
ナジャ・フーサリ
ベイルート:レバノンのミシェル・アウン大統領は20日、国際通貨基金(IMF)との交渉開始に向けて、議会および政府と協力して取り組む決意を改めて表明した。
慣例となっている外交団との年次会合での発言の中で、アウン大統領はまた、議会選挙は予定通り行われるとも明言した。
さらに大統領は、中央銀行をはじめとする機関や組織、評議会等に対する刑事監査実施への支持を表明、IMFとの協議に向けて今後数週間で改革を達成して、金融・経済回復計画を承認することに意欲を示した。
大統領のこれらの発言は、ハリーリ前首相がアラブ首長国連邦から久しぶりに帰国してベイルートに戻ったことを受けてのものである。ハリーリ前首相は、自らの政党・未来運動を再編し、次期選挙に向けて態勢を整える計画であると報じられている。
前首相はすでに、ベイルートのナジーブ・ミカティ首相、大ムフティーのシェイク・アブドゥル・ラティフ・デリアン師を表敬訪問し、そして自身の亡父ラフィク・ハリーリ元首相の墓にも訪れたという。
一方、タンマーム・サラーム元首相は、国会議員選挙に再出馬はしない意向を表明している。
「純粋に国のための目標実現のため、現状に満足しない人々の願いを尊重して、新しい血と若く純粋な思想に道を譲って、大きな変化が生まれる素地としたい」と元首相は語った。
自由愛国運動(FPM)のリーダーであるゲブラン・バシ議員は、FPMが「来るべき議会選挙には全地域で候補者を立てる」ことを明言した。
また、バシール議員はトルコのアナドル通信社のインタビューの中で、ヒズボラとの選挙協力についても言及している。
「内部的な問題について言えば、党との意見の不一致は明白かつ深刻ですが、それらが解消されれば、選挙協力の可否はそれに十分に根拠があるかどうかという点で判断されるでしょう」とのことだ。
その一方でバシール氏は、2020年のベイルート港爆発事件における司法調査官の役割について、ヒズボラの立場を支持する姿勢を初めて明らかにもしている。
バシール氏は、タレク・ビタール判事の事故調査への取り組みは「裁量的」であるとし、この問題が不当に「政治利用」されているという批判を否定した。
ヒズボラはビタール判事の解任を求めるキャンペーンを行っており、同判事がヒズボラの政治的同盟相手の一部を追及した後、調査姿勢が偏っていると非難している。
ヒズボラとアマルが今月、これまでのボイコット姿勢から転換したため、3ヶ月ぶりの閣議の開催できる状況が整いつつある。
来週初め24日の閣議開催に備え、ユーセフ・カリル財務大臣は21日に2022年の予算案を首相に手渡す予定である。
一方、20日にレバノン人男性が自身の故郷であるベッカー県西部ジェブジェニンの銀行で武装強盗を企てたとして逮捕され、司法当局が捜査を開始している。
アブドゥラー・アル・サイイ容疑者は、銀行の従業員に銃を突きつけてガソリンを投げつけ、凍結されている自分の貯金を引き出させなければ銀行に放火する、と脅したという。
ある治安関係者がアラブ・ニュースに語ったところによると、アル・サイイ容疑者は「そのBBAC(Bank of Beirut and the Arab Countries)支店の現金用引き出しを空にし、従業員を脅してメインの金庫を開けさせた」という。
サイイ容疑者は5万ドルを引き出し、それを妻に渡すために家に帰る途中で、治安機関に出頭した。「自分の権利を取り戻しただけで、盗みをしたわけではない」ので後に釈放されるはずだと信じて自首したとのことだ。
レバノンの司法当局は、アル・サイイ容疑者の妻にも逮捕状を発行したが、妻は夫が釈放されるまでハンガーストライキを行う意思を示している。
治安関係者は次のように危惧する。「もし、アル・サイイ容疑者が自らの行いについて責任を問われなければ、他の人々も彼と同じことをするようになり、混乱と動物のような行動が支配する世の中になってしまうでしょう。」
この事件をきっかけに、アル・サイイ容疑者に同情する人たちと、レバノン・ポンドの暴落を招いた銀行政策の説明責任を求める活動家たちとの間の深い溝が顕在化している。
ソーシャルメディアでは、「力ずくで奪ったものは力ずくでしか取り戻せない」と、アルサイイへの支持を表明する声も一部にある。
また、彼の行動を「英雄的」と評する人々すら存在している。
一方、ある人は「国は、預金者のお金を差し押さえるという計画によって、国民を犯罪者やテロリストに変えてしまった」と嘆いている。
しかし、司法、金融、治安の各当局はアル・サイイ容疑者の行為を強く非難している
銀行従業員団体連合の執行委員会は次のように問いかける。「私たちは法治国家にいるのでしょうか、それとも権力者、権威主義者、無法者が支配する農場にでもいるのでしょうか?」
この事件は、BBACの経営陣がサイイ容疑者の要求に応えなければ、多くの犠牲者を出す大惨事に発展していただろう、とも委員会は指摘している。
当局は2019年に銀行取引に制限を課し、海外の口座への引き出しや送金に上限を設けた。
過去2年間、怒った預金者は預金を自らの手に取り戻すため、中央銀行や民間金融機関の前で何十回もの抗議活動を行ってきた。この抗議活動により、ATMや銀行が破壊され、ベイルートの閉鎖された支店が焼かれ、職員が脅迫された。しかし、このような直接的な犯行に至ったのはアル・サイイ容疑者が初めてのケースである。
レバノン中を席巻した抗議運動の後、2019年10月から11月にかけて、銀行から約38億ドルが引き出されました。同年末までに、銀行はすべての預金引き出しを凍結した。