
ドバイ:機関銃が石を投げる抗議参加者に応戦している。オートバイに乗った革命防衛隊がデモ参加者の後を追っている。私服の治安部隊がなりふり構わず男性を掴み、殴り、通りから引きずり出している。
イランでは1週間におよび政府によるインターネット閉鎖から回復したが、新しい動画には、ガソリン価格値上げをめぐるデモとそれに続く治安部隊の取り締まりが映されている。
この動画は、デモと治安部隊の衝突の一部のみを伝えているが、ある意味イラン国家の支配下にあるテレビやラジオチャンネルが伝えなかった、より大きな隙間を埋めるものとなっている。これら国の支配下にあるチャンネルの放送では、強硬な当局者がこの混乱は外国の陰謀と亡命者グループによって扇動されていると断言している。新聞などの活字媒体では、政府の宣伝のみ、あるいはせいぜい速記的な報道のみが掲載されていると、中道の日刊紙「ハムシャフリー」は日曜日の分析で伝えた。
彼らは、激しい米国の制裁措置によって、イラン8,000万人の国民の貯蓄がすでに減少し、雇用が不足している中で、文民政府が支持した11月15日のガソリン価格値上げが行われたことを受け入れていない。ドナルド・トランプ大統領は、世界大国とのイラン核合意から米国を離脱させた後、それら制裁措置を課した。
政府当局は、この数日間で100を超す都市や町で発生した抗議行動での全体的な負傷者、逮捕者、死者数をまだ発表していない。
アムネスティ・インターナショナルは、今回の騒動とその取り締まりによって、少なくとも106名が死亡したと考えられることを発表した。イランはその数に異議を唱えているが、自ら数字は発表していない。これに先立って国連事務所は、今回の騒動で「相当数の人」が殺害された恐れがあることを述べている。
イランは、11月16日から国全土のインターネットを閉鎖し、外部との通信を制限していた。それによって、抗議行動の規模や期間の判断がたいへん難しくなった。何日も前の動画や写真が「新しいもの」として再び使われることもあり、さらに状況の判断が難しくなった。
土曜日以降、インターネット閉鎖後初めて海外ウェブサイトへのアクセスが可能となり、イラン国内のインターネット接続が急増した。日曜日には、固定回線サービスの接続状況はほぼ100%となったが、モバイルインターネットサービスはほとんどない状態であったと、監視団体のネットブロックスは伝えた。
インターネットの回復によって、海外にいる最愛の人とのつながりを断たれていたイラン人は、メッセージングアプリを再び使えるようになった。さらにこの回復は、動画も再び広くシェアされ始めることを意味した。
最近公開された動画は全国に跨っている。テヘランから約680キロ (420マイル) 南にあるシーラーズからシェアされた1本の動画には、市内の警察署から発砲が始まると、100人を超す群衆が散り散りになる様子が映されている。カメラに映っていない人物が、デモ参加者の投石の様子を説明する中、一人の男性が身をかがめて瓦礫を拾う。別の銃声が鳴り響き、機関銃の一斉射撃がそれに続く。
テヘランから約800キロ (500マイル) 南東にあるケルマーンでは、道路にガラスの割れる音が鳴り響き、道の真ん中では瓦礫が燃えている。さらに、全員が志願者で構成されるイランの準軍事民兵組織「バスィージ」のオートバイに乗ったメンバーが、抗議行動者を追い払っている。
テヘランから約420キロ (260マイル) 南西にあるケルマンシャーで撮影された別の動画には、近ごろイランの路上に潜む危険が映し出されている。私服姿の治安部隊が警棒を振りかざし、一人の男性の髪を掴んで引きずっている。拘束されたその男性は、ある時点で崩れ落ちる。
「見ろ、(隊員は) 若者のような恰好をしている」と、カメラに映っていない一人の男性が、彼らを罵りながら言う。
日曜日の時点で、これら以外のデモがどの程度の広がりを見せているかは不明なままであった。革命防衛隊の司令官代理を務めるアリ・ファダヴィ将軍は、米国が抗議行動の背後に存在するという主張を繰り返したが、その主張を裏付ける証拠の提示はなかった。
「なぜ米国人は、インターネットの閉鎖で怒るのか?それは、米国人がインターネットというチャンネルを通じて、邪悪で悪意ある行為の実行を望んでいるからだ。私たちはこれに対処する。イラン・イスラム共和国の支持者、そして我々の誇り高き国民は、(米国人) が (制御) したくてもできないオペレーティングシステムを使った、インターネットに似た国内システムを構築し、これにサインアップする」とファダヴィ将軍は語った。
それは、国民が見ることができる内容を制限することを目的とし、「ハラル・ネット」として知られてきたインターネットのイラン独自制御バージョンを指していると思われる。ナショナル・インフォメーション・ネットワークとして知られるこのシステムには、政府が承認した約500のウェブサイトが存在し、意図的に速度を遅くした海外ベースのサイトよりもずっと速いスピードでコンテンツのストリーミングを行うと、活動家たちは話している。イラン当局者は、このネットワークによって、世界がイスラム共和国を切り離したとしても、独立したネットワークを保つことができると言う。
https://twitter.com/HananyaNaftali/status/1198262701551689728?s=20
しかし、ファダヴィ将軍は抗議行動が48時間で沈静化されたことを前に話していた一方で、1980年代の流血を伴うイラクとの戦争中に、イランが被った最悪の軍事的大惨事のひとつである「カルバラ第4号作戦」と比較することで、今回の騒動の大きさを認めた。
それは、ある動画で垣間見ることができる。BBCのペルシャ語サービスが以前放送した、車から撮影された首都テヘランの映像には、サッタルカーン通りで機動隊員が抗議行動者と衝突する劇的な暴力シーンが映されている。
この動画では、白い医療用マスクを着用した私服姿の治安部隊が、手で顔を覆って身を守るためにうずくまっている一人の男性に近づいていく中、群衆の怒号を上回る女性の叫び声が上がる。男たちは後ずさり、警棒と暴動鎮圧盾を持った警官に囲まれた状況を確認して走り出す。
緑色のスカーフを被った一人の女性が、自動車の前で一人の機動隊員に文句を言っている。
「何ですか?」と警官が尋ねる。
「彼が私の車を蹴りました」と彼女は答える。
「動いて」とその警官は命令し、「この状況で誰が悪いと言いたいのですか?」と言った。
誰かが銀行の前で一人の男性を追い掛け、人々は汚い言葉を放つ。自動車は右折して別の道路へと入る。カメラに映っていない警官が「こっちへ来い!」と叫ぶ。
「行って、行って、行って!」と、車の中の女性が叫ぶ。
自動車は燃える瓦礫の中、猛スピードで走り去る。動画はこれで終わる。わずか35秒間である。
AP