
タレク・アリ・アフマド
ベイルート:スーダン人テレビアナウンサーが自身の番組でレバノン政府やヒズボラの指導者ハッサン・ナスラッラー氏を批判したことを受け、彼女を狙った女性嫌悪者、人種差別主義者の憎悪に満ちたツイートがあふれた。
ダリア・アフマド氏を狙った攻撃が起きたのは、レバノンのアルジャジードのニュースチャンネルで放送された番組「ファシェット・ハルク」で、長年権力を握っている国内の党の主導者たちを彼女がクロコダイルと呼んだことがきっかけだった。
ヒズボラ支持者のアカウントがアフマド氏と彼女の肌の色を揶揄する悪質なツイートを投稿し、ハッシュタグ#DogBreedImprovementはレバノン、アラビア語のページでトレンド入りした。
殺害されたイランの軍事司令官ガセム・ソレイマニ氏の写真をプロフィールに掲げたアカウントからは次のようなツイートが投稿された。「神の庇護のもとで安らいでいたら黒い犬が来て吠え始めた。殴ってやりたいが、どうもただの犬ではない。スーダンの黒いメス犬だ」
また別のアラビア語のツイートには「あなたを中傷した人の母親の子宮に着床した精子に神の呪いを、ナスラッラー氏 #DogBreedImprovement」と書かれていた。このアカウントのプロフィールには、アラビア語でヒズボラと書かれ、その横に黄色いハートがつけられていた。
このようなツイートもあった。「#ヒズボラ が存在しなければ、ダリア・アフマドは同類のISISと共に奴隷市場に売られていたはずだ」
アカウント@KassemHala555は「私はこれまで神の創造物をいじめたり、批判したりしたことはない。でも、この下劣な女性は心も舌も黒すぎて、それが醜く邪悪な顔に出ている」とツイートし、文末に黒人の笑顔の絵文字をつけ、アフマド氏の写真2点を投稿した。
レバノンとイランの国旗をプロフィールに掲げたこのアカウント@KassemHala555はさらに「神よ、神よ、アル・サイード(ナスラッラー)を攻撃する者を地上から消し去り、彼らを産んだものに呪いを」とも投稿している。このツイートには、アフマド氏の写真に犬の顔を重ねた加工画像が掲載されていた。
ヒズボラを支持するジャーナリストやメディアの代表者もその動きに加わった。494,000人を超えるフォロワーを持つホセイン・モータダ氏はアフマド氏の写真をツイートし、「元から穢れているために良くなりようのない血統もある」とコメントした。
このツイートは、現在は閲覧できない。ツイッターは「ツイッターの規則に違反した」ことが理由だとしている。
アフマド氏を擁護する声も上がった。エミー賞ノミネートの経験もある監督兼作家のルシアン・ブルジェイリー氏は「皆さん、『クロコダイル』はごく丁寧な呼び方だ。あなた方の指導者たちは腐敗した詐欺師で犯罪者だ。そしてこの社会は彼らの手で破壊されつつある! どれだけ貧乏にさせられ、略奪され、生活を壊されたら彼らをかばうのをやめるんだ?」とツイートした。
ヒズボラとその支持者たちはこれまでにも女性のジャーナリストに嫌がらせや攻撃をしてきた。
昨年1月、アル・フーラのアナウンサー、レイアル・アレクティア氏がソレイマニ氏の像の除幕式の動画にコーランの一節「熱心にあがめているその像は何だ?」をつけてツイートしたところ、殺害の脅迫を受け、ネット上の嫌がらせにさらされた。
2020年10月、フリーのジャーナリストのルナ・サフワン氏が党を批判したツイートがイスラエルのニュースチャンネルで放送されると、イスラエルと組んでいると非難された。そしてヒズボラのオンライン虐待キャンペーンの標的になった。
レバノンのジャーナリスト、マリヤム・サイーフ・エディン氏は、シーア派であるにもかかわらず、ヒズボラに対して断固とした批判をすることで知られている。彼女はヒズボラのグループから殺害の脅迫を受け、母親と兄弟は実際に暴力を受けて、兄弟は鼻を骨折した。党の支持者たちは、ヒズボラが支配するベイルート南部の郊外ブルジュ・エル・バラジュネにある彼女の家族の自宅を襲った。
それ以前にも2019年に大規模な抗議行動が起きたときは、LBCの元アナウンサーでシーア派のジャーナリストのディマ・サデク氏は、デモの最中に携帯電話を盗まれ、ヒズボラから嫌がらせを受けた。サデク氏によると、その後に母親に侮辱や脅迫の電話がかかってきて、母親はストレスから発作を起こしたという。
MTVのレポーターで同じくシーア派のナワル・ベリー氏は、抗議行動の始まりを報道中にヒズボラとその同盟国の支持者による暴力的な攻撃を受けた。支持者たちはベリー氏のチームのカメラを打ち砕き、彼女が握っていたマイクをひったくり、唾を吐きかけてその脚を蹴った。