
ベイルート:中東におけるアンフェタミン型覚せい剤カプタゴンの取引は2021年に急増し50億ドルを超え、この地域の健康と安全保障上のリスクが高まっているとの報告書が発表された。
AFPが確認した、火曜日に発表予定のニューラインズ研究所(Newlines Institute)の調査は、カプタゴン生産の活況がこの地域に与える影響について、憂慮すべき状況を描いている。
「カプタゴン取引は中東と地中海で急速に拡大している違法経済である」と、アナリストのキャロライン・ローズ氏とアレクサンダー・ソダーホルム氏が執筆した報告書は述べている。
「大規模な押収品だけに基づいても、2021年の小売取引の潜在的な価値は57億ドル以上と推定される」
2020年の約35億ドルという推定値から急上昇したこの数字は、同シンクタンクが集計した、昨年押収された錠剤の末端価格4億2千万ドル超から類推したものに過ぎない。
シリアが主な生産国であり、サウジアラビアが主な消費国であるこの薬物について、多くの国が押収額の集計を公表していない。
実際の押収量は明らかになっているものよりもさらに多く、それはカプタゴンの総生産量のほんの一部に過ぎないと思われる。
AFPの集計によると、押収量は昨年よりやや遅いペースで推移している。しかしこれは2021年3月にマレーシアで9400万錠という記録的な密輸が阻止されたことが主な理由である。
“カプタゴン”は、1960年代初頭にドイツで特許を取得した薬剤の商品名である。フェネチリンというアンフェタミン型の興奮剤を含み、注意欠陥やナルコレプシーなどの治療に使用されていた。
その後禁止され、ほとんど中東地域のみで生産、消費される違法薬物となった。
カプタゴンは現在、ブランド名となっており、商標ロゴには2つの「C」がエンボス加工されている。この薬物は、フェネチリンをほとんど含まないことが多く、他の国々で「スピード」として知られているものに近いとされている。
ニューラインズは、その配合の変化が、活況を呈する取引の取り締まりをより困難なものにしているという。
「カプタゴンの生産、密輸、使用のパターンを追跡する上で最も困難な点の一つは、その前駆物質と、絶えず変化する化学式を評価することである」と述べている。
シリアで生産されたカプタゴンの市場価値は、現在では合法的な輸出量をはるかに上回る。結果同国は「麻薬国家」の烙印を押されるに至っている。
ニューラインズの報告書は、バッシャール・アサド大統領の親族やその政権の高官が、カプタゴンの製造と密輸にいかに関与しているかをさらに詳しく伝えている。
11年にわたるシリアの内戦の過程で政権に下された国際的な制裁に阻まれ、政府は「政治的・経済的な生き残りの手段として、この取引を利用している」と報告書は述べている。
モロッコ、アフガニスタンに次ぐ世界第3位のハシシ輸出国であるレバノンには、小規模ながらカプタゴンの生産施設も存在している。
「レバノンはシリアのカプタゴン取引の延長線上にあり、カプタゴンの流通における重要な中継地として機能してきた」と報告書は述べている。
シリアの国家権力者は、レバノンのヒズボラ運動など、取引を仲介するさまざまな同盟民兵や代理勢力から利益を得ていると、報告書は語っている。
ヒズボラの主な勢力圏には、シリアとレバノンの国境の多くの部分が含まれており、この地域の違法取引において重要な役割を担っている。
「レバノンの大麻生産と南部のベッカー高原からの密輸を支配してきた歴史を持つヒズボラは、カプタゴン取引において重要な支援役を果たしてきたようだ」とニューラインズは述べている。
カプタゴンはこれまではヨーロッパでごく小規模にしか消費されてこなかった。しかし今、シリアの最大の輸出品となったこの麻薬は、中東を越えて広がる可能性がある。
キャロライン・ローズ氏はAFP通信に、「カプタゴンはさまざまな効果や使用の用途があるため、非常に幅広くアピールすることができる」と語った。
この錠剤は、シリアの一部では、主に眠気覚ましや複数の仕事をこなすために使用する消費者に1ドル未満で販売されている。しかし娯楽薬として珍重されているサウジアラビアでは、1錠で20ドル以上の値がつくこともあるという。
「最終的にはヨーロッパ市場に浸透し、独自の市場を切り開くだろう」とローズ氏は語った。
AFP