
ジョルジ・アザール
ドバイ: 電力網が潰れ、レバノンは完全な暗闇に陥っている。崩壊の縁で揺れているレバノンにさらなる悲しみが積み重なっている。
日曜深夜の声明で国営のレバノン電力(EDL)は「供給量が極めて低いレベルに達した」後、完全な停電状態に突入したと発表した。
危機に陥る国内でレバノン電力は1日ごとに約1時間の電力を供給してきた。民間の発電機が不足分を懸命に埋めようとしていたが、住民は15時間以上の停電に晒されていた。
レバノンの4基の主要発電所から電力網に電力を送電している8箇所の供給ステーションも怒りに満ちた住民に占拠され、電力を逸らして彼らの町や村だけに送電している。
レバノン南部とバールベックに位置するステーションは1週間の大部分に渡って占拠され、レバノン電力は治安部隊に秩序の回復を求めた。
「無法治地帯で、もはや従業員が仕事に行くのは、はっきり言って安全ではありません」レバノン電力の部長が匿名という条件でアラブニュースに語った。
これらのステーションは訓練を受けていない住民によって事実上運営されており、回路が過負荷になる危険性が高まっている。
レバノン電力の部長は「いつ災害が起きてもおかしくありません」と言う。さらに悪いことに、レバノン電力の作業員を含む公共部門の従業員が今週から本格的なストライキを始める予定となっているのだと言う。
「月に40ドルで生活していて、ガソリンもなく、医薬品もなく、安全を感じることもできず、そんな状態で従業員が仕事をしてくれるなんて、どうして期待できるでしょう」レバノン電力の部長はそう述べた。
緊急の燃料不足により地中海に面した小国レバノンは人道的危機に瀕しており、全国の病院が警鐘を鳴らしている。
ディーゼル燃料の備蓄が徐々に減少する中、「人工呼吸器で生きている15名の子供たちと40名の成人患者」と、他にも透析治療を受けている180名の命が危険に晒されており、レバノン最大の大学病院の1つが関連のある利害関係者に助けを求めた。
ベイルートアメリカン大学メディカルセンター(AUBMC)は土曜、1週間分の備蓄を補充したという声明を出す前、こうした患者は「数日以内」に死亡する可能性があると述べた。
「多くの声が無視されましたが、ベイルートアメリカン大学管理部はようやく、この危機を見て率先して救援を行う意志のある人々とつながることができました。燃料供給業者、企業、市民が動き出しました。そしてAUBMCと他の病院に燃料の再供給が届き始めたのです」土曜日、AUBMCはそう伝えた。
「AUBMCの燃料供給は徐々に再開しており、今夜までには約1週間分の備蓄になるはずです」と付け加えられた。
今回の差し迫った危機は、北部アッカール地区の悲惨な事故に続いて起きた。その事故では28名が死亡。多数が負傷した。
同国保健省によると、日曜早朝、レバノン北部で燃料タンカーが爆発。少なくとも28名が死亡し、79名が負傷。住民が間に合わせの容器に燃料を補充しようと群がっているとき、押収された燃料タンカーが爆発したという。
爆発の原因については様々な説がある。不満を抱くタンカー所有者による発砲というものや、ライターで放火した人物がいたという報告もある。
国内の病院は疲弊しており、燃料や医薬品不足のため患者の治療ができず、職員は好意的な近隣諸国に救援を求めることにした。
重度の熱傷を負った患者が3名、トルコへ飛行機で移送された。クウェートとエジプトはレバノンに10トンの医療支援物資を送った。
日曜夜、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ氏は支持者への発表で、イランの支援を受けている自身の政党がテヘランから燃料の輸入を開始すると述べた。
過去にハッサン氏は、自身の組織は米国の制裁を避けるためにレバノン中央銀行を迂回してイランから燃料を輸入することができると語っていた。
「我々はイランに行き、イラン政府と交渉し(中略)石油と燃料油を満載した船舶を購入し、ベイルート港に輸送する」とハッサン氏は語り「レバノン国家は(敢えて)国民に燃料やガソリンが届かないように妨害しているのだ」と挑発した。