ナジャ・フーサリ
ベイルート:昨年のベイルート港爆発事故の犠牲者の遺族らは水曜、事故の捜査の中止に抗議するデモを行った。
この爆発事故では200人以上が死亡、数千人が負傷し、首都が壊滅状態となった。
捜査を主導するタレク・ビタール判事は月曜、遺族や人権団体からあからさまな政治的妨害だという声が上がったのち、作業の中止を余儀なくされた。
大切な家族の写真や正義を呼び掛けるプラカードを抱えた抗議デモ参加者らは、政府高官らの喚問を行ったことで脅迫や非難の的となったビタール判事への支持を表明した。
元内務大臣のノハド・マシュヌーク議員はこの事件からビタール判事を解任することを要求した。
マシュヌーク議員は先週裁判所に上訴した。議員はビタール判事が過失の容疑で起訴したトップ高官のひとりである。
ビタール判事は、ベイルート控訴裁判所がマシュヌーク議員の上訴を認めるか退けるかを決定するまでの間、事件に関連するすべての捜査および手続きを中止した。
抗議デモ参加者らは泣きながら、誰がわが子を殺したのかと釈明を求めた。
母親のひとりはアラブニュースに対し、「犯人を追及する私たちを犯罪者にしないでほしい。私たちは無法者ではない。私たちは司法に真実を求めており、ビタール判事を信頼しているのだから、判事に自分の仕事をさせるべきだ。私たちが自ら事にあたらざるをえない方向に追い込まないでほしい」と語った。
弁護士の一団が司法宮に入り、ロビーを見下ろすバルコニーから巨大なバナーを吊り下げた。
そこには爆発事故の被害者の写真とともに「彼らを二度殺してはいけない」の文字が並んでいた。
弁護士らは正当な判決を求めるスローガンを唱え、マシュヌーク議員の上訴を退けるようベイルート控訴裁判所に要求した。
その他のバナーには「国の正義にとっての最後のチャンス」「レバノンは包囲された人質だ」「我々は忘れない」などのスローガンが躍った。
その他、「イランは出ていけ」「中立にイエスを、レバノン復興の国際会議にイエスを」など、より政治的な性質のスローガンも並んだ。
抗議デモの参加者らは治安部隊に包囲されたが、医師、エンジニア、大学生をはじめとする市民社会や人権・社会・人道団体の活動家もデモに参加した。
デモ参加者らは「与党による異常な慣行、圧力、あからさまな脅迫」を非難した。
また、レバノンは「レバノンを滅ぼし、レバノンから奪い、今も権力を握りお互いに守り合っている権力者や腐敗した政治家に包囲されている」としてレバノンへの「国際的保護」を求めた。
さらに、「この支配体制を鑑みればレバノンを腐敗から救える希望は見いだせず、レバノン国民はひどい状態からさらに悪い状態へと陥っている」と述べた。
ビタール判事がマシュヌーク議員に関する意見を裁判所に報告する期限が木曜正午に迫っている。
ミシェル・アウン大統領は、有罪であれ無罪であれいかなる判決も捜査ではなく裁判所の最終判決により決定されるとツイートした。
「捜査は司法ではない」と大統領は述べた。「捜査に過ちがあれば、修正するには3つの段階がある:開始、上訴、破棄だ。よって、罪を犯した者が有罪判決を受け、無実の者が無罪判決を受けるよう、捜査は継続されなければならない」
司法宮の前で、遺族の声明が読み上げられた。声明文は、ヒズボラがビタール判事を脅迫したことを非難した。
「この事件によって我々の団結は強まった。主犯格は司法宮内の判事を脅迫する者だ」と声明文は述べた。
フランス外務省は水曜、捜査中止に対する遺憾の意を表明した。
「レバノン国民にはベイルート港爆発事件の真実を知る権利があり、レバノン司法は完全な透明性をもって取り組まねばならない」とフランス外務省は述べた。
国連安保理は、レバノン当局が「2020年8月に港を揺るがした爆発事件について、迅速で、公平で、独立の、透明性の高い徹底的な捜査」を行う必要性を強調した。