
パリ:ドイツを中心にヨーロッパでは、バッシャール・アル・アサド大統領率いるシリア政府の職員を、国家ぐるみの拷問に関与したとして刑事告発する動きが相次いでいる。
直近の事例では、ドイツ・コブレンツ市の裁判所で、人道に対する罪に問われ起訴された元シリア情報機関員アンワル・ラスラン被告に対する判決が13日に下される。検察側は死刑を求刑している。
同裁判所では世界で初めて、拷問をほう助したとして人道に対する罪の共犯を理由に、シリア諜報機関の元下級職員エイアド・アル・ガリブ被告に対し2021年2月に懲役刑を言い渡した。
各裁判の概要を以下に紹介する。
ドイツでは普遍的管轄権が行使されており、戦争犯罪やジェノサイドなどの人道に対する罪を、犯行の場所を問わず外国から起訴することが可能となっている。シリア人がアサド政権の運営する刑務所で拷問を受けたと訴えると、裁判所で受理される。
2017年3月、拷問を生き延びたシリア人7名と人権団体が、シリア諜報機関の高官たちをドイツで刑事告発した。
ドイツを拠点とする人権団体「欧州憲法人権センター(ECCHR)」によると2017年内に、「シーザー」という通称の元シリア軍兵士が撮影した、アサド政権下の刑務所内部で行われた拷問や死刑の様子を記録した写真約2万7000枚も、ドイツの各裁判所に提出されたという。
ECCHRは2017年11月、シリア人13名が拷問を受けたとして、人道に対する罪及び戦争犯罪で新たに告訴状2件を提出したと発表した。
さらに7名のシリア人男女が、アサド政権の収容所内でレイプや性的虐待の被害に遭ったり目撃したりしたとして、ドイツ検察当局に告訴状を提出したと、ECCHRが2020年6月に発表した。
男女7名は、すでに国際的に指名手配されているシリア空軍の情報部長ジャミール・ハッサン被告を含む、政府・空軍情報部高官9名を告発した。
拷問・殺人・人道に対する罪で起訴されたシリア人医師の裁判が、1月19日よりフランクフルトで開始される予定となっている。
AFP