• パンデミックは既にガザの医療システムに大きな負担を掛けていた

ガザ市、ドバイ： ガザに住む他の数千人の人々と同じように、ウム・ジハド・ガバイン氏も子供たちを連れて家を捨て、必需品すら持たずにイスラエルの砲撃から逃げた。言うまでもなく、猛威を振るう新型コロナウイルスのパンデミックに対抗するフェイスマスクは持っていなかった。

高層ビル全体が崩れ落ち、爆弾によって煙を上げるがれきと化す中、ガザ地区の住民にとっては、差し迫った壊滅的な空爆の危険性が、死に至る得る新型コロナウイルスのリスクに取って代わっている。

「もちろんコロナウイルスに感染するのは怖いが、イスラエルのミサイルよりは（対処が）ました」と、6人の子を持つ母親であるガバイン氏は話した。「ミサイルは私たちを殺す」と、彼女の子供の一人が付け加えた。彼の足はほこりだらけだ。家を出た後、ガバイン氏は国連が支援する学校に避難した。彼女はそこ空爆の危険は少ないと思っているが、新型コロナウイルスの感染リスクは高いと感じている。

「金曜日に到着してから、一度もシャワーを浴びていない」と、34歳のガバイン氏は話した。「何時間も断水していて、衛生状態が非常に悪い」

避難所になった学校でも、爆弾で破壊されたガザの通りでも、マスクの着用を考える人はほとんどいない。

「イスラエルの絶え間ない攻撃は、コロナウイルスに対する我々の努力を台無しにしてしまった」と、ガザ地区の保健当局のアシュラフ・アルクドラ報道官は話した。

2007年以来、イスラエルに封鎖されているガザでは、パンデミックの初めの数カ月間、新型コロナウイルスの感染者はほとんど報告されなかったが、保健インフラが貧弱な、貧窮にあえぐ社会では、ウイルスの封じ込めをコントロールするのは難しいことは分かっていた。

軍事的にエスカレートする前、陽性率は世界で最も高い28%で、病院は患者であふれかえっていた。 世界保健機関（WHO）によると、ガザでは10万人以上がコロナウイルスの検査で陽性反応を示し、そのうち930人以上が死亡している。

国連パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）のアドナン・アブ・ハスナ報道官は、ガザ地区の住民4万人以上の避難所となった学校が、コロナウイルスの感染拡大の「中心地」になる可能性があると指摘している。

手洗い場などの衛生施設は設置されているものの、これらの対策が不十分であることを同氏は認めた。

1週間前にハマスとイスラエルが軍事的にエスカレートする前は、ガザの当局は1日平均約1600人に検査を行っていた。

保健当局の統計によると、パンデミックは既にガザの医療システムに大きな負担を掛けており、医療システムはイスラエルの攻撃で負傷した1500人以上の人々の治療に取りかかっている。

これまでコロナウイルスの患者の治療に専念していた部署も、押し寄せる負傷者に対応するために再編成しなければならなかった。

空爆で自宅が破壊され、UNRWAの学校に避難しているサレム・アル・アッター氏（38）は、人が密集している状態では、ウイルスがすぐに広がるかもしれないと心配していると話した。

「状況は悲惨だ」と、6人の子を持つ父親である彼は話した。

学校の中庭の反対側では、ウム・マンスール・アル・クルム氏が泣いていた。空爆で自宅が半壊したことを、隣人が電話で知らせた後だった。「耐え難い状況だ。コロナウイルスと戦争が同時に発生している」と65歳の彼女は話した。彼女は30人の親族とともに爆撃から逃げてきた。「もうこれ以上耐えられない」

流血の惨事が起きた後、湾岸アラブ諸国では、イスラエルを激しく批判し、パレスチナ人を力強く支援する声が高まっている。

バーレーンでは、政府にイスラエル大使の国外退去を求める書簡に市民社会団体が署名した。クウェートでは、抗議者らが集会を2回開き、より多くの集会を開く許可を求めている。カタールでは、ハマスの最高指導者が演説を行ったとき、政府は週末に数百人が抗議デモをするのを許可した。UAEでは、インスタグラム上で黒と白のチェック柄のパレスチナのカフィヤを身に着ける人や、パレスチナ人を支援するハッシュタグを付けてツイートする人が見られた。

ケンブリッジ大学に博士論文を提出する、UAEのミラ・アル・フセイン氏によると、UAEの人々は、政府に保護され、大切にされている。政府は国民に強力な社会的セーフティーネットを提供しているという。

戦闘が始まってから、彼女はパレスチナ人を支援するためにツイッターのハンドルネームを変更し、ツイッターを使ってイスラエルの政策を非難したり、戦争の残忍性を強調したりしている。

クウェート大学のバデル・アル・サイフ教授は、この紛争が「完全に不均衡」であることが、アラビア湾岸諸国の多くの人々に声をあげさせていると話した。

「イスラエル人が安心するためには、自分たちが受け入れられていると思う必要がある」とアル・サイフ教授は話した。「その受け入れられているという感覚は、彼らがパレスチナ問題に取り組まなければ完全に得ることはできない」

AP