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イスラエルとの海上国境協議再開に不利な立場で臨むレバノン

レバノン南端の都市ナクーラの沿岸部で哨戒中のイスラエル海軍の近海用護衛艦。(AFP / 資料写真)
レバノン南端の都市ナクーラの沿岸部で哨戒中のイスラエル海軍の近海用護衛艦。(AFP / 資料写真)
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02 May 2021 08:05:51 GMT9
02 May 2021 08:05:51 GMT9
  • バイデン新米政権となって初のレバノン、イスラエル間の協議が行われる

ナジア・フセリ

ベイルート:レバノンとイスラエルは、米国の後押しにより、両国間の海上国境の画定についての実務協議をレバノン南部のナクーラの国際連合レバノン暫定駐留軍の基地で今週末に再開する。

両国政府は、10月14日から11月11日まで、4回の協議を行った。レバノン側が協議対象の海上域を860平方kmではなく2,290平方kmへと拡大することに固執したため、話し合いは中断している。

米国務省は、交渉の仲介役となる米代表団が協議再開のために5月3日にベイルートに向かうことを発表した。海上国境の画定についての両国間協議は、バイデン新米政権発足後では初となる。

レバノンとイスラエルは公式には依然戦争状態であり、両国間の境界線は陸上でも海上でも画定されていない。「レバノンとイスラエルに海上国境画定についての協議を促す決意」を米国務省が、今回、新たにした形だ。米側からの仲介役はジョン・デルーシャ氏が務める見込みである。

海上国境関連について、レバノン側は、混乱した状態にある。レバノン政府は、ナクーラからライン23に引いた境界線を2011年に国連に届け出たが、後になってその境界線は誤った推定に基づいておりライン29が正しいと申し立てたという経緯がある。

これまでの協議で、レバノン側は、ギリシャのエナジアン株式会社が操業しているイスラエルのカリッシュ天然ガス田の一部を含む1,430平方kmを自国領に追加することを要求した。

レバノン側の海上国境改正要請は、しかしながら、国連にはまだ送られていない。ライン29までの延長を含んだ国境線画定を行うための法令第6433号の改正が、ミシェル・アウン大統領の署名が得られないため、未だ行われていないからである。

アウン大統領は修正案を議会に提出する前に閣議承認しておくことを求めたが、ハッサン・ディアブ暫定首相はこの案件が現レバノン政府の権限の範囲外にあることを理由としてそうした閣議の開催を差し控えている。

イスラエル側は、海上国境の画定について言を左右にしているとレバノンを非難している。また、イスラエルのエネルギー相のユバール・シュタイニッツ氏は、「海上のガス・石油探査プロジェクトの妨害」であるとして警告を発した。

レバノン暫定政府のミシェル・ナジャー公共事業・運輸相は、懸案の海上国境改正案は、「英国海軍本部が製作した国際海事地図上に示された地理座標による規定」に基づいたものであると言った。

海上国境の画定を行ったレバノン陸軍司令部は、同司令部による調査結果と「同司令部付の水路部によってまとめられた証拠と研究結果を基盤とする科学的、法学的根拠」に基づいて、交渉担当の代表団は間接的な実務交渉でその責務を果たそうとしていると述べた。

意外なことに、1週間前、国会議員で自由愛国運動 (FPM) のリーダーであるジブラン・バシール議員が、演説の中で、「860平方kmの全面積の内約500平方kmをレバノンに、360平方kmをイスラエルに分割するホフ・ラインとライン29との間のラインに基づく新たな合意」を提案した。

バシール議員は、その演説で、「相手国が譲らないのであればライン23に固執することは賢明ではありません。故に、ライン29を交渉のテーブルに上げるべきなのです」とも述べた。

バシール議員の提案は、「アメリカ側への政治的な忖度に満ちた非主権的」な提案であると看做され、有力政治家たちの反発を招いた。

石油とガスの専門家であるクリスティーナ・アビ・ヘイダー氏によれば、バシール議員の提案の最も危険な側面は、新たなレバノン代表団の結成を呼びかけている点であるという。「この提案は、国連とイスラエル側へのレバノン代表団について間違った印象を与えかねません。それは一切容認できないことです」。

レバノン陸軍司令部は、「クアナ・ラインと名付けられた新たな境界線に基づく、レバノンが2,290平方kmではなく1,300平方kmしか得られない妥協的解決策である新たな改正案の提案」は陸軍が主導したという報道を、即座に否定した。

陸軍司令部は、司令部自身と代表団の「科学的に定義され、また、明確な根拠のあるライン29 に基づく、発表済みの提案を固守すること」へのコミットメントを強調した。

アビ・ヘイダー氏は、アラブニュースに、「次回の協議の方向性は現時点ではまったく分かりません。アウン大統領が海上国境線の画定に関連する法令の改正案に署名を拒否したことは、この案件の優先度が下がったことを意味します。その結果、レバノン側は協議において弱い立場となってしまうわけです」。

アビ・ヘイダー氏はさらに、「もしレバノン政権が法令の改正に同意し、改正案を国連に提出していたら、カリッシュ天然ガス田の一部はレバノン領に含まれることになったはずです。ところが、アウン大統領は、『レバノンには妥協の余地がある』とアメリカとイスラエル側に受け取られるようなことをしてしまいました。レバノン、イスラエル間の協議再開に弾みをつけたのは、恐らく、この誤った認識なのです」と付け加えた。

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