
ワシントン:水曜日、米国とイスラエルは、イランが停滞したままの2015年の核合意救済交渉を誠意を持って再開する姿勢を見せない場合、「プランB」を模索していると発表した。
米国のアントニー・ブリンケン国務長官とイスラエルのヤイール・ラピード外相は、米国が核合意に復帰すればイランも再度、核合意を順守するという提案をイランが拒否した場合の「他の選択肢」についても検討し始めたと話した。他の選択肢が何を指すのかは詳しく語られなかったが、考えられる非外交的な選択肢は、制裁の強化から隠密工作、または武力行動まで様々だ。
これらの発言は、米国にしてはめずらしく、イランとの外交交渉が失敗に終わった時はどうすべきかを検討していることを認めるものだった。イスラエルは核合意には一度も参加していない。米国のドナルド・トランプ前大統領は2018年に核合意を離脱し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ前首相はオバマ政権が交渉を始めた核合意に対して声高に反対を表明していた。
ブリンケン国務長官とラピード外相の発言は、国務省で行われたアラブ首長国連邦外相を交えた共同記者会見でのもの。三ヶ国は、イスラエルとUAE他のアラブ諸国との関係を正常化したトランプ大統領時代の「アブラハム合意」と呼ばれる合意の拡大を試みることに同意した。
この発言の背景には、イランがウィーンでの米国との間接交渉を再開する準備ができたことを示唆したものの、日付を設定していないことがある。また、イランは核合意で規定された核活動の制限を破り続けている。
ブリンケン国務長官は、イランが核合意に復帰するためのタイムリミットは迫っていると繰り返したが、今回もいつまでがタイムリミットなのかは明言しなかった。「もう時間がない」と、ブリンケン国務長官は語った。「イランが方向転換をしないのであれば、他の選択肢を検討する準備はできている。同盟国やパートナー国とのこのような協議もその一部だ」
「イランが引き起こしている困難に対処するための選択肢はすべて検討するつもりだ」と、ブリンケン国務長官は話した「我々は現在も、外交こそが最も効果的な方法だと信じている。だが、外交を行うには両国の参加が必要であり、現時点ではイランにその意志があるとは感じられていない」
ラピード外相はよりあからさまに、イランの核兵器開発を止めるためにイスラエルは行動を起こすつもりがあり、必要であれば武力行使も辞さないだろうという警告をあらためて発した。
「世界を悪から守るためには、どこかの国が武力行使をしなくてはならないこともある」と、ラピード外相は語った。「テロリスト政権が核兵器を手にしようとしているのであれば、行動が必要だ。文明世界はそんなことは許さないということを明らかにしなければならない。世界が真剣に止めようとしていることをイランに信じさせなければ、イランは核兵器の開発を急ぐだろう。イスラエルはいつ、どのような行動でも起こす権利がある。それは我々の権利であるだけでなく、責任なのだ」
ブリンケン国務長官は、米国のシリアのバシャール・アサド大統領との国交正常化反対を改めて表明。アサド政権は激しい内戦に勝利したのだという結論に達したアラブ諸国からは、同政権は徐々に受け入れられ始めている。
「我々がこれまでも、これからもそうするつもりがないのは、アサド氏との関係の正常化や彼の更正への努力を支持することだ。米国はシリアへの制裁を軽減するつもりもなく、政治的解決に向けた不可逆的な進歩が見られるまではシリアの再建に反対する姿勢も変わっていない。米国は、シリアの政治的解決は必要不可欠だと考えている」と、ブリンケン国務長官は話した。
また、バイデン政権はパレスチナとの関係性を深める努力の一環としてエルサレムの米国領事館を再開するつもりだという。
ブリンケン国務長官は米国領事館の再開を進める固い意志を再度明らかにした。ドナルド・トランプ前大統領が2018年に閉鎖するまで、エルサレムの米国領事館はパレスチナ人への外交的なアウトリーチの拠点となってきた。
一方、アラブ首長国連邦のアブダッラー・ビン・ザーイド外相は、近くイスラエルを訪問するつもりだと述べ、両国の関係性の成長には感銘を受けていると付け足した。
ビン・ザーイド外相はまた、イスラエルとパレスチナが「対話できる状態」にならない限り中東に平和は訪れないだろうと語った。
ビン・ザーイド外相は、UAEとイスラエルの関係がより良好になれば、イスラエルとパレスチナに対しても「このやり方はうまくいく。このやり方は試してみるだけではなく、リスクを冒すだけの価値がある」と背中を押すことになるだろうと強調した。
昨年、中東の政治の中心がパレスチナ問題からイランとの戦いへと移行する中で、イスラエルとUAEは国交の正常化に合意した。
イエメンでの衝突に関し、UAEは問題解決を求めているが、「状況を長引かせているのはフーシ派サイドの解決の意志と責任感の欠如だ」と、ビン・ザーイド外相は語った。親イラン武装組織であるフーシ派は2014年に国際的に支持された政府を首都サナアから追放し、イエメン北部と主要都市部を支配下に置いている。
「我々は友人たちとともにイエメンの国民の生活が改善されるように尽力しているが、同時に、新たなヒズボラがサウジアラビアの国境を脅かすような状況にならないように注意しなくてはならない」と、ビン・ザーイド外相は、レバノンで強大な支配力を持つ親イランのシーア派組織の名前を挙げて語った。
(AP通信, AFP、ロイターとの共同取材)