
クリストファー・ハミル=スチュワート
ロンドン:専門家によると、米国がフーシ派のテロ組織指定を解除してから7か月が経過したが、フーシ派は以前よりも多くの人々を殺害し、イエメン全土を自らの過激主義的な教義の下に置こうとする動きを強めているという。
テロ組織指定の解除から数日後、フーシ派はマアリブへの攻撃を激化させた。イエメンのマアリブ県は、何千人もの国内避難民に一時的な避難所を提供し、国連が支援する政府がフーシ派の宗教的独裁政治を押しとどめる拠点としての役割を果たしている。
マアリブに対する包囲攻撃は半年が経過した今も双方の人々の命を奪い続け、イエメンの人道的・経済的危機を常態化させている。
このようなイエメンの状況を考えれば、ジョー・バイデン氏が米国大統領として行った最初の行動の1つが大きく裏目に出たと言える。
バイデン氏は2月12日、「フーシ派として知られるアンサール・アッラーのテロ組織指定を解除する」と述べた。
バイデン氏は「イエメンの悲惨な人道的状況」を理由に、フーシ派のテロ組織指定は人道支援の実施を妨げるだけだと述べた。
「イエメンの人道的状況の緩和に重点的に取り組むことで、イエメンの紛争当事者が対話にも集中できることを願っている」
確かに、後から指摘を行うのは簡単だ。しかし、バイデン氏のチームは、証拠を示してテロ組織指定解除の根拠を説明しようとはしなかった。
アラブニュースの取材に答えたアメリカンエンタープライズ公共政策研究所のマイケル・ルービン上級研究員は、「テロ組織指定の解除はフーシ派と、さらに重要なことに、フーシ派の後援者であるイランに免罪符のような感覚を与えた。また、指定解除はフーシ派による物資と資金の調達を防ぐための国際的な取り組みを骨抜きにするものだった」と述べた。
ルービン氏は、「実際、人道支援を円滑に行うためにフーシ派のテロ組織指定を解除するというバイデン政権の弁明は、最初から筋が通っていなかった」と指摘する。
ルービン氏は、「すでに人道支援を監査する体制が整っていた」と述べ、「国連は人道支援物資の輸送状況について繰り返し報告していた。皮肉なことに、フーシ派の支配下にないタイズのような都市への物資の輸送を妨げたのは、しばしばフーシ派だった」と続けた。
ルービン氏の見解では、フーシ派のテロ組織指定を解除したバイデン政権の決定は、イエメンの人々にとっての最善策というよりも、米国国内の政治的な意味合いが強く、指定を解除する過程で地域の他のテロ組織をつけあがらせてしまった可能性があるという。
ルービン氏は、「バイデン政権によるテロ組織指定の解除は、現場の現実を考慮するよりも、(前大統領のドナルド)トランプ氏が行ったことを覆すことを重視していた」と述べている。
「その結果、純粋に政治的な動機で行われたバイデン氏のテロ組織指定解除は、米国のテロ組織指定の正当性を損なった。また、他のテロ組織が外交的譲歩としてテロ組織指定の解除を要求する動きを強める要因となった」
フーシ派のテロ組織指定解除は、イエメンの人道的状況を実質的に解決することができなかっただけでなく、より多くの人々の命を奪った可能性がある。
アレクサンダー・ジャリル氏は、「武力紛争位置・事件データプロジェクト(ACLED)」で中東・北アフリカ担当アナリストを務めている。ACLEDは高度な専門組織で、世界中の紛争地や政情不安な場所で発生した致死的・非致死的な暴力の事例を記録することを目的としている。
ジャリル氏はアラブニュースの取材に対し、ACLEDのデータは現地の情報源に基づいて丹念に収集・検証されたものだと述べた上で、テロ組織指定の解除後にイエメンで行われた戦闘にフーシ派が関与する割合が高くなっただけでなく、実際により多くの人々の死にフーシ派が関与していることをデータが示していると語った。
ジャリル氏は、「米国がフーシ派のテロ組織指定を解除してから6か月間に起きた出来事は、我々が集計した死者数が2020年8月12日~2021年2月12日に比べて、2021年2月12日~2021年8月12日で増加したことからも、より多くの命を奪うものだったことがわかる」と述べた。
ACLEDのデータによると、フーシ派のテロ組織指定が解除される前の6か月間に、フーシ派は7998人の死亡に関与していた。テロ組織指定が解除された後の6か月間では9312人がフーシ派に殺害されており、1314人以上の増加となっている。
死亡者急増の原因ははっきりしていない。しかし、シンガポール国立大学の中東研究所でイランを専門に研究しているアシフ・シュジャ上級研究員は、「バイデン政権がフーシ派のテロ組織指定を解除したことで、情勢はイラン有利に傾いた」とアラブニュースに語った。
イランは、イラン政府の理念「ヴェラーヤテ・ファギーフ(イスラム法学者による統治)」とイデオロギー的に一致するフーシ派を長年にわたって支援してきた。このイデオロギーは、革命をもたらしたルホラ・ホメイニ師が定めた宗教的世界観に基づいて、後継者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師を国家の最高指導者に据えている。
サウジアラビアが2015年にイエメンに介入したのは、イエメンの正当な政府を支え、サウジアラビアに対するさらなる攻撃を防ぐためだった。イエメンの正当な政府は、同年フーシ派によって首都サヌアから追放されていた。
イラン政府は現在、フーシ派に資金、武器、訓練、弾道ミサイルなどを提供しており、その多くがサウジアラビアとその国民、そして同盟国に向けられている。
フーシ派は9月4日、交渉の席に戻るよう求める国際社会の声を無視し、サウジアラビアに対して弾道ミサイルと無人機による攻撃を立て続けに行った。
フーシ派のミサイルや無人機はすべて迎撃・破壊された。しかし、東部州上空で撃墜されたミサイルの破片が落下し、ダンマーム市内の少年と少女が負傷した。
アラブ連合軍の報道官を務めるトゥルキ・アル・マリキ准将は、国営サウジ通信が伝えた声明で、落下した破片によって14軒の住宅が被害を受けたと明らかにした。
2発目のミサイルは南西部のナジランを、3発目はナジランに近いジーザーンを標的として発射された。同日、ミサイルが迎撃される前に、アラブ連合軍の防空部隊はフーシ派が発射したブービートラップ付きの無人機3機を迎撃していた。
民間人や民間の所有物を標的とするフーシ派の試みは、敵対的で野蛮であるだけでなく、「神の価値観や人道的原則と相容れない」とアル・マリキ准将は国営サウジ通信に語った。
8月末にはアブハーの空港に対して再び攻撃が行われ、民間人8人が負傷し、民間旅客機にも被害が出た。
米国のアントニー・ブリンケン国務長官は当時の声明で、「フーシ派による攻撃は紛争を常態化させ、イエメン国民の苦しみを長引かせ、重要な時期にある和平実現の取り組みを危うくしている」と述べている。
サウジアラビアのアブドラ・アル・ムアリミ国連大使はアラブニュースの取材に対し、サウジアラビアは国連安全保障理事会を通じて、フーシ派のテロ組織としての本性を明らかにするために積極的に活動していると述べた。
アル・ムアリミ氏は、「フーシ派がサウジアラビアに対して仕掛けようとしている様々な攻撃に関して我々が国連安全保障理事会や国連事務総長に書簡を送るとき、我々の主な目的は単に事実を記録に残すことだ」と話した。
アル・ムアリミ氏は加えて、「我々はこれらの攻撃を撃退し、ほとんどの場合、攻撃が標的に到達するはるか手前で阻止している。我々はこれらの攻撃を白日の下に晒し、国際社会や世界全体に周知している」と述べた。
サウジアラビアはフーシ派に武力で立ち向かってきた。しかし、サウジアラビアはイエメン国民を政治的解決の中心に据えるイエメン戦争の平和的解決も一貫して訴えてきた。しかし、紛争の平和的終結は、フーシ派と共通する目標ではない。
サウジアラビアのサルマン国王は、22日に行われた国連総会での演説で、「今年3月にサウジアラビアが提案したイエメンの和平イニシアチブは、流血と紛争を終わらせ、イエメン国民の苦しみに終止符を打つものだ。残念ながら、テロリストのフーシ派は平和的解決策を拒否している」と述べた。
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Twitter:@CHamillStewart