
ハーグ:2005年に起きたレバノンのラフィク・ハリーリ首相(当時)暗殺事件の犯人を訴追するために設置された国連法廷は、レバノンの経済的・政治的危機の影響で資金不足に陥っている。
レバノンの危機的状況は、今後の審判の予定を脅かしていると関係者は語った。
審判を閉じることは、ハリーリ元首相殺害事件やその他の事件の犠牲者の遺族の希望を打ち砕くことになり、また、昨年8月に200人が死亡、6,500人が負傷したベイルート港の爆発事件の責任者を国連法廷で裁くことを求める人々の希望をも打ち砕くことになる。
昨年、ハーグ郊外に設置された国連レバノン特別法廷は、ハリーリ元首相ら21人を殺害した爆弾テロ事件の犯人として、ヒズボラの元メンバーであるサリム・ジャミル・アイヤシュ氏に有罪判決を下した。
アイヤシュ氏は欠席裁判で終身刑5回の判決を受け、共犯とされた3人は証拠不十分で無罪となった…。双方が控訴している。
裁判所は、2004年と2005年にハリーリ元首相の爆弾テロに先立って行われたレバノンの政治家に対する別の暗殺と襲撃の罪に問われているアヤッシュ氏に対して、6月16日に2回目の審判を開始する予定だった。
アントニオ・グテーレス国連事務総長の報道官は12日、裁判所の財政問題について認識していると述べた。
国連副報道官のファルハン・ハック氏は、「事務総長は、審判の前提となる独立した司法手続きを支援するために必要な資金を確保するため、加盟国と国際社会に自発的な寄付を引き続き求めている」と述べた。
今回の資金不足は、レバノンがハリーリ暗殺以来の最悪の混乱に直面していることに起因する。レバノンでは、イランの支援を受けた過激派組織ヒズボラとその同盟国の支持者と、ハリーリ氏の息子で、首相に指名されているサアド・アル・ハリーリ氏の支持者との間で深く対立している。
第2の事件の被害者側の弁護士であるニダル・ジャーディ氏は、ロイターに対し、「もし裁判所が閉じられ、この事件の審判が無くなれば、加害者や正義の実現を拒む者たちにタダで贈り物をすることになる」と述べている。
ジャーディ氏は、新たな審判を断念することは、17年間裁判を待ち続けた被害者を傷つけるだけでなく、レバノンでの犯罪に対する説明責任を弱体化することになると指摘し、国連に懸念を表明する書簡を送ったことを明らかにした。
審判を閉じることは「関連する事件の被害者やレバノンの犠牲者にとっても残念なことだ」と述べ、国際的な資金援助を訴えた。
「レバノンには徹底した説明責任が必要である」ともジャーディ氏は述べた。
2007年の国連安全保障理事会の決議により創設され、2009年に開廷した同法廷の昨年の予算は5,500万ユーロ(6,700万ドル)で、レバノンが49%を負担し、残りを海外のドナーと国連加盟国が補てんしている。
「レバノン特別法廷は非常に厳しい財政状況にある」と、裁判所の報道官であるワジェド・ラマダン氏はロイターに語った。「司法手続きに関する決定はまだ下されておらず、解決策を見つけるために熱心な資金調達活動が行われている」ともラマダン氏は述べる。
国連は、法廷の開廷を2021年3月1日から2年間延長しているが、残りの審判が終わった場合、または資金が尽きた場合はそれより早く閉じることとしている。
グテーレス事務総長は2月、レバノンの財政危機により、政府の拠出金が不透明であることを指摘し、2021年の第1四半期以降、裁判所が業務を継続できなくなる可能性があると警告していた。
2021年の予算は40%近く削減され、裁判所の人員削減を余儀なくされたが、国連の文書によると、レバノン政府は依然として分担金を支払っていない。
グテーレス事務総長は、2021年分として、国連総会に約2,500万ドルの予算を要求した。総会では3月に1,550万ドルが承認されている。
ロイター通信