
シェルシャ・ネワビ
カブール:タリバン軍は5日、反タリバン勢力最後の拠点であるパンジシール渓谷の奥深くに入ったと発表した。アフガンの宗教学者らは停戦を呼び掛けている。
パンジシールでのタリバンと民族抵抗戦線(NRFA)の激しい戦闘は先週始まった。米軍が正式に撤退を完了し、20年に及ぶアフガン駐留を終えたからだ。
ここ数日、タリバン軍と、地方の民兵組織やアフガニスタンの元治安部隊出身の数千人の戦闘員で構成される民族抵抗戦線は戦果を主張している。3日夜、タリバン関係者はメディアに、タリバンは北部の山岳地帯を制圧したと話したが、民族抵抗戦線の指導者らはすぐにその主張を否定した。4日に激しい戦闘が報告された後、タリバンは5日、新たな前進を発表した。パンジシールにいるタリバン軍司令官は、戦闘員が渓谷の奥深くに入り、新しい地区を制圧したと述べた。
「アナバ地区とロカ地区は現在、我々の支配下にある。ムジャヒディン(イスラム戦士)は進撃して陣地を得ており、バザラクに移動している」とマウラウィ・エザトゥラ・バドル司令官はパンジシールからアラブニュースに語った。「昨日、我々はショトル地区を占領したが、今は休戦している。敵は大量の死傷者を出している」
一方、民族抵抗戦線は、渓谷に入ってきたタリバンは彼らの部隊によって身動きが取れなくなっていると発表した。
「タリバンはショトル、カワク、ダラ・エ・タンのいくつかの前線で待ち伏せに合った。この作戦でタリバンは大量の死傷者を出し、少なくとも1600人のタリバン戦闘員がNRFAに投降した」と民族抵抗戦線のゼマライ・アフマディヤー司令官は話した。
戦闘が続く中、タリバンに支配される前はアフガニスタン・ウラマー評議会カブール支部に所属していた宗教学者らは、双方に交渉に戻るよう呼び掛けた。
「戦争の終結は急務であり、我々は双方と話し合う必要がある」と学者らは5日、共同声明で述べた。「この戦争は皆に危険を及ぼす。すぐに止めなければならない。我々は双方と交渉を続ける。まず、この問題についてタリバンと話し合い、その後我々はパンジシールに行く」
以前の交渉では戦闘は止まらなかった。
「我々は交渉を行ったが、交渉は失敗した。あちら側は平和よりも戦争を望んだ。現在、ムジャヒディンは攻撃作戦の継続を命じられており、我々はパンジシール中心部の近くにいる」とタリバン文化委員会のメンバーであるアナムッラー・サマンガニ氏は話した。
民族抵抗戦線のファヒム・ダシュティ報道官は先週、タリバンからアフガニスタンの政治権力を半分ずつ分け合うことを提案されたが、その申し出を断ったと述べた。
パンジシールには抵抗の歴史がある。有名なアフマド・シャー・マスード司令官は1980年代にこの地域をソ連軍から守り、1990年代に第一次タリバン政権への攻撃の先頭に立った。同氏は2001年、タリバンが米国主導の侵攻によって追放される数週間前に暗殺された。
抵抗勢力を率いているのは、マスード氏の息子であるアフマド・マスード氏と、2週間前にタリバンがカブールを制圧してアフガン政府が崩壊するまで第1副大統領を務めていたアムルラ・サレー氏だ。
パンジシールを制圧すれば、タリバンはアフガニスタンを完全に支配することになる。これは、彼らが1996~2001年に同国を支配したときには達成できなかったことだ。だが、米軍最高司令官は4日、戦闘が続けば、内戦が拡大し、アフガニスタンのさまざまな武装組織が復活する可能性があると警告した。
米軍の統合参謀本部議長であるマーク・ミリー大将はFOXニュースの取材に「少なくとも、内戦が拡大する可能性は十分にあると思う」と述べた。
「そうなれば、今度はアルカイダの再編成やISIS(ダーイシュ)の成長につながり得る状況になるだろう」
8月15日にタリバンがカブールに入り、アシュラフ・ガニ大統領が国外に逃亡して以来、アフガニスタンには政府が存在していない。
権力の空白はアフガニスタン経済を混乱させている。アフガニスタンへの支払いがほぼ停止されているからだ。同国は過去20年間、対外援助に依存してきた。
情報筋によると、タリバンがパンジシールの陥落を待っているため、新政府を発表する計画は延期されているという。