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ロシアのシリア介入は、プーチン大統領にウクライナ侵攻のヒントを与えた

2022年2月27日、ダマスカス旧市街。シリアのアサド大統領、ロシアのプーチン大統領、レバノンのシーア派組織、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスラッラー氏の画像がプリントされたマグカップを並べる土産物店の店主。(SANA/AFP)
2022年2月27日、ダマスカス旧市街。シリアのアサド大統領、ロシアのプーチン大統領、レバノンのシーア派組織、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスラッラー氏の画像がプリントされたマグカップを並べる土産物店の店主。(SANA/AFP)
2016年4月18日、シリアのダマスカスの土産物店。ロシアのプーチン大統領とシリアのアサド大統領の写真をあしらった磁器が飾られている。(AP)
2016年4月18日、シリアのダマスカスの土産物店。ロシアのプーチン大統領とシリアのアサド大統領の写真をあしらった磁器が飾られている。(AP)
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02 Mar 2022 01:03:38 GMT9
02 Mar 2022 01:03:38 GMT9

ベイルート:シリアの反体制派支配地域のテントから、アフマド・ラカン氏はロシアのウクライナ侵攻のニュースをつぶさに見てきた。2年以上前、彼はロシアの空爆で、近くの村にあった家を失った。モスクワの軍事力を背景にした数カ月にわたるシリア政府の攻勢で、彼をはじめ、何万人もの人々が家から避難していた最中の出来事であった。

「私たちは誰よりも彼らの痛みを感じています」と、彼は現在ロシアの砲撃を受けているウクライナの民間人について語った。

彼のようなシリア人は、過去7年間にわたり、ロシアの軍事力を目の当たりにしてきた。彼らは反対派の拠点を攻撃し、大量の降伏取引を仲介し、国中に憲兵隊を配備し、地中海に面した同国を事実上ロシアの保護領にしたのである。

観測筋によれば、代償を払うことなく行われた、ロシアによる大胆なシリアへの軍事介入は、プーチン大統領を増長させたという。彼は中東に新たな足場を築き、そこから世界的にロシアの力を主張できるようになった。そして、ウクライナ攻撃への道筋をつけたというのである。

「ロシアのウクライナへの介入は、2008年のグルジア、2014年のクリミア、2015年のシリアにおける、一連の軍事介入の蓄積であることに疑いの余地はないでしょう」と、シリア人ジャーナリストで、ロンドンを拠点とするアラビア語日刊紙アッシャルク・アルアウサトのシリア問題担当上級外交編集者のイブラヒム・ハミディ氏は述べた。

「プーチン大統領は、アメリカが後退し、中国の役割が増し、ヨーロッパが分裂して内政に気をとられていると考え……介入することを決定したのでしょう」

モスクワが2015年にシリア戦争への参加を決めたのは、旧ソ連が崩壊して以来、旧ソ連国外では初めての軍事行動だった。それはバシャール・アサド大統領の政府を救い、戦争の流れを彼に有利にし、シリアの指導者が、シリアの大部分を残忍に支配し直すことを可能にした。ロシアの空爆は、しばしば病院や学校、市場などを無差別に襲った。

戦争で荒廃したシリアは、ロシアの武器と戦術の実験場となり、現在ではウクライナでその威力を発揮している。

ワシントン研究所のシニアフェローで、ロシアの中東政策を専門とするアンナ・ボルシュチェフスカヤ氏は次のように指摘した。ロシアはシリアで、長距離精密兵器や大規模爆撃作戦、サイバー戦争、情報工作、準軍事組織の利用など「マルチドメイン」アプローチを展開したという。

航空戦力の配備は、「ロシアの進化した戦争方法を定義するようになり、シリアはこの発展の、特に重要な例となりました」と彼女は述べた。

モスクワはまた、シリアにおいて巧みな外交手腕を発揮した。西側諸国と協定を結び、介入を暗黙のうちに受け入れざるを得ないようにしたのだ。シリア反体制派を支援するNATO加盟国のトルコと合同パトロールを行い、一部の地域で停戦を実施した。イスラエルとは、シリア国内のイラン関連の標的に対して、イスラエルが空爆を行うことを認める協定を結んだ。また、シリア上空を飛行する米軍機とロシア軍機の衝突を防ぐため、米国との間にいわゆるデコンフリクション・ラインを設定した。

同時に、アサド氏による化学兵器や樽爆弾の民間人への使用を捏造と断じ、国際社会で彼を擁護しようとした。シリア国内では、ロシアはソフト・パワー戦略を展開した。地域によっては、ロシア文化を広めるためのフェスティバルが開かれ、シリアのテレビではロシアの国歌が流れ、自分たちに都合の良いプロパガンダが乱造され、民間人に温かい食事が振る舞われた。

シリアとウクライナの二重国籍を持つ、シリア沿岸部のラタキア出身のマックス氏は、シリアにおけるロシアの積極的な行動に関する「真実」を広めるソーシャルメディアのトロール(ネット工作)要員として、1週間働いたことを思い出した。彼と他のロシア語を話すシリア人は、地元の大学に設置されたオフィスで働いた。

アサド氏の支配層であるアラウィー派に属する彼は、特にイスラム過激派が接近していたこともあり、2015年にロシアが軍事介入したときには、自分や故郷の他の人々は感謝したと語った。

「その後、ロシアがやってきて、前線はかなり遠くに押しやられました」と、彼はウクライナからの電話でAP通信に語った。今、マックス氏は、キエフの住宅街にあるAirbnbの滞在先から動けなくなっている。

マックス氏は現在レバノンの国際機関で働いている。個人的な書類を更新するために飛行機でウクライナに到着したとき、ロシアの侵攻が始まり、同国に閉じ込められた。身の安全のため、フルネームは伏せている。

今では、マックス氏はもはやロシアのシナリオを信じてはいない。しかし、彼の故郷であるシリアでは、ロシアが始めたウクライナ戦争を支持する人がたくさんいる。モスクワは、ロシア侵攻に関する巧妙な偽情報工作を続けているのだ。

ウクライナから発信される悲惨な民間人の大量脱出などの映像は、国内のシリア人や世界中の難民の間で、激しく対立する感情をかき立てている。

シリア北西部のイドリブ県は、シリアの反体制派の最後の砦であり、ロシアによる空爆が今日まで続いている場所である。そして、その憤りは最も深い。ホワイト・ヘルメットとして知られる野党の市民防衛グループは、月曜日に発表された声明の中で、ロシアのウクライナに対する侵略を非難している。

「シリア人に向けて実験された兵器が、今度はウクライナの市民に使われると知って、私たちは非常に心を痛めている」と述べ、シリアや、その他の地域でロシアの責任を問うための国際社会からの支援が不足していることを嘆いた。

「化学兵器の使用を禁止するなどの国際規範を守らせるのではなく、国際社会はロシアと協力する方法を見つけようとしている。今日に至るまで、ロシアを外交における意欲的で不可欠なパートナーとみなしている」

ボルシュチェフスカヤ氏は、プーチン大統領がシリアから得た教訓は「西側諸国は彼の軍事介入に反対しない」ことであり、それが彼に成功をもたらしたと述べた。

「食欲は、食べるたびに増していきます。軍事介入するたびに、彼はますます図々しくなりました。そして、現在ウクライナで繰り広げられている悲劇に至ったのです」と彼女は語る。「シリアで起きたことがシリアで終わらなかったように、ウクライナで起きていることもウクライナで終わることはないでしょう」

ラカン氏は現在、妻と3人の子供とともに、トルコ国境付近のテントで暮らし、車のスペアパーツ店を営んでいる。彼は、ウクライナにおけるロシアの敗北が、シリアの反体制派に良い影響を与えることを望んでいると語った。

「私たちはウクライナの人々のために、神に勝利を祈り、この戦争がロシアの終焉を意味することを願っています」と彼は言った。

「もしかしたら、彼らウクライナ人は、シリアで達成できなかった勝利を達成できるかもしれません」

AP

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