の攻撃は紅海で行われた。5発の対艦巡航ミサイルはすべて無力化されたか、迎撃された。
このような振る舞いを考えるとフーシ派が当時テロ組織に指定されなかったのは驚くべきことだが、歴史家はおそらく2015年のイラン核合意を何としてでも維持したいというオバマ政権の希望をその原因と考えるだろう。
フーシ派の標的となっているのは外国の軍艦だけではない。フーシ派は近年、港湾や船舶への攻撃を繰り返しており、南紅海やバブ・エル・マンデブ海峡では、商業船が通る航路に日常的に機雷を仕掛けている。
同民兵組織はまた、ホデイダ港沖に放棄され、110万バレルの原油を積んだ船齢45年の石油タンカーFSOセイファーの緊急修理を行うため、検査チームの入船を認めるよう求める国連の要請を何度も拒否してきた。国連は2020年7月15日の臨時会合で、同船が紅海で破断した場合に「大惨事」になる恐れを表明した。
ポンペオ氏の上司であるドナルド・トランプ氏は、オバマ時代のイラン核合意から米国を離脱させ、イランへの制裁を再び課すなど、イラン政府に対して「最大限の圧力」をかける政策を追求してきた。
トランプ氏は、イエメン、イラク、シリア、レバノン、パレスチナにおけるイランの影響力や、イランがアルカイダの指導者や工作員をかくまっていることに対しても、この戦略に沿った断固とした措置で対応した。
2020年後半に実施されたアラブニュースとYouGovによるアラブ全体を対象とした調査の結果のほぼすべてが、バイデン氏はオバマ政権の慣習を捨てることが賢明であることを示唆している。最も人気のあった回答(53%)は、オバマ政権でこの地域の情勢が悪化したというもので、さらに58%がバイデン氏はオバマ時代の政策から距離を置くべきだと答えている。
イエメン内外から非難の声が上がり、指導部への更なる圧力を求める声が高まる中、国務省による「テロリスト」指定は、バイデン氏にフーシ派とその後援者であるイラン政府との将来の交渉のための貴重な力を与える。
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Twitter:@RobertPEdwards