
ナジア・フサリ
ベイルート:レバノンのシャルベル・ウェハビ外相は、スイスからレバノン司法当局への支援要請を受け、「レバノン中央銀行によるマネーロンダリングおよび横領疑惑」の捜査について、完全なる秘密保持を要請した。
ウェハビ外相は月曜日、スイスの駐レバノン大使であるモニカ・シュムツ・キルゴス氏と会談した。キルゴス大使はこの件に関するコメントを拒否し、この捜査はスイスの法務大臣と法務長官が扱うものであり、司法当局に支援を要請したのは法務長官であると述べた。
ウェハビ外相は、「これはレバノン国民にとって重要な問題ではあるが、これに関して国内メディアを通して出回っているものへの応対には、完全な秘密保持が要求される」と述べた。
外相はメディアに対し、「解釈、追加、言葉のすり替えなどを行わず、ニュースをありのままに伝えるように」と呼びかけた。
外相はまた、「レバノン司法当局が声明を発表するのは自由であり、これに関して適切な決判断を下すものと思う」とも述べた。
レバノン当局は先週、リアド・サラマハ中央銀行総裁に対して、同総裁はスイスの法務長官の前で陳述するか、もしくは駐レバノンのスイス大使館にてスイス司法調査団の前で陳述するかのいずれかになると伝えた。
サラマハ総裁は、自分は中央銀行の口座や運営費から資金を移動させたことはないと否定し、スイスへ出向いて証言する用意があることを表明した。
同総裁は月曜日の声明で、「一部のメディアが伝える多額送金の報道はすべて大きく誇張されており、事実とは全く異なる。彼らは組織的に中央銀行および総裁のイメージを損なおうとしている」と述べた。
サラマハ総裁は声明の中で、「すべての虚偽に反論すべく数字や事実を公に徹底調査する」ことについては拒否した。
レバノン司法当局のある情報筋はアラブニュースに対し、次のように語った。「(レバノン司法当局は)中央銀行の件に関するスイスの捜査には何も関係していない。我々は支援要請を受けたが、郵便配達のような役割をしているだけだ。
スイス側が書類を要求してきたので我々は中銀へそれを伝えた。中銀が書類を準備したところで、我々がそれをスイスの司法当局へ転送することになる」
スイス議会は2019年末、銀行データの自動交換をする相手国に18カ国の追加を承認し、その中にレバノンも含まれた。
この合意はつまり、スイスはこの合意の下で、レバノン市民が保有する銀行口座の詳細を税務調査目的で提供できることを意味する。
この合意の施行が今年に始まったが、当時スイス議会が発表した宣言によると、世界個人情報集会の基準を満たしていないレバノンがこの合意から恩恵を受けることはない。
これはつまり、スイスを始めとする合意加盟国の銀行にあるレバノン国民の口座について、そのデータや情報を、レバノンは取得できないことを意味する。ただ例外がひとつある。送金された資金に疑いがあることをスイス当局が証明した場合だ。
日曜日にSNS上で、スイスのある国会議員の発言として、巨額の不審送金があったため、スイスはレバノン人の口座を凍結する決定を下したとの話が駆け巡った。
スイス社会民主党のファビアン・モリーナ国会議員は、2016年以降、レバノンからスイスに流入する資金は約20億ドル増加したが、「スイスに流れたそれらの資金が不法な資金源からのものであるとはまた確認されていない」と述べた。
モリーナ議員は、サラマハ氏の口座が凍結されたとの報道が事実であるとは認定しなかった。「リアド・サラマハ氏の口座の4億ドルが凍結されたと報じたのは、メディアだ」と彼は述べた。
レバノン中央銀行の口座の法的監査は、レバノン政府が国際通貨基金(IMF)との交渉を承認した経済復興計画における、最重要条項のひとつだ。この条項は、レバノンの経済危機解決を支援すべくエマニュエル・マクロン大統領が設定したフランスの構想にも含まれた。
自由愛国運動のサリム・アウン国会議員は、「何十億ドルという資金を海外に送金する政治システム」が問題であると糾弾した。
彼は、「サラマハ氏はこのシステムの取次人だといえる。当局の第一人者の防御を取り払えば、当局者すべての防御を取り払うことになるが、これをするに当たり、何者かが妨害に出てくるのではないかと私は危惧する」と述べた。